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遠隔地採用という考え方

先日、ある企業様と経営計画の打ち合わせをする機会がありました。その際お聞きした、遠隔地採用に関するお話が興味深かったです。

同社様は、ある県を本社に事業展開している会社です。商品の仕入れや販売、モノや情報の受け渡しで他県ともやり取りや行き来もありますが、拠点は本社にしかありません。リモートワークなどもできないエッセンシャルワーカーを雇用する会社ですので、社員も全員同県か隣接する県に住んでいます。完全に、地域密着の企業です。

同社様によると、しばらく前に試した遠隔地採用が、予想以上の効果をあげつつあるそうです。下記の概要です。

・同県からはるかに離れた県で初めて求人広告を出して社員を募集した。同県より有効求人倍率が低い県を募集のターゲットにした。

・採用された社員は、3か月間(試用期間中)は同社様が手配した住居等で生活しながらOJT・勤務する。食事など個人負担もあるが、住居費などの個人負担がなく働き始めることができる。

・試用期間が終わり本採用となったら、もと居た県から正式に居住地を移転する。移転のための費用も会社が負担する。

その結果、相応の募集があり、見事必要数の採用も決まったそうです。

この遠隔地採用を始めたきっかけは、同社様の周辺エリアで求人広告を出してもなかなか集まらないからだそうです。

「有効求人倍率」は、1人あたりの求職者に対して、どれだけの求人数があるのかを示す指標です。値が高いほど、1人に対して多くの企業がオファーをしていることになります。厚生労働省のサイトによると、令和3年7月の数値で、全国平均では1.15倍です。1人に対して1.15の求人があることになります。都道府県別の最高は福井県の1.83倍、最低は沖縄県の0.76倍となっています。日本国内といえども、地域によって大きな差があることがわかります。

また、産業別でも差があります。例えば産業別前月比で、製造業(40.8%増)、サービス業(他に分類されないもの)(11.5%増)、運輸業・郵便業(10.6%増)で増加する一方、宿泊業・飲食サービス業(0.9%減)、教育・学習支援業(0.4%減)などが減少となったようです。依然として、宿泊業・飲食サービス業などは厳しい局面が続いていることも見て取れます。

同社様の属性としては、「比較的有効求人倍率が高い県×高い産業」の組み合わせとなります。周辺エリアで求人広告を出してもなかなか集まらないのもうなずけます。

特に中小企業であれば、募集広告にかける費用も、会社全体の経費に占めるインパクトとしては大きなものになります。よって、費用対効果の低い広告を闇雲に出し続けるわけにはいきません。有効求人倍率が低い県をターゲットとして募集したのは、効果・効率性の面で優れた着眼点の戦術と言えるでしょう。

また、上記の事例からは、「先入観から離れること」「可能性を広げて考えること」の大切さを考えさせられます。上記の事例に関連するテーマについて、私たちは次のような先入観に囚われがちです。

・うちの会社は地域密着でやっていて、社員も地元の人しかいない。入社を希望する人も、地元の人しかいないだろう。

・求人広告と言えば、A社かB社にずっと依頼してきた。だから今回も、A社かB社にいつもの手順で依頼するのが一番効率的。

・縁もゆかりもない土地の企業に来たい人などいないはず。生活拠点を移してまで仕事を変える・就職するとしたら、転職先・就職先が全国区の企業の場合であって、地元土着の企業が対象になるものではない。

同社様では、想像以上に応募があった=先入観とは違った結果になったというわけです。どんな人が応募してきたのか聞いてみたところ、「この機会に生活を大きく変えようと思った」「地元で行き詰まっていたので一念発起して新しい場所でチャレンジしたい」といった考え・気持ちの持ち主が散見されたということです。

先入観から離れて、データなども手掛かりに環境を把握して、可能性を広げるための方法を考えて取り組んでみる。同社様の事例には学ぶべきものがあると思います。

<まとめ>
根拠のない先入観にとらわれていないか、振り返ってみる。


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