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2000字小説たち

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2000文字ぴったりで書いた小説たち置き場
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2021年9月の記事一覧

小説:イグニッションガール 【2000字ジャスト】

「低気圧ぶっころす」と、私は目が覚めると同時に呟いた。 パジャマにしているパーカーのフー…

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小説:ハルノシュラ【2000字ジャスト】

「いやーモトサなんてするもんじゃないね」 そう言って彼女は、手に持ったペットボトルで丸め…

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小説:ファイアズ 【2000字ジャスト】

踊り場の大きな鏡には、一か所だけ歪んでいる部分があった。 誰かが、ガラスは液体だと言って…

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小説:フェスティーヴォ 【2000字ジャスト】

冷凍庫を開けると、それはあった。 僕はそれを手に取り、冷凍庫を閉めた。 こんなものがあるな…

8

小説:ケサランパサラン 【2000字ジャスト】

僕はそれをケサランパサランだと言い張った。 海苔の佃煮の瓶に入れたそれを、僕は大切に机の…

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小説:イエスタディ【2000字ジャスト】

僕が生まれた年に生産されたそのバイクを、僕は二十歳の誕生日に手に入れた。 結婚することに…

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小説:ブーゲンビリアが咲いていた夏 【2000字ジャスト】

目を覚ましたのがとても早い時間だということは、室内を染めている光の青さでわかった。 ただでさえ場所が変わるとうまく眠れない僕が、公民館なんかで眠れるはずがないのだ。 それは町内のお泊り会の朝だった。 まわりの大人達も、もちろん子供達も、まだぐっすりと眠っていた。 僕が目を覚ました理由はもう一つあった。 誰かがトイレを流す音がしたからだ。 僕はなんだか気まずかったので、まだ眠っているふりをした。 その音の主が再び布団に入るのを待ったが、しばらくしてもその様子はなかった。 薄目

小説:ツヅクオンガク 【2000字ジャスト】

カラカラカラと自転車のホイールが鳴く。 また今日も嫌なことがあった。 あの人にラインしそう…

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小説:遠野さん 【2000字ジャスト】

祖母の部屋から爆音でEDMが聴こえてきた。 それはまぁどうでもいい。 学校を辞めてから二か月…

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小説:ラニアケア・チルドレン 【2000字ジャスト】

「猫人間コンテストしよ」と鈴木は言った。 僕は今年何十回目かわからない「どういうこと?」…

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小説:五月雨をあつめて 【2000字ジャスト】

私は船を作る。 出来るだけ早く、出来るだけ丈夫な船を。 グラウンドを走り回る犬を眺めなが…

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小説:宇宙おじさん 【2000字ジャスト】

「そこまで言う?」と母が言ったので、私は犬の散歩に行くことにした。 トラブルが起きる直前…

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小説:衝動 【2000字ジャスト】

あいつは時々女ものの香水の匂いがする。 そのたびに、私は朝からムカつくことになる。 「なん…

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小説:ナイトホークス 【2000字ジャスト】

投げた空き缶は花壇のレンガに当たり、必要以上に大きな音が響いた。 昼間ならこんな大きな音は出ないような気がする。 昼と夜とでは空気の質が違うのだろうか。 あるいはそれは暗闇の中にいることで無意識な怯えがあり、耳が鋭くなっているせいなのかもしれない。 どうでもいい。 空き缶は帰るときにゴミ箱に入れよう。 どうせゴミ箱の前を通る。 また考え事に戻るために、僕は両手の親指でこめかみを押した。 それは誰かの癖がうつってしまったものだった。 小さい頃のことだからよく覚えていない。 眠