「学びの更新」の観点でリスキリングを考える
10月12日の日経新聞で、「学び直し支援、投資効率重視で」というタイトルの記事が掲載されました。リスキリング(学び直し)が最近よく聞くキーワードとなっていて、企業に加えて、政府も新たな成長分野で活躍する人材の育成支援に意欲的です。その学び直しのやり方について考察しているものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
本テーマについて、ここでは3点考えてみます。ひとつは、学び直しを実務に直結させるということです。
同記事の示唆するように、余暇活動という割り切りで現業の仕事と切り離して学び直しを行っても、効果が低いものになるでしょう。組織も個人も、学んでいることを費用対効果の観点で捉える必要があります。
もちろん、すべての学びが短期的なスパンで実務に直結し、具体的な効果を生むとは限りません。効果を感じるまで長期的な時間を要するものもあります。そのうえで、短期・中長期両方の視点から、取り組んでいることがどれだけ投資に見合った学びの機会になっていそうか、戦略的な評価が大切になります。このことは、労働力人口の制約が大きくなる今後は、これまで以上に必要となりそうです。
2つ目は、学び直しはあらゆる領域に当てはまるということです。
「リスキリング」という言葉は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略で必要となる業務に、人材が順応できるようにする再教育、という狭義の意味で使われることが増えています。しかし、もともとは、職業能力の再開発、再教育のことを意味するものです。
先日も、「私はDXのテーマには遠い仕事をしているから、リスキリングには縁がない」という話を聞くことがありました。しかし、学び直しはどのような領域の仕事であっても必要とされるものです。
そのことも含め、「学び直し」というより「学びの更新」と捉えるとよいのではないか、というのが3つ目の視点です。
以前の投稿では、「最終学歴ではなく最新学習歴を更新する」というテーマを取り上げました。「最新学習歴」は、京都芸術大学 副学長の本間正人先生によって提唱された概念です。
「最終学歴の貯金でずっと生きていくのは不可能。社会の変化がゆったりしている環境下ではそれでも通用したかもしれないが、これだけ変化が速くなると最終学歴の維持だけではやっていけない。だから学びの更新が必要」というわけです。
「学び直し」と言うと、まったく新しいことを1から始めるようなイメージを受けがちです。しかし、今取り組んでいることや自分が専門としてきたテーマも「学びの更新」が必要で、そこからイノベーションに発展することもあるというわけです。
学卒以降の教育投資の規模が、日本は他国より大きく見劣りし、その差が企業や産業人材の競争力の差になっていると指摘されています。このことについて、「学びを更新し続ける取り組みがもっと必要」という観点で向き合うとよいのではないかと思います。
<まとめ>
職業能力の再開発、再教育は、すべての人に継続的に必要。