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お節介おじさん・おばさんが組織づくりを助ける

2月16日の日経新聞で、「多様性、生かせてますか(1) 職場救う「お節介おじさん」 」という記事が掲載されました。サントリーホールディングスでシニア人材が相談係になり、包容力を発揮しているという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。

サントリーホールディングス(HD)は包容力のある人材を職場のメンターに任命した。人間関係や在宅勤務の孤独に悩む後輩を救う「おせっかいおじさん・おばさん」は、多様な世代が働く職場の1つの解となりそうだ。
新型コロナウイルス禍で在宅勤務が定着し、週1~2日出勤も珍しくなくなったサントリー。自動販売機向け飲料事業会社の首都圏支社(東京・港)で、失われがちな職場のコミュニケーションを活性化するため奮闘するのが樫谷昌邦さん(63)だ。
「最近、困ったことないか」「上司に相談しにくかったらいつでもおいで」――。支社で働く約100人に目配りする。入社1~2年目の若手とは定期的に面談。テレワークで孤独を感じる中高年も、電話やオンラインで勇気づける。
職場の雰囲気の改善策を支社長に提言することもある。例えば正社員中心だった労使協議の場に、契約社員や派遣社員が参加できるようにした。
これらはれっきとした樫谷さんの業務だ。入社以来30年以上、一線の営業マンとして全国を走り回ってきた。2015年に役職定年を迎えるタイミングで「TOO」という一風変わったポストに就いた。TOOは「隣のおせっかいおじさん・おばさん」の略。人望厚く人助けが好きなシニアから人事部が指名する。会社公認の「職場の相談相手」だ。50~65歳まで全国に約20人いる。本業との兼務だが、エネルギーの4割をTOOとしての活動に充てることを期待されている。
「自分の現役時代に比べて、今の管理職に求められる仕事の精度やスピードは段違い。忙しい管理職がカバーしきれない組織の課題をサポートしたい」と樫谷さん。同じ部署で働く入社2年目の藤本奈々さん(25)は、「TOOは祖父のような存在。上司にするにはためらわれるちょっとした相談事にも乗ってもらえる」と信頼を置く。

シニア人材の活用が多くの企業にとって課題テーマとなる中で、以前から技能の伝承役やメンターとしての活躍が適しているのではないかという指摘が各所であがっていました。上記の例は、それを一歩進めて形にしたものだと言えそうです。TOOというネーミングも大変ユニークに感じます。

シニア人材をTOOのようなポストとして活用することには、様々な効用が考えられます。

・長年の知見を活かして、俯瞰した視点からアドバイスやヒントを得やすいこと。
社会人として何十年も蓄積した経験には、財産がたくさん埋まっているはずです。人によっては、学校卒業後40年以上も同じ会社に勤続していて、その会社を知り尽くしている存在だと言えます。そのような人材からの示唆は、違った角度から自分を見つめなおすのに役立つ点が多々あるはずです。

・目の前の仕事を離れて、中立的な立場からアドバイスやヒントを得やすいこと。
直属の上司や、隣の部署の先輩社員などは、そうした立場ならではの実務に直結した具体的な相談に適しています。他方、そうした立場の相手では話しづらいこと、利害関係が絡むこともあるはずです。担当業務と一線を画している存在の人だからこそ、相談しやすい内容もあるでしょう。

・若年層にとって有力な相談相手になり得ること。
上記の事例で「TOOは祖父のような存在」とあるように、何十年と年齢が離れた相手ならかえって話しやすい面があります。親子だと揉めたりする話題や内容も、孫と祖父母まで年齢が離れると揉めなかったりします。

先日、「シニア人材に対する成果主義」というテーマで投稿しました。

シニア人材にこそ、成果主義に準拠して処遇すべきであるという内容でした。シニア人材に成果を求めることと、上記のことは、矛盾しません。

成果には、最終成果物以外に中間成果物もあります。それらを目標に置き換えて実行しようとすると、最終成果目標、中間成果目標、行動目標などを設定することになります。以下は一例です。

最終成果目標:売上○円
中間成果目標:新規顧客○社獲得
行動目標③:新規見込み客への提案○件
行動目標②:新規見込み客○人に会う
行動目標①:過去に接点のあった名刺情報から新規見込み客○人を探す

「新規顧客○社獲得」自体が売上とは別の最終成果目標とみなすこともできますし、提案できる相手先様を新たにつくれること自体が今後の財産になるという認識で中間成果目標とみなすこともできるでしょう。その区分自体はあまり重要ではなく、最終成果物に至るには様々な過程(プロセス)があること、その過程にも成果物と呼べるものがあることの認識が重要だと思います。

いきなり最終成果物が降ってくるわけではなく、何らかの過程を経ないと最終成果物は得られないからです。自社にとって重要な過程を的確に定義できるかどうかが、マネジメント冥利のひとつでもあると思います。

同記事には続きがあり、「愛社精神が強く離職率が低い同社」とされています。このような組織風土をつくれていることは、おそらく同社の最終成果物を生み出す上での重要な中間成果物だと考えられるでしょう。TOOとして定義された役割をまっとうし、その中間成果物を維持発展させること、そうした機能を果たしているかどうか評価されることは、成果主義の考え方そのものだと言えるでしょう。

TOOを具体的な役割として命じ、シニア人材の活用、将来のキャリアの選択肢提示、組織力の強化を体系的に進めようとする同社の事例は、参考になる企業も多いと思います。

<まとめ>
隣のおせっかいおじさん・おばさんは、組織マネジメントの推進役になるかもしれない。


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