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出木杉君不在でチームが成長する

先日、興味深い話を聞きました。ドラえもんの登場人物のひとりである出木杉君(超優秀で、何をやっても失敗しない)は、映画には登場しないことになっているという話です。たしかに、30分のTVアニメ(15分×2話)では時々登場しますが、映画ではほとんど見たことがありません。

その理由について検索してみると、いろいろな人がいろいろなことを言っているのが出てきて、諸説あるようです。何が正解かわかりませんし、厳密に解明する必要も特にないものだとは思います。その上で、納得する理由としては、「映画のシナリオにならないから」でしょう。

映画では、各キャラクターの普段とは違った面が見られます。途中からジャイアンがいい人になったり、スネ夫が協力的になったり、のび太がリーダーシップを発揮したり、です。そして、2~3時間の中で各人とチームが成長し、組織として問題を解決するという流れになっています。ここで出木杉君が登場すると、この流れがつくりづらいわけです。

出木杉君なら、おそらくいつもの秀逸かつ客観的な分析で、的確な示唆をすることでしょう。だとすると、その様子を見た皆が、要所々々で「出木杉君、次はどうしたらいい?」と出木杉君の方を向いて答えを求めるようになってしまうというわけです。問題もすぐに解決してしまいます。これでは、各人とチームが成長するというシナリオが描けません。かといって、映画になった途端に、出木杉君をとんちんかんなことを言う役にするわけにもいかないでしょう。それで、登場させないほうがいいというわけです。

このことは、私たちの組織活動にも当てはまるのではないでしょうか。
特定の人やシステムの指示に従うことで問題解決をするだけでは、メンバーもチームも成長しないということです。また、その方法では問題解決に再現性がありません。メンバーやチームで問題の本質やなぜその解決方法が有効なのかを理解しないまま解決してしまうからです。よって、特定の人やシステムがなくなってしまうと、問題を解決できない元の状態にまた戻ってしまいます。

その問題が、個別的すぎるテーマやめったに発生しないこと(例:オフィス移転)、頻発するもののすぐに外部のエンジニアに連絡すればメンテナンスに来てもらえる技術的テーマ(例:コピー機の修復作業)などであれば、特定個人や外部業者に依存するのもよいでしょう。依存するリスクも低く、そのほうがコストもかからないからです。

しかし、日常のマネジメントでありがちな諸テーマを特定個人や外部業者に丸投げするのはリスクが高いと言えます。何か問題が発生した時に、解決のためにはその人や組織に常に丸投げすることになるからです。

私も社外の協業者として様々な企業に関わるわけですが、良い会社は単に丸投げするわけではなく、私のような立場の人をいい意味で利用しながら、チーム学習しようとします。急いで結論を出したり形をまとめたりすることありきではなく、再現性ある状態にするためにメンバーとチームが成長する機会とし、ノウハウを内側に蓄積しようとするわけです。

テーマの性質と緊急度の高さによっては、問題解決を最優先してチーム外に解決の実行を丸投げというのも、もちろんありです。その上で、相応の時間とエネルギーをかけることができるテーマについては、出木杉君の登場しない映画ドラえもんのように、敢えてもやもやしながら解決のプロセスをたどり、メンバー・チームが成長しながら問題解決していくのもいいのではないでしょうか。

<まとめ>
チームでの試行錯誤が、メンバーやチームを成長させる。


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