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【短編小説】15.さいごの、はなし【その角を通り越して。】

前の話



僕は「非日常のろうそく屋さん」店主。

僕の家系は代々
不思議な力で星空を作る者として
人間界と、この非日常の世界の
両方の世界を行き来しながら暮らしていた
特殊な種族なんだそうで。


僕は相変わらず引きこもりで
誰かと一緒にいるのが苦手だ。
だけど、人間の世界から逃げて来れてよかった。

逃げることは、悪いことじゃない。
自分で道を切り開く事だと、僕は思った。

合わなければ合うものがあるまで探せばいい。
それを怠っていたから、僕は嫌われていたのかもしれない。

これからは
こちらの世界の事はレリオンに任せて
人間界の仕事は便利屋に任せることにして。

僕は好きなだけ
ろうそくを作る。

不思議なことに、こちらの世界に来てからは
言いたいことがすんなり口から出るようになった。

それは僕が変わったのか
それともここにいる生き物たちが優しいからなのか
まだ分からないけれど。


毎日を生きるために、何かを削ってお金を稼いでいた。
お金を稼がないと生きていけないから、何でもやった。

そうするしかない人がたくさんいる世の中から逃げ出せたことは
本当に幸運な事なんだろう。

もしも、僕の事を知った人間が、僕の事をうらやましいと思ったら
僕はその人に、僕だけ逃げてごめんねと言うだろうな。

本当に辛いことは、なぜか心の奥底にしまい込んでしまう。

もしも僕の事をうらやましいと思った人がいて
そんな辛いことを隠している人がいるなら
ここにこっそりと置いていってほしいんだ。

ただ、置いていくだけ。その先には進まないで置いていくだけ。

遅くなるかもしれないけれど、僕が話を聞くから。
勇気を出して、ここに書いていってね。


end


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