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【短編小説】10.こびとのはなし【その角を通り越して。】

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そんな事が起きてしばらくたった
ある日の昼下がりのこと。

僕は毎日を気ままに過ごし
暇をつぶすようにろうそくを作って暮らしていた。

と。
小屋の扉がキーと音を立てて開いた。

僕はぴくりと肩を震わせ硬直する。
誰だ?あの小さな生き物か?いやあれは飛んでいたな…
怖くてドアの方を振り返らないでいると

「いつ戻ったのだ?ろうそく屋の店主」

妙に高くて聞き取りずらい
カサカサとかすれた声がした。

「腕は確かなようじゃの、ろうそく屋の孫よ」

その声はどんどん続けて喋り出す。

「あんたの家系は代々、こちらの世界で商いをしておる」

「はぁ」

「あんたのばあさんの代でろうそく屋は辞めると言って店を閉めたようじゃがみんな困っておる。灯りを作る者がいないと不安がる生き物が多いからのぅ」

トコトコと、足音のような音がした。
ドアの方を振り返ると
そこにいたのはとても小さな老人だった。
やはり、頭がおかしくなったのか、僕は。

「わしはレリオンじゃ。この世界の作りを生涯探求する生き物だ。
 人間の魔法使いは、わしらのような生き物をドワーフと呼ぶようじゃが」

ドワーフと言われてしっくりくる。
そのレリオンと名乗った声の高い小人は
作業台に無造作に置かれた作りかけのキャンドルをしみじみと見ながら
部屋の奥にある暖炉のほうへと歩いて行く。



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