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リアルセミナーの今後

先週は、日本の人事部主催 HRカンファレンス の一部プログラムにウェブで視聴参加しました。毎回、約一週間にわたって行われる数十の講演・分科会がいずれもほぼ満席で埋まる、HR領域では日本で最大級のイベントです。今年はリアル会場ではなくすべてオンラインによるリアルタイム視聴でしたが、今年も各回に数百人規模の聴講者がいたようで、大変密度の濃い内容でした。

同イベントには毎回、都合のつく限り参加しているのですが、今回のオンラインによる形態は対面に比べて非常に効率的でした。今後多くがそのままオンラインに置き換わっていくのではないかと感じました(個人的な意見です)。

大規模集会では、会場後ろの方は主催者やスピーカーの顔はほとんど見えません。隣の席との距離が窮屈だったり、周囲の雑音が気になったりすると、話にも集中しづらくなります。オンラインであれば、スピーカーの顔も声も、画面越しではありますが、会議場よりもよほど明瞭です。

プロ野球の観戦において、ピッチャーの表情や変化球の曲がり具合などが、外野席からほとんどわからない一方、テレビの方がかえってよく見えるのと同じです。スポーツの場合は、その場の熱気、一体となった応援、(広島カープがマツダスタジアムで先駆け的な存在となって取り組んだ「バーベキュー席」や「鯉座敷席」などの)試合以外のエンターテイメント要素など、ライブでの集会ならではの面白みがあると思います。講演でも同じ図式は当てはまりますが、スポーツほどの大きな要素でもないでしょう。

また、講演だと終盤の時間の一部を使って、スピーカーとの質疑応答が行われることがあります。リアル会場だと、質問者が「本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございます。○○会社の△△と申します。質問したいのは・・」と切り出し、スピーカーがそれに応じる感じでしょう。これが先日のHRカンファレンスなら、講演途中から聴講者がチャットで質問を次々と入力していき、「ではこれから質疑応答の時間です。チャットでたくさん質問をいただいており、一部にしかお答えできませんが、何卒ご了承ください。では、目に留まった質問から順に取り上げていきます。・・」という具合で質疑応答が行われました。

非常に密度の濃いやり方です。意義の薄い質問に時間をとられることもなく、質問者の質問が取り上げられなかったとしても「質問の内容が悪かったのだろう」とあきらめもつくことでしょう。「手を挙げたもの勝ち」あるいは「手を上げにくい雰囲気」ということも起きないため、とても効率的な進め方だと言えます。

こうした観点から、同イベントの視聴を通して、「情報や知識を的確に得たいのなら、リアルよりオンライン」に名実ともになったのではないかと感じました。それでも、リアルが不要になるというわけではなく、もちろんリアルならではよさにより残っていくと思います。リアルならではの講演・セミナーの意義は、今後突き詰めると以下の2つに集約されるのではないかと考えます。

1.参加者との親交や交流
周囲にいる他の参加者とのインタラクティブな親交や、今後の人脈のきっかけとなる雑談、名刺交換、情報交換などは、オンラインではやはりやりにくいといえます。特に初対面はそうです。大規模な講演ならスピーカーと直接名刺交換は難しいかもしれませんが、分科会などではスピーカーとも直接話すこともできるでしょう。イベントによっては、交流スペースなどが設置されていることもあります。

その場にいる全員と親交を深めるのは難しく、偶発的な出会いになるかもしれませんが、それでも共通する目的をもつ人とのリアルでの意見交換で新たな気づきも得られます。会場に設営されたブースに立ち寄ったのがきっかけで、取引することになった、などもあるでしょう。これらはオンラインでは難しい要素です。

2.スピーカーへの憧れ
憧れの人や尊敬する人にリアルで会ってみたい、生の声を感じてみたい、という気持ちが満たされるは、リアルならではの価値といえます。憧れの人のリアルで会うことによる意識の変容・インパクトは、その後長きにわたって聞き手の行動エネルギーになりえます。これもオンラインでは代替しにくく、おそらく最後まで残り続ける要素でしょう。

上記のいずれも伴わないセミナーや講演は、今後軒並みオンラインに置き換わっていくのではないかと思います。上記1.2.の要素をどのように満たしていくのか、リアルセミナーの企画側にとって、これは大きな課題だと言えそうです。

逆に、「該当テーマの情報や知識を的確に伝える」機能で、オンラインで勝負するのであれば、新たなスピーカーにも機会が広がるのだろうと思います。リアルであれば、会場借り上げ、配布資料の準備など多くの工数・費用が必要で、一定の集客が見込めないスピーカー・テーマではコスト回収ができず、開催可能性自体がありませんでした。しかし、オンラインセミナーは仮に集客ゼロでもその場で中止にすればよいだけです。前提が変わることで、セミナーや講演というものが、新たな開拓者にも開かれた存在になりそうです。

同イベントの視聴を通して、そのように感じました。

<まとめ>
リアルセミナーの意義は、今後「参加者同士の交流」「憧れのスピーカーに会う」に集約されていく。

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