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artsyな言葉たち

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自然、感情、美、哲学など、心奥に得たことを綴る。
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2019年7月の記事一覧

自然、私の注意

ガラスのコップが私に語りかける

本を読めば
一粒の水滴がツーっと流れ落ちるのに視線をとられ

筆を進めれば
正方形の氷が溶けカランと音するのに
手が止まる

汗をかいたガラスコップも
クリーム入りのアイスコーヒーも
私を知らないはずである
私の名前も経験も、生まれも、存在も知らないはずである

ではなぜだろう

私の全身細胞の注意を払わせる

染みのついたソーサーは黙っているのに

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【詩】そのまま

金箔の指先をひとかじりする
生まれたての模様が広がる

昨日みた夢の
真ん中で
フルートの吹く部分と
ボタンの数々だけを
剥ぎとること

のんびりと
水面を伝わった心の音

聞き取ってくれたから
まっすぐに返事をする
「何時間でも寝てられるから、
そのままでいてくれればいいよ」
そうこたえた

真後ろの鏡が
乱反射して私を突き刺したままだ
#文学 #小説 #エッセイ #日記 #自然 #哲学 #詩

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【詩】たどう

向かい側の生活
そのアウトラインを辿ってみた

右足に履いたレザーブーツは
マスタードカラーの紐がほどけて
でんでん太鼓の両手みたいに自由気まま
左足に履いたお勝手サンダルは靴裏の内側だけ削れてる

揃った靴は全部誰かにあげてしまったから
残ってる靴は全部バラバラ
思うように歩けない

それでも
路肩にたなびくハルジオンや
真っ直ぐに幹を伸ばす楠の木の梢を
しっかりとみられるから
私は歩ける 辿っ

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ノースカロライナのクリスマスセーター

ノースカロライナで着てた
ダッサダサのクリスマスセーター
ドネーションに出したんだ

初夏の今でも
思い出しちゃうほどに
気に入ってたのに

上半身の全部が痒くなっちゃうくらいに
けばけばでも
2日にいっぺんは着てたのに

ドネーションに出したんだ

深緑の地に
真紅の袖口 襟元
不格好な2匹の犬がじゃれあってるシルエットがどーんっと描かれてて
その犬の首元にはギンガムチェックのリボンが外付けされ

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【詩】ちから

縮んだパンケーキに
塩気のあるバターを
べったいスプーンで押し付ける

向こうの方から聞こえる声に
耳を傾けないように
押し付け続ける

横に縮んだパンケーキは
縦もずっとずっと薄くなってく

左耳の鼓膜に
カワセミの啄ばみを感じて
聞こえない

右耳の真ん前にはたぶん
ススキが一面に広がってる
さわさわという雑音だけ
聞く

べったいスプーンは
どんどんどんどん
折り曲がってく
かたい面に当てら

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【詩】たまる いかる

木目の色合いを
変化するまで眺めていた
夕方の七時

文句の一つ言えなくなって
昨日の折りたたみ傘は
水が滴ったまま

音速で変わってく
ムラのある気持ちに
仕切りをしてしまったから

事の始末に
目を向けないままで
苦しい

ボタンが外れない
襟元が外れない
誰かとってしまってよ

憐みは要らない
慈善も要らない
怒りだけが偽りない

偽らない
#文学 #小説 #エッセイ #日記 #自然 #哲

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【詩】ひとり

モノクロの紋様を指でなぞった。

苦し紛れの吐息が
砂の被ったそれの正体を露わにする。
もうじき動き出す。

500m先に進んでる
あなたを
ずっと眺めながら私
進んできたの。

秒速1.7m進むあなたと私
一度だって落ち合うことはできない。

眺めた背中からは
たくさんの若葉が生え始めていた。
摘み取って、摘み取ってしまいたくて
そしてすりつぶして飲み込んでしまえば
きっとうまくいくと思って。

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【詩】さようなら、ポセイドン

ポセイドンの奥の方から
野太い声がした

魂の声

心のむせび泣き

メランコリーの隙間に
目を当てて
こちらを見ている
見下ろして 見上げてる

この頃は栄えてきてる
心臓を覆う繊毛
密集してまるで絨毯
右から左へ波打ってる

強いということも
弱いということも
私にとっては無味の桃
しぶきも一切無関係

もぎ取った時
私たちの目が見つめあったこと
手が少しだけ震えていたこと
触れたこと
それも

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