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価値に見合った価格を設定する

前回の投稿では、不動産の原状回復での過剰請求記事について考えました。その中で、価格についても取り上げました。今日も、引き続き価格のあり方について考えてみたいと思います。

https://note.com/fujimotomasao/n/nd8f8a465255e

値付けには、決まったルールはないと言えるでしょう。売り手と買い手が対等な立場であるならば(この前提は必要ですが)、売り手が売りたい値段と買い手が買いたい値段が釣り合えば、取引が成立します。いくらで成立するのかは、当事者の自由でしょう。買い手がその値段に見向きしなければ、その商品・サービスが淘汰されるだけの話です。

値付けの考え方を説明する用語にもいろいろありますが、ここでは2つ取り上げてみます。

・原価積み上げ型:

コスト志向型の価格設定ということもできます。まずコストを基本に置いて、安定した利益を出すために必要な価格を設定する方法です。発生する費用に取るべき利益を乗せる考え方で、価格=直接費用+間接費用+一定の利益の図式になります。仕入れなどの費用発生がほとんどなく個人で営んでいるサービス業(例:一部の士業)などは、費用のほとんどは人件費になるでしょう。

・価値設定型:

原価に関係なく、自社が提供する商品・サービスの価値を定めて、それに応じた金額を設定するやり方です。高級ブランド品がその典型でしょう。原価も考慮はするものの、金額にしていくらのブランド価値としたいかありきで価格を決めるはずです。高級ホテルも同様に、滞在して結構な値段を請求されても、その根拠などいちいち聞くこともないでしょう。超著名人であれば、講演を頼んで高額な見積がきても、値下げ交渉などしたいと思わないでしょう。

ここには、顧客の心理的な反応や知覚も影響を与えていると言えます。
化粧落としは、化粧水よりも原価が高いと聞いたことがあります(もちろん、製品によりますので一概には言えないのでしょうが)。しかし、化粧水は体の中に取り入れるものだからお金を使いたい、という心理が働きます。よって、化粧水は化粧落としに比べ、それなりの価格設定もしやすいということになります。

どちらの設定方法が適しているかは、製品・サービスの特徴、自社の方針、製品・サービスや自社に対する顧客の嗜好(この会社ならこれだけ払ってもよい)、によって決まってくると考えることができます。そして、それらに対する売り手と買い手の認識が一致している限り、揉めることはないということになるでしょう。

前回の投稿で取り上げた、「退去時に支払う、部屋の原状回復費用が過剰請求だというクレーム」については、価格設定プロセスに対する売り手・買い手の認識不一致に要因のひとつがあると言えるのではないでしょうか。つまりは、買い手である顧客は、原価積み上げ型で価格が決まるものだと思っている、しかしそうなっていなかった、ということです。これが、売り手主導で価格を決められる価値設定型で当然だと顧客が認識しているものであれば、高額だということが不平不満にはなりにくいのでしょう。

私たちとしては、可能な限り基本的には価値設定型で価格を決められる状態を目指したいところでしょう。そのためには、当該商品・サービスの事業活動に関わる人材すべての一挙手一投足のこだわり、出来上がった商品・サービス一つひとつの細部へのこだわり、関連するプロモーション内容との一致などの一貫性が重要になります。それらすべての総合的な評価としてのブランディングと信頼の積み上げが、価値設定を可能にし、さらにはその価値を押し上げていくことにつながると言えます。

物価が上がらず低迷する状況が長く続いています。私たちは、ブランディングの取り組みと、それに伴う価値上昇をもっと買い手側に主張していってもよいのかもしれません。

<まとめ>
一貫したブランディング活動が、高い価値設定による値付けを可能にする。

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