呪いのテープ
始まりほど忘れられないものはない
爪を折ってしまったビデオテープ
捨てても捨ててもいつのまにか家に帰ってくるビデオテープ
ある意味、呪いのテープだね
あの人との記憶は呪いのテープ
何度も記憶を抹消しようとしても
ちゃんと脳に残ってるんだよ
親友の誕生日を覚えられない私が
二人が始まった日を覚えてるとか
『恋』と呼ぶには相応しいね
閏年だったから
その日は四年に一度しか来ない日だったの
だから神様が少し意地悪をしてくれたんだよ
駅で待たせたあの時から
私の頭をぽんぽんと優しく触った時から
途中で雨が降ってきて二人でずぶ濡れになったね
そのせいで今夜みたいな雨の日は必ず思い出す
『もったいない。』と言った私の言葉も
『今日は良き日』と言った私の言葉も
とてもとても空が青くて、これから何かが始まると確信をしたことも
2/29だったから
あの時からずっと数えていたんだ
四年後の、2/29も一緒にいれたら奇跡だなって
1年後の2/28も安心して
2年後の2/28も安心して
3年後の2/28も安心して
待ち続けてた四年後の2/29は
やっぱり隣にいなかった
そんな上手い話はない
他人は上手く生きてるように見えるけどな
あいつもこいつも悪いことしてきたのにな
私よりズルして嘘ついて人を傷つけてきたはずなのに
どうしてあの人と私だけダメだったのかなんて、誰も知ることはないし興味もない
捨てたはずの呪いのテープがまた自宅に戻ってきた雨の夜
私はまた丁寧にそのテープを観てしまうんだ
そして思い出しては、あんなに幸せだった日々はないと確信してしまうんだ
勘違いな女
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?