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週休3日を考える(3)

前回のコラムでは、5月2日付の日経新聞記事「「週休3日」で残業6割減」の内容について取り上げました。ZOZOの取り組みを参考に、現場のニーズを踏まえた上で、自社に合ったやり方の施策にすることがポイントのひとつであると考えました。その続きです。

ポイントの2つ目は、その施策の大きな目的を打ち出して、他の取り組みと連動させることです。

同社の例は、単に週休3日制を導入するということだけを目的に掲げているのではなく、全社の生産性向上と社員の働きやすい環境づくりという大目的を掲げた取り組みであることが感じられます。そして、上司・部下間におけるあるべきコミュニケーションの姿の観点から、業務プロセスの改善にも合わせて取り組んでいます。

狭義の目的のために狭義のルールを決めるのではなく、広義の目的を定義することの大切さを改めて認識します。そのことが、目標の目的化(週休3日を実現するための細かいルールが最終目的化してしまい、あるべき業務が歪むなど全体不最適の結果となってしまう)を避けることにもつながります。

3つ目は、対象者に利用方法を選ばせていることです。

先日の別の投稿でも、自己決定の重要性について考えました。私たちは、自分の行動開始から終了までを自らの意思で決定できているという実感が持てると、自律性が高まり、その行動に対してやる気と責任が持てるとされます。社員の側としては、硬直的なルールで1つの選択肢のみを与えられるよりも、従来制度と新制度を選ぶ・選び直すができることで、自己決定を委ねられることになります。

加えて、従来制度を選んだ場合でも、自己決定したことになる点がポイントだと思います。つまりは、従来制度を選んだ場合、これまでの自分の就業環境は何も変わらいないのに、「自らそれを選んだ」とこれまでの週休2日制を自己決定したことになるわけです。やっていることはこれまでと変わらないのに、自律性を高めることにつながります。

同記事の冒頭で「(週半ばにもう1日休みが入ることで)休み明けの重い気持ちが今はない」という人の例があります。土日の休み明けが特に憂鬱に感じられる人は、週半ばで休む週休3日制がプラスになるかもしれませんが、そもそも「休み明けの重い気持ち」という概念が当てはまらない人にこれは関係のない話です。週休2日でうまく回っている人や、仕事と趣味が似たようなもので仕事に重い気持ちを感じない人もいるはずです。こうした人にまで週休3日を強要するのはナンセンスでしょう。

同記事では、次のような副次効果も紹介されています。これらは、自己決定したことによる自律性の向上がもたらした行動変容の影響のように感じられます。

・週休3日を選んだ社員の残業時間が全体で63%減少した。1日10時間働けば、さらに数時間も残業する気にはなれないので残業は減ると見込んでいたが、想像以上の成果だったという。業務量は減らしていないので、実質職場の生産性は上がった。休むために出勤日の仕事に集中する。良い循環が生まれている。

・休日の使い方は自由だが、英語を学んだり、資格取得の勉強に使ったりと、キャリア開発に活用する社員が少なくない。個々の能力が高まればやがて仕事の成果に結びつき、会社の業績を押し上げるのを期待できる。

自己決定できる要素を増やし、それによって生産性が上がるのであれば、メンバーにとって有益な施策になると思います。

<まとめ>

利用方法を選べる柔軟な施策を考える。

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