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【カオス病院 #3】自己紹介と私の仕事について

 みなさん、はじめまして。藤見葉月(ふじみはづき)と申します。とある田舎でのんびりパートをしながら、夫と二人暮らしをしています。こんな普通の主婦の私ですが、以前ある地方都市でちょっぴり変わった仕事をしていました。

 医師事務作業補助者という職業をご存じでしょうか? 名称が長いので、クラークとも呼ばれています。民間資格ですが、一応、資格試験もあります(資格がなくても働けます)。

 仕事の内容は色々ありますが、一言でいうと「医者の雑用」です。 

 具体的には……
・病院の受付
・医師の作る書類の下書き
・電話対応
・外来でカルテ記入、患者対応

 などなど……

 これらが全部クラークの仕事です。患者さんから「あんた……病院内どこにでもいるね」と少し引き気味で言われたことがあります。(苦笑)

 実際に近くで見て痛感しましたが、勤務医(病院などで雇われて働く医師)は激務です。「その分給料をもらっているのでは?」と思いますよね。確かに年収は一般のサラリーマンや公務員と比較するとかなり多いです。しかし、多くの病院が年俸制です。つまりいくら残業しても、多くの患者を診察しても、年収は変わらないことが多いのです。

 また、休日に緊急で出勤することもよくありますし、退勤した直後に患者が急変し、すぐ戻ってきてしまうこともあります。とにかく労働時間が不規則で、飲み会などの約束をしていてもやむを得ず遅刻したり、欠席したりすることは悲しいこと「医師あるある」だと思います。
 何より、人の命が指先一つで決まってしまう、しかも手を尽くしても助からない時もある……という、精神的にもかなり厳しい側面を考えると、給料と割に合わないと思います。

 そんな医師の激務を加速させているのは、意外にもデスクワークです。数多くの書類や手紙(他院への紹介状)を医師が作成しなくてはならず、それらは当然ながら相当の医療知識がなくては作成が難しいものばかりです。

 それを代わりに作成するのが私たちです。もちろん、私たちが作成するのはあくまで下書きであり、全てに医師が目を通し赤ペンで添削してもらうのですが……。
「ちょっと、何この下書き。こんなんだったら下書きいらないから」と突き返されてしまったこともあります。下書きとはいえ、ほぼ完成形を求められるのです。
 書類を作成するにあたって必要なことは、豊富な医療知識とカルテから物事を読み解く推察力だと私は思います。

 そんな高度な医療知識が必要とされるクラークという職業ですが、私は一切医学の勉強せずに入職しました。これは珍しいことではなく、むしろクラークであらかじめ医療知識がある人を見たことがありません。看護師や介護士、臨床技師などとは違い、ほとんどが技術も知識も持たない一般人です。そのため、大量の出血を見て卒倒したり、汚物を前にして具合が悪くなったり、色々な意味でついていけなくなり辞めてしまう人が多いのが現実です。

 それは私も例外ではなく、文系大学を卒業し「事務」という二文字に惹かれ、病院への就職を決めた愚かな一人です。
 そんな普通の私が体験した病院での日々を面白おかしく、時には真面目に(!?)お伝えします。どうぞよろしくお願いします。

著者:藤見葉月
イラスト・編集協力:つかもとかずき

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