人口動態を考える

人口動態は、私たちの社会・経済の今後のあり方に大きな影響を与えます。先週~今週だけでも、日経新聞で今後の人口動態をテーマにした記事がいくつも掲載されました。
人口動態に関わる現状について、いくつかデータをピックアップしてみます。

・令和3年3月1日時点 日本の総人口推計:1億2294万人 前年同月比▲51万人(▲0.40%)
・うち、15歳未満人口 前年同月比▲20万5千人(▲1.35%)
・15歳以上~64歳未満人口 前年同月比▲53万人(▲0.71%)
・65歳以上人口 前年同月比+25万3千人(+0.70%)

・2020年 15歳以上~64歳未満の全体に占める割合 59.3%
・2045年 日本の総人口想定:1億642万人、うち15歳以上~64歳未満の全体に占める割合 52.5%
・2065年 日本の総人口想定:8,808万人、うち15歳以上~64歳未満の全体に占める割合 51.4%

(以上、総務省統計局人口推計等より)

昨年1年間で日本の総人口は51万人も減少しています。51万人と言えば、中核都市1つ分に相当する規模です。よく「1年間で○○市相当の人口が減少した」と言われますが、その○○市が年々大きな都市になっているわけです。

ここには、例年20万人程度流入してくる外国人の流入が、コロナ禍によってほとんどなかったことも影響しています。この間、日本人の海外流出も止まっているわけですが、日本人の再流入と外国人の流入を足した数のほうが多いため、やはりコロナ禍によって人口減少の勢いが加速しているのがわかります。

また、コロナ禍によって出生数が減っています。いつの時点で近年の水準に戻るのかわかりませんが、当面続くことが予想されます。

コロナ禍の影響もあっての人口減少は、世界的な流れでもあります。ワシントン大学による、世界人口が2064年をピークに減少するという推計の発表が先日話題になりました。

国連の推計では、高位推計~低位推計までありますが、低位推計では2050年代の減少を予測しています。言うまでもなく、世界人口の継続的な減少局面は、人類史上初めてです。今後いろいろな影響が幅広く出てくるはずです。以前は2100年頃が世界人口のピークと言われていましたが、そのピークが早まっていることが見て取れます。それも急速なスピードです。

中国や韓国に比べ東南アジアは人口が安定していると言われますが、ベトナムでも出生率は人口維持に必要な2.1を切っています。15~29歳人口も、2020年を100とすると2060年には80程度まで下がる見通しとされています。タイは出生率がもっと低く、既に1.53となっていて日本並みの数値です。これらを見ると、アジア諸国でも今後数10年で急速な高齢化が見込まれます。(以上、日経新聞等参照)

先日の投稿「人材送り出し国の変化」で、1人当たりGDPが7000ドルを超えると国外への移民流出が減り始める、ベトナムの場合30年代初めに7000ドルに達するため、10年後には日本への渡航者が大幅に減っていくのではないか、ということを取り上げました。コロナ禍の影響や上記の高齢化がさらに進むと、10年後ではなくもっと早くその時期が来るかもしれません。

これらのことから、事業活動を考える上で読み取れる示唆を挙げてみます。

・自社事業の需要(市場)変化を想定する

人口が減ることは、基本的には買い手の減少につながります。そのうえで例えば、人口全体とほぼ同じ動きで需要減が見込まれる商品・サービスなのか、富裕層向けの商品・サービスのため人口比の富裕層割合のほうが重要なのかなど、自社の事業が何かによって視点が変わってくるはずです。

特に、冒頭で取り上げたデータからは、世界人口の減少に先立って日本で人口減少が進む中でも、高齢者層はしばらく増える動きとなっています。高齢者向けの商品・サービスは、まだ拡大余地があるという読み方もできます。(逆に言うと、64歳以下に絞ると73.5万人減となり、政令指定都市1つ分の大きな減少となりますが)

そして、今後の高齢者層は、オンラインや非接触などにある程度慣れた人たちで占められていきます。高齢者×オンラインはこれまでなかなか拡大できなかった取り合わせですが、今後傾向が変わってくるはずです。そう考えると、自社事業の開発や営業のあり方も変わってくる会社も多いことでしょう。

「人口が減っていく」ということは、皆なんとなく知っていることです。そのうえで、上記のようにより踏み込んで捉えてみると、予想していた以上のスピードで減っていく見込みに気づくのではないでしょうか。そして、

・データについて時系列で捉える
・テーマ(例:人口減少)について、要素別(例:年齢別、国別など)に分けて見る
・変化の度合い(例:「減少」でも3%なのか30%なのか)を把握する

ことによって、何を認識し、どんな対応をとっていくべきか、その対応の中で自分たちにできることが何なのかの見え方が変わってきます。

続きは、次回以降取り上げてみます。

<まとめ>
人口減少・高齢化は、一般的にイメージされている以上のスピードで進む。


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