マガジンのカバー画像

あの人のこと。

13
あなたにとっての「あの人」とは誰ですか? 生きているとその都度「あの人」の存在は変わっていきます。 あなたにとって今思い浮かぶ「あの人」はきっと誰にも分からないほど、感情の天国と…
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

暴力的な残像と匂い

暴力的な残像と匂い

あの人が好きなバンドの曲、聴けなくなったのはいつからだろうか。

毎年、夏が始まると決まってあの曲を歌い出すあの人の隣で、私は何も言わずにそっと微笑んでいた。

一緒にいたから聴きたかっただけで、一緒にいなくなったら聴きたくもなかった。
いつの間にか存在証明みたいな曲になってたんだ。

ラジオからあの曲が流れたら、心では耳を塞いでいた。

あの人がいない夏も2周目がおわり、それでもまだ聴けないまま

もっとみる
あの街と向き合った日

あの街と向き合った日

久々にこの街に降り立ったのはあの頃通っていた病院に行きたかっただけ。

病院で処方箋をもらい、近くの薬屋さんであの薬をもらうと
駅と反対側に向かって歩いてみる。

引っ越してから、この街をこれ以上奥まで歩くことはなかった。
歩けば歩くほど数えきれない思い出がやってくるから。

東京で初めて一人暮らしをした街

長く続く商店街、あたりを見回しながら歩いていると
あの古着屋さんはカフェに変わり
ドトー

もっとみる
夢さえも選べない

夢さえも選べない

私の夢に出てきた人物ランキングがあるのならば
絶対にトップにランクインするあの人

実は久々に昨日の夢にあの人が出てきた

一度うなされてから、寝た後に見た夢

実際、見たこともないあの人の彼女が登場して、あの人もそばにいて、あの人の彼女はギャルですごくイヤらしい感じの人だった

本当の彼女なんて知らないし
彼女がいるかも知らないし

何も接点のない生活の中でも夢に不定期で出てくるのだから、私の脳

もっとみる
呪いのテープ

呪いのテープ

始まりほど忘れられないものはない
爪を折ってしまったビデオテープ
捨てても捨ててもいつのまにか家に帰ってくるビデオテープ
ある意味、呪いのテープだね

あの人との記憶は呪いのテープ

何度も記憶を抹消しようとしても
ちゃんと脳に残ってるんだよ

親友の誕生日を覚えられない私が
二人が始まった日を覚えてるとか
『恋』と呼ぶには相応しいね

閏年だったから

その日は四年に一度しか来ない日だったの

もっとみる
毒が抜けていく感覚

毒が抜けていく感覚

誰かがどこかで言っていた、よくある台詞

「すべては時間が解決してくれる。」

あの頃、あの人とずっと一緒にいたこの街を当たり前のように一人で自転車を漕ぐ。

駅に向かうとき使った裏道の住宅街
二人でお腹を壊した安い焼肉屋さん
引っ越すからとリサイクルショップで洗濯機を眺めたり
意識高い系のカレー屋さんに行って、食べた後に二人で「そんなに美味しくなかったね。」って頷いたり
いくらでも溢れてくるこの

もっとみる
遺伝子ってやつ。

遺伝子ってやつ。

この人の遺伝子を残したいって思う人ほどいつも片想いで
せめて遺伝子だけでも私にくださいって思う人ほど
毎月ちゃんとあれはやってくる

今回も殺しちゃったね
パンツを下ろして座った便座の上で何度思っただろう

遺伝子ばかりに拘ってたら
いつの間にかかなり大人になってて
SNSで知り合いが幸せそうに綴る結婚生活を眺めるだけでいた

あの人もこの人もみんな普通にできてるのに
どうしていつだって私は普通に

もっとみる