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artsyな言葉たち

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自然、感情、美、哲学など、心奥に得たことを綴る。
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2019年6月の記事一覧

【詩】膜破り

しっかりとすくい上げてほしい
柔らかな表面
なめらかな肉体
プリンのような内容を含んで

そんな中に埋もれていってしまった
私の魂は
息ができない

ゆで卵を包む薄膜みたいな
煮た牛乳からうまれる薄膜みたいな
そんなものに真空パックされてる

たぶん
爪楊枝とか
アイスピックとか
お父さんが毎晩使ってるフロスの先端とか
そんなのでほんの少し触れてくれれば良いのに
そんなきっかけは
誰のポッケにもあ

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同時多発的事象

この同時多発的に起きている事象よ。

窓に張り付いているクモの巣が
枯葉を取り込んでつらつらと揺れている

ピアノのペダルが長引かせる音の反響

間近の葉っぱ、1メートル先の枝、10メートル奥の幹、もっともっともっと先の木。

下手な陶芸の注ぎ口、螺旋水面のたわみ

足のない机、アラビア文字

乾いた文面、目にかかる日の出 日中

進み出でるわ、私の声

開いた戸棚を閉める時に思い出される事象、同

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寂れたツタヤ

数年ぶりの町のはずれにあるTSUTAYA、
とてもさびれてた。

今じゃ音楽もベッドの上でダウンロードするのが常。
アナログなやり方は面倒だからなくなっていく。

でも、
夏の夜中にどうしても観たい映画を自転車で借りにいく無駄な時間も
白いタンクトップのおじさんが返却ついでに家庭で出たであろう2Lペットボトルを店前のゴミ箱に捨てる光景も
店内の眩しすぎる真っ白な蛍光灯も
嫌いじゃない、全部美しい無

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夜中のウグイス

夜中の1時、
3階の窓から真っ暗な静寂に並ぶ瓦屋根をぼーっと見ていた。

ほーけきょっ!
と鳴く声。

こんな夜中にウグイスなんて
おかしいなあ。

真下に連なる街路樹の方に目を向けると
スーツ姿のおじさんが
ゆっくり歩きながら口笛を吹いてた。

ぴよっ
ぴっ

なんだか嬉しいそう。

ウグイスは音によって私たちに春の喜びを与える。
おじさんは喜びを得てそれが音になったんだね。

季節はずれのウグ

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変わることの美しさ

私は変化している空が好き。

台風によってスピードの速い雲、
ゆらゆら沈む夕日、
マジックアワーに向かう匂い。

変わらないこと
永遠のもの
人はそれらを求める。

変わることの自然さを
知らないのだろう。

変わっていくことこそ美しいんだよ!
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除毛 除あたし

真夜中の4畳半。
下弦の月がこちらを見下ろしてる。

薄ピンクの柄がついたカミソリ、
月の光のもと
すねに沿わせる。

ゆっくりと
あたしが削られていく。
このまま髄まで、
あたしの芯まで剃り切ってしまったらいいのに。

夕飯にスライスした新じゃがみたいにね!
#文学 #小説 #エッセイ #日記 #自然 #哲学 #詩 #essay #literature #poetry #poetics #na

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足の甲のファンタジー

真昼の下り電車に乗った。
車両には五人くらい、
私の右斜め前に40くらいのおじさんが座ってた。

仕事が休みなのか
ラフな服装。
青地に赤の鼻緒がついたビーチサンダルを履いてる。

足の甲の部分、
なんか気になると思ったら
黒やグレーや白の毛がぼわっと生えてた。

なるほど、

と眺めてたら
自分の甲がムズムズ
ツンツンと活発になってきてる気がした。

なんか生えてきちゃうんじゃな

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裸婦の絵

裸婦の絵を見た。

絵から5mくらい離れたところに、
白い革張りの長椅子があって
そこで30分くらい眺めてた。

修学旅行で来たのか
遠足で来たのか
小学生くらいの子供達がこちらへやってきた。

裸婦の存在に気づいて
ちらちらとみる班の子に

「そんなにみちゃだめだよ!」
と男の子。

そそくさと裸婦と私の間を通り抜けていった。

そういえば幼い私たちにとって
裸とか、露出した性とか、
なんだかと

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イチョウの隙間の信号機

そろそろ日差しがきつくなってきた。

近くの大通りの横断歩道を自転車で渡るとき、
信号が赤だと暑くてイチョウの木の影で待つ。

ちょうど私の目の前。

信号に重なるように枝葉が揺蕩うから、
青になるまで
揺れ動いて時々生まれる葉っぱの隙間から信号をチラチラと確認する。

初夏である。
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褐色の月と愛

真夜中の手前、
褐色がかった月に向かってちょっとした願いを語りかけてみた。
きっとそんなこと、
今朝便座に座りながら本当の愛に出会えるかどうかを考えたくらいに無意味かもしれない。

それでもフランス映画みたいな、
アメリみたいな、愛を得てみたい。
疑いのない愛を!

小学生のときに繰り返しみた夢で
後ろから優しく抱きしめられたことを思い出した。
柔らかな気持ちになって、
これが愛を受ける心地なんだ

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不変の時の流れを鳴く

フランス菓子店でバイトを始めた。

大量のケーキを箱詰めするときも、
手が滑ってメッセージプレートがスポンジに食い込んだときも、
次から次へと客がパンオショコラを注文するときも、
店内の右手、
大柱にかかってる鳩時計は毎時変わらず時間を教えてくれる。
一秒もずれない。

終業1時間前、
ぼーっと窓の外の看板を眺めてたら今日5度目の鳩時計が鳴った。
その瞬間、
恐ろしい震えの中にある柔らかい和らぎを

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ホチキスの歯

白くて細い蛇。
ジャングルみたいな、熱帯雨林と針葉樹林が混ざったみたいな、
不思議な森に現れた。

大人しいから優しく手に持つと
二本の長い歯がホチキスになってた。
ホチキスの芯が蛇の頭から突き出てた。

「がちゃっ!」
気づいた時には
もう遅い。

痛っ

という瞬間目覚めた。
そんな夢の話。
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雨粒の映す東京

夜8時の東京、
オレンジ色のライトに包まれながら
交差点を進む。

交差点のちょうど真ん中あたり、
斜めに進んでったら
ポツポツと雨が降ってきた。

上を向いたら
自慢の長いまつげの上に
優しくのった小さな雨粒が
望遠鏡みたいに周りの景色を大っきく映した。

雨が夜8時の東京をおっきくした。
#文学 #小説 #エッセイ #日記 #自然 #哲学 #詩 #essay #literature #poe

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森の道

うちから街へ行くには二つの方法がある。
平坦な道路を進んで川を越える近道と、
森の中をくねくね進む遠回りの道。

雨が降ってたし、
道はきっとドロドロだろうけど、
森を行った。

6月の雨露に煌めく葉っぱの一枚一枚を
感じたいと思ったから。
葉の先端からおでこに落ちてくる雨粒に驚きたいと思ったから。

遠回りを行くような
そんな余裕をいつまでも心に携えて生きていきたい。
#文学 #小説 #

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