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中高年の賃金を考える(2)

前回の投稿では、日経新聞の記事をもとに、ジョブ型雇用に伴う賃金制度の変化についてみてきました。中高年の賃金に下方圧力がかかるのではないかという内容に対して、以下の視点で考えるとよいのではないかとしました。
1.ジョブ型賃金の採用が自社の最適解とは限らない
2.中高年の処遇を下げることを目的化してはならない
3.そもそも日本の報酬水準は低い

4つ目は、ジョブ型雇用などに伴う賃金制度の改定を、人材マネジメント全体への投資として考えるべきだということです。

記事中の比較対象となった米国データだと、30歳でも月4000ドル近く、70歳でも月4000ドル近くが賃金水準の中央値(上から数えた時と下から数えた時の、ちょうど中間の値)となっています。ピークの45~54歳でも月4000ドル台半ばです。年齢差がほぼありません。

ジョブ型賃金に徹していくというのであれば、20代や70代でも職務記述書が定義する要求事項に見合ったパフォーマンスを発揮している人材に対しては、上記米国のようなイメージでどの年齢層であっても相応の賃金を払う必要があります。

仮に、60代後半で高い知見を発揮して業績貢献している人材と、40代前半で業績貢献している人材が、パフォーマンスとしてまったく同じ職務記述書との合致度とした場合、同額の給与を払えるでしょうか。これに対して、「ジョブ型に徹し、払う」で通すなら、自社での賃金は仕事の中身のみをその査定根拠にするというメッセージになります。

もし自社として払えない(同じ労務提供価値であっても60代後半には40代前半ほど払えない)とするなら、最初から「ジョブ型+年功型で支払う」と明言しておいたほうがよいでしょう。従業員は敏感なものです。「ジョブ型」と言っておきながら実態が伴っていないことに気づくと、会社のメッセージに対する信頼を失います。

また、賃金制度改定がこのように、一人ひとりの人材に対して是々非々で評価して処遇しなおす投資活動であれば、総人件費という投資額が増えるという結果もあり得るということです。

ふだん時々聞くことがあるのが、「賃金制度を改定して社員のパフォーマンス全体を引き上げたい。ただし、人件費は今と変わらずにが大前提で。」のようなお話です。これは、投資額を変えずに投資から得られる結果のリターンだけ増やしたいという、虫のいい話です。

もちろん、人件費管理はすべきです。また、投資のやり方として、投資額を変えずに中身のポートフォリオを見直して効率を上げるという方法もあります。しかし、人件費を今と同額にするのが改定の出発点であり既定路線ということでは、意味のある投資見直しにはなりにくいと思います。必要に応じて総投資額が増える前提であるべきでしょう。

以上、新聞記事をもとに、中高年人材に影響が大きいであろうジョブ型賃金の制度検討について考えました。「その制度の導入によって、本来何を実現させたいのか」の目的を明確にすることが、大切だと思います。

<まとめ>
賃金制度の改定は、人材マネジメント全体への投資として考えるべき。


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