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カロリーメイト歴代CMに見るターゲット設定の苦悩と表現のクオリティ vol.2

こちらの記事はvol.1から続きです。ぜひvol.1から読んでみて下さい。


「見せてやれ、底力」というコピーの狙い

2015年から始まる「見せてやれ、底力」というワードには3人のブランドに関わる当事者を意識したコピー選定になっています。

1人目)受験生本人
これはいわずもがな受験生本人の勝負の瞬間に自分を鼓舞するメッセージ

2人目)受験生を応援する親
これはVol.1でも書いたようにカロリーメイト という商品購買層である受験生の親からのエール、メッセージ。親の気持ちが投影されているメッセージである事が重要です。

3人目)カロリーメイトというブランド
これはカロリーメイトというブランドそのものが受験生を応援しているというものです。いわゆるブランドの存在意義(ブランドパーパス)に近いイメージです。ブランドパーパスに関して詳しく解説しているnoteはこちら

2016年 第4弾 受験生向け「夢の背中編」(村上虹郎さん)

この年からの受験生向けverはついに物語風になります。

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レミオロメンの3月9日にのせて、受験生が1年間もがき苦しみながらも努力する姿を描写します。
映像として秀逸なのは、ひたすら背中を写し続けるという所。
夢に向かって進む息子の背中を、子供の小さい頃を思い出しながらもただただ見守り続ける母親の視点で描かれています。
映像として完全に涙腺崩壊系の作品です(子育て系には弱い・・)
この年の作品から伝わるブランドメッセージはとにかく「受験生をもつ母親に送る作品」
これまで受験生にも親にも双方に伝えている内容だった所から、一気に親向けに全寄せしてきました。これを見て少し安心。

TVCMとは特定の世代に対して提供する仕立てでなければならない(ワンCM、ワンメッセージ)所において、選択と集中が少し心配な要素でもあったからです。
特にメインターゲットである高校生はTV視聴が低い為、そこへのメッセージを組み入れるとメッセージがぼやける事が想定される為です。

2017年 受験生向け 「一歩を信じる編」(北川匠海さん)

2017年は2016年に引き続き、受験という孤独な戦いを乗り越える物語調になっています。
曲は山下達郎の「希望という名の光」で、引き続き親世代に全振りしたCMとなりました。無事に親向けのプロモーションと言う事で安心です。
引き続き親向けに全振りしたCMになっています。

ちなみに少し話は逸れますが、この作品では実際に出演者の北川さんが3000m級の山を登る作品となっていて(広告費用が削られるのがスタンダードの今の時代に)とんでもないTVCM製作費を掛けているなと関心します。

一連のプロモーションは博報堂が担当していますが、大塚製薬と言う企業の広告製作費に対する安心感は、様々な表現手法をもたらす事が可能なため、何ともクリエイターオリエンテッドなプロモーション枠と感じます。

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2018年 受験生向け 「心の声編」(蒔田彩珠さん)

様子がおかしくなったのはこの年。

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映像の内容は高校生活の中で受験勉強を頑張るシーンがほとんどで構成されています。
「友情、努力、恋愛」これらで完全構成されていて、親が出てくるシーンはサムネイルにもある、自分部屋の追い出すシーンくらい。

これまで蓄積してきた受験生の親向けのプロモーションから、一気に受験生向けに全振りすることに。
一方で合唱のように歌われるテーマ曲はブルーハーツの「人にやさしく」というアンバランスさ。

私が考察するには、ネット広告などで高校生に直接リーチできるメディア媒体が普及したため、TVCMを前提にした動画ではなくてウェブ広告主体での戦略に切り替えたのではないか?と推察されます。

ただしシリーズ化しているプロモーションのため、世界観も大きく崩せずに中庸を取ったものと推察。

実際の売れ行きがどうだったかは不明ですが、
けっこ大胆なプロモーション方針の変更を決断した事を感じます。
この方針は翌年も続きます。

2019年 受験生向け 「My Way編」(YOSHIさん)

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2019年はアップテンポな往年の洋楽「My Way」に合わせて受験生の煩悩と苦悩に寄り添った、完全に受験生のための受験生に向けたCMになりました。

フォートナイト感溢れるパロディー映像など相変わらず通向けにもこだわるディテールで提供。

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複数の15秒CMのパターンが存在し、YoutubeやSNSなどのウェブ広告での高校生への直接リーチを前提としたプロモーションプランだと感じます。

ここには2017年まで続いていた母親に向けたメッセージや描写は一切存在しません。受験生を応援する、というブランド存在意義を忠実に描写した作品と言えるかもしれません。

新たな広告手法が生んだ広告表現の変化だと思います。

それでは、お待たせしました2020年の最新バージョンの解説です。

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