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定性評価を考える

先日、ある企業の管理職の方から、次のようなお話を聞きました。
営業1課長のAさんとしておきます。

「営業2課長のBさんはマネージャーとして機能していない。営業部隊を束ねる役割をまったく発揮していない。しかし、Bさんの個人業績は高いため評価される。営業2課全体の業績も悪くないが、それはBさんの貢献ではなく、今いるメンバーがたまたまよくやっているだけで、そのメンバーも成長がなく止まってしまっている。加えて、担当役員のお気に入りのため、マネージャーとしての機能は問題視されていない。」

同格のポジションにいながら、マネージャーとしてメンバーにも会社にも貢献している自分に対する評価が足らないことに、Aさんは不満だと言います。実際にそうなのか、上長やメンバーがどう思っているのかは存じませんが、ここでは評価のあり方について考えてみたいと思います。

社員に対する評価のトレンドは、古くは成果主義と言われたり、最近ではジョブ型と言われたりしますが、それらに共通しているのは、業務で最終的になしとげた結果でもって評価しようという考え方です。結果には、定量的なもの(変化や達成度合いの値を測れる)とそうでないものがあります。定量的な要素の代表格は、売上高や販売件数などの業績結果です。

一方で、数でカウントすることが難しい結果もあります。お客さまの自社製品に対する品質への満足度を高めた、社員の対応に対する評判が上がっているなどです。これらを、「○○満足度」のように定量化して数値で表そうとすれば、それなりにできることもあります。

しかし、数値化には限界がある要素もあります。例えば「半人前の部下の能力を高めて戦力化した」などです。これも重要な結果のはずですが、「売上〇%増」のようには達成度合いをシャープに測れません。こうした定量化しきれない要素については、どんな状態を求めるべき成果と呼ぶことにするのかについて、「定性×成果」で期首に定義することが有効です。

例えば、以下のイメージです。望ましい状態をこのように定義して、期末にその通りになっていれば目標を達成できた、なっていなければ達成できなかったと評価できます。達成できなかった場合には、何をどのように改善していけばよいかを考えて実行することで、後のPDCAにもつながります。

・9月末迄に、○さんが△業務について◇の状態にするのを独力で完遂できるレベルまで、実務力を高める

難しいのは「定性×過程(結果を生み出す途上のプロセス)」の要素です。
例えば、「ある社員が会社の行動指針である○○の項目を常に実践していたか」といった問いに対しては、その実現度合いを数値化することは難しいでしょう。そこで、「定性評価」という考え方の登場です。「模範となると言える実践度」「期待を上回る実践度」「期待に応える実践度」「期待を下回る実践度」などの基準項目を定義し、どれに当てはまるかを評価するやり方です。

定性評価は、Aさんの事例のようなケースで、マネージャーとしての機能の発揮度合いを的確に評価するひとつの方向性になります。いくつかの項目を作って、マネージャーとして求めるべき役割を定義しておき、それらへの合致度合いを判定するわけです。冒頭の主張が事実であれば、AさんはBさんより定性評価の結果が高くなるはずです。

しかし、同ケースの場合はそのような結果にはならない可能性も高いでしょう。理由は、Bさんの評価者である上長(担当役員)にとって、Bさんはお気に入りだからです。よって高い評価がつきそうです。定性評価は数値化できない分、評価者が現場で起こっている事実を的確に捉えて判定することができるか、評価者自身の心情や主観を混ぜ込まずに事実ベースで評価結果を出すことができるか、が重要になってきます。それらのことを、同ケースで期待するには限界がありそうだからです。

このテーマについてどのように向き合うとよいのか、次回以降のコラムで考えてみたいと思います。

<まとめ>
定性評価では、定量評価以上に事実ベースでの評価が難しい。

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