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採用候補者へのトップからのメッセージ

一度退職した人材がまた元の会社に戻ってくる、出戻り社員の採用に積極的な会社が増えています。LinkedInのデータによると、2021年に企業が採用した社員の4.5%が出戻り社員(ブーメラン社員)で、2019年の3.9%よりも増えているそうです。

日本企業に限った場合は、まだここまでの比率ではないのかもしれませんが、私の周囲でも出戻り社員を採用した(再度社員にした)という話を聞くことも増えました。

リファーラル採用(自社の社員による紹介採用)が各社で盛んになっています。社員が自社の風土や候補者に求めるスペックを把握し、それに合うであろう人を選び入社に導くことで、候補者と会社のマッチング率が高まるなどの効果が指摘されています。マッチしないと思われる人は紹介の対象にならないからです。他にも、紹介会社を通さないことで費用削減になるなどのメリットもあります。

同様に、出戻り社員採用もメリットが想定されます。自社でかつて働いていたわけですので、自社で必要なスキルをある程度持ち合わせています。よって、初期教育を圧縮できます。他社での経験を伝播してもらうことも期待できます。加えて、自社の事情を分かったうえでわざわざ戻ってこようとするわけですので、自社組織とのマッチング率も高いはずです。

先日、ある方から以下のような話を聞きました。出戻り社員とはならなかった事例です。

自社を退職した元社員が、転職して入社した会社も退職を決め、その後の予定がまだ決まっていないという噂を社長が聞いた。社長が総務担当者に命じて本人に対し「社長が戻ってきてほしいと言っている。本気でそう思っている。今は会社もよくなってきている。ぜひ社長に連絡してほしい」と連絡させた。

連絡を受けた本人は、仕事を探している最中で一瞬心が揺らいだ。嫌な思い出ばかりだが、お世話になった会社でもあったから。よくなっているというなら期待したい気持ちもある。しかし、同社に対する悪い印象が払しょくしきれず、社長本人が実際にどう思っているのか分からないため、結局連絡せずに終わった。

一度出た会社に戻るのは、相応にハードルの高いことです。どうすれば出戻り率を高めることができるのでしょうか。

クルーズ執行役員・CBO・SHOPLIST人事広報部長の諸戸友様のnote記事「メリットだらけの出戻り社員をどう採用するか?」で、社員の出戻りを促すことに関する興味深い内容がありました。以下、一部抜粋してみます。(所々中略しています。全文は下記です)

僕がCBOを務めているCROOZも、出戻り社員の採用には意欲的。直近2年で採用した35名のうち、9名が出戻り社員となっています。その割合は約26%と一般よりはるかに高い。

クルーズではどのような形で出戻りしやすい環境を作っているかご紹介しましょう。
まず大前提ですが、なるべく気持ちよく別れることです。

優秀な社員が辞めていくのは悲しいこと。ですが、それでも僕らは前を向く仲間の背中を押すと決めています。それは、OK Bookという、かつて使っていたクレドカード(代表小渕の本心)にこんな言葉があるくらいクルーズの文化になっています。

その仲間が誇りを持って辞めて行くのだったら、最後には、嬉しい。心からそう思える。今まで僕らの夢を全力で手伝ってくれたのなら、その仲間の夢も全力で応援したい。
CROOZ・OK Bookより

辞める側としても、旅立つ際に一悶着あった会社には戻りたくないですよね。だから、涙を呑んで、気持ちよく送り出す。

そして、本当に活躍してくれた社員には代表小渕がわざわざ次行く会社に推薦状を直筆で書くこともありましたし、いつかまたと思う社員には「CROOZ号乗船往復チケット」(辞めた社員が期限内であればいつでもCROOZに戻ることができる)というのを渡す制度もあるくらい。

気持ちよく送り出し、またいつでも帰って来いとはっきり伝えておく。これが出戻り採用につなげる布石の一つです。

あとひとつ、出戻りしやすくするための取り組みお伝えします。
クルーズでは社長が自ら戻ってきてほしい社員に声をかけます。

「君の力が必要だ。もう一度俺たちを助けてくれないか」と。

そもそも、定期的に「最近どうよ?」というやりとりはしていて、その上でタイミングを見計らって声をかけています(ちなみに、当然ですが、今いる会社でめっちゃ活躍していて、本人もその会社で目標とやりがいもってやっているのであれば無理に誘うことはありません)

うちの社長は昔から再三「社長の一番大事な仕事は人事だ」と述べていて、それを会社がずいぶん大きくなった今も実行し続けている結果が、クルーズの高い出戻り率にも表れているのでしょう。

在職中に出戻りしやすいと思ってもらえる環境をつくる。退職後に継続的に連絡を取り、戻ってほしいという局面では力強く声をかける。実に示唆的な内容だと思います。そして、共通しているのが、「トップが自ら本人に語りかける」ということです。

冒頭の事例は、上記CROOZ社の考え方・取り組みとは、まるで真逆だと感じます。

出戻りしやすい環境をつくっていないのも大きいのですが、おそらく(想像ですが)うまくいかなかった最大の要因は、総務担当に連絡を命じただけで、本人が直接連絡し語りかけなかったからでしょう。

これと似た話は、周囲に日常的にあると思います。リーダーとして直接言葉を発するべき場面で、それを代行者に委託したことで思いや真意が伝わらなかった。。やはり、「いざ」という場面では、トップが直接当事者に語りかけることが大切なのだと思います。権限委譲も必要ですが、委譲してよいことと委譲すべきでないことが、やはりあります。

トップの最も大事な仕事は人事だ。大切な視点だと思います。

<まとめ>
「いざ」という場面では、相手に対してトップ本人が直接語りかける。

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