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同業界他社と真逆のルール

2月12日の日経新聞で「明治安田、生保営業を固定給」という記事が掲載されました。歩合給を廃止し、社員の収入を安定化させようという方針です。他の保険会社の関係者様からも、同様の動きのお話を聞いたことがあります。

同記事の一部を抜粋してみます。

~~明治安田生命保険は2022年度から、営業職員の毎月の給与を全額固定給に切り替える。契約実績に応じて毎月変動させていた歩合給をなくし、毎月の収入を安定させることで人材の確保と定着を図る。新型コロナウイルスの感染拡大下では従来の対面による営業が難しくなり、収入の不安定さが浮き彫りになっていた。個々の成果は賞与に反映する。

生保業界全体では23万人の営業職員がおり、大型の契約や多くの顧客を獲得した優秀な職員の場合は歩合給が固定給を上回る。全額歩合給とする会社もある。処遇が安定せず、2年以内におよそ半数が離職してしまうことがコロナ禍前から問題となっていた。

明治安田生命は約3万6000人の営業職員を対象に歩合給部分を定額で支給する方式に切り替える。職位に応じて基本給を設定し、1年間の勤務態度や実績の評価を上乗せして決める。1人あたりの給与は従来と同水準を保つ。処遇の安定で定着率を引き上げ、デジタル技術などを活用した営業改革を進める。~~

保険業界の会社は、歩合給のイメージが強いところが多いです。
記事中にもあるように、フルコミッション制を採用する会社もあります。
その筆頭は、プルデンシャル生命でしょう。

プルデンシャル生命は、顧客満足度ランキングや会社評価ランキングなどで、上位の常連となっている会社です。私も、これまでに同社様所属の数人の方にお会いしたことがあります。そのお話からは共通して、理念経営の浸透に注力している会社であること、モチベーション高く仕事に臨んでいることが感じられました。

どのような評価・処遇ルールがよいのかの答えは、各社各様であって、一概ではありません。プルデンシャル生命はいわゆる成果主義を極めることでパフォーマンスを高めていると言えますし、明治安田生命はそれとは別の方向に動いてパフォーマンスを高めようとしているわけです。

評価・処遇ルールを検討するにあたっての主な要素を、例えば以下の切り口で整理してみます。

1.ビジネスモデル
2.具体的な商品・サービスの内容
3.経営理念・理念に基づく人事ポリシー
4.所属している社員の特徴

プルデンシャル生命と明治安田生命は、おそらく1.2.はそれほどの違いはないでしょう。もちろん、2.生命保険の中身(補償内容や利回り等の提案)は違いがあるはずですが、根本的な違いや極端な違いはさほどないものと思われます。一方で、3.4.には違いがありそうです。

つまりは、両社は、ビジネスモデルや顧客に提供する具体的な商品・サービスの内容は似通っていながらも、経営理念や理念に基づく人事ポリシー、そして各社で仕事をしたいと思って集まってくる社員の特徴に違いがあるというわけです。

そして、おそらくプルデンシャル生命の評価・処遇ルールは、同社が顧客に対して成果を上げるうえで機能を発揮してきたと言えるでしょう(だからこそ、各種のランキングで上位に入る)。明治安田生命は、プルデンシャル生命とは一線を画した評価・処遇ルールこそ自社の顧客に対して成果を上げられると信じているからそのようにするのでしょう。

先日訪問した企業様にて、同業界他社ではどのような評価・処遇ルールが採用されているのか、自社もそれを踏まえるべきではないかと、やたら気にされているお話を聞きました。確かに、上記1.2.が似通った事業を営む他社がどのような評価・処遇ルールを採用しているのかは、参考にはなります。しかし、3.4.が視野に入っていないのではないかと、私からは申し上げた次第です。3.4.の違いによっては、上記保険会社の例のように、真逆の評価・処遇ルールを採用することもあり得るわけです。

自社の社員の処遇方針・制度を設計するにあたっては、同業他社を参考にしながらも、自社ではどうするのが最も理に適っているか・どうしたいのかの視点で、判断していくことが必要です。

<まとめ>
同業界他社とは真逆の評価・処遇ルールが、自社では妥当かもしれない。

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