12月24日の日経新聞で、「ランボルギーニ、週休3日 欧州製造業、導入広がる」というタイトルの記事が掲載されました。日本でも一部の企業で制度化される例があるものの、まだ一般的にはなっていない週休3日制について、欧州では広がっているという内容です。
以前も週休3日のテーマで考えたことがありますが、今回改めて考えてみます。
同記事の一部を抜粋してみます。
これから急速に週休3日が広まることは想定しにくいですが、労働時間短縮の流れは基本的なトレンドとして続きそうです。日本もこの影響は受けることが想定されます。
同記事から2つのことを感じました。ひとつは、自社の商品・サービスの付加価値の高さ、情緒的価値がますます大切になるということです。
商品・サービスがもたらす価値について、「機能的価値」と「情緒的価値」の観点から語られることがあります。「機能的価値」とは、商品・サービスの品質や機能がお客さまに提供する価値のことです。「情緒的価値」とは、その商品・サービスを体験したときに、顧客が感じる精神面での価値のことです。「その商品・サービスを使うと、どんな気分になるか」と言い換えることもできます。
世の中で「ブランド品」と言われる商品・サービスがあります。確かに、モノはいいのだろうと思われますが、類似の商品・サービスと比べて本当に値段の差ほど価値があるのかと言われると、理屈では答えられないことも多いものです。「○○というブランド名で納得・満足しているから」としか説明ができないことがあります。
ランボルギーニはその典型だと思います。消費者は、ランボルギーニの値段に見合う品質や耐久性(機能的価値)だけを求めて買うわけではなくて、ステータスや雰囲気(情緒的価値)で買っているわけです。
ランボルギーニを買うような人は、「値段が上がったから」といって買い控えをしようとはしないでしょう。よって、値崩れしませんし、強気な値上げも可能です。だからこそ、従業員の賃金水準を引き上げた上で休日を増やすことが可能だと言えます。
これが、情緒的価値を伴わない商品・サービスだと、値段の維持や値上げをすることが難しくなります。よって、従業員の休日を増やす=生産量を減らすなら、賃金水準はよくて維持、通常なら休んだ分引き下げとなるはずです。
汎用品になればなるほど、商品・サービス間で品質などの機能性には差がなくなっていきます。残るのはブランドに関するストーリーの違いのみ、という商品・サービスも少なくありません。自社としてのブランドストーリーを訴求できるかどうかの重要性はますます高まると考えます。
2つ目は、日本においてもますます労働供給力は減退し、アジア圏の労働供給力との差異が広がる可能性があるということです。
2023年11月28日の日経新聞記事「IT大国インドにもモーレツ主義? 出社や労働時間巡り論争」では、次のように紹介されていました。(一部抜粋)
欧州や日本はいかに労働時間を減らすかの議論が盛んですが、インドでは必ずしもそうではなく、いかに労働時間を増やすかの議論すらあるということです。同記事の経営者のような考えは一部の方に限られるかもしれませんが、日本ではこのような発言が出ることすら考えにくいでしょう。労働時間が長いことは必ずしも良いことではなく、その是非についてここでは触れません。
そのうえで、ひとつ言えそうなことは、「経済先進国と言われる地域は労働時短に熱心だが、新興国と言われる地域はそうではない。むしろ貪欲に長時間労働を受け入れる土壌も相応にあるかもしれない」ということです。
仮に週70時間労働するとなると、週35時間程度の労働時間を目指す欧州や日本の倍となります。もしそうなれば、人口約14.2億人のインドと1.2億人の日本における労働時間の差は、28.4:1.2かもしれないということです。
これぐらいの圧倒的な労働供給力の差の中で経済活動・企業活動を営んでいく、その中で何をすべきかを考えないといけないという外部環境は、視野に入れておくべきだと思います。
<まとめ>
圧倒的な労働供給力の差異に対応していくうえでは、商品・サービスの「情緒的価値」をいかに出せるかがカギかもしれない。