見出し画像

一問一答!建築のキホン⑧

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「一問一答!建築のキホン」
建物の構造、関連法規の基礎知識を、(株)ユニ総合計画の秋山英樹氏がQ&A方式で分かりやすく解説するコーナーです。

『月刊不動産流通2019年9月号』より、「旧耐震の建物が大地震で倒壊する可能性について教えてください。また、新耐震ならば『安全』と言ってよいのでしょうか。」を紹介します。

Q 旧耐震の建物が大地震で倒壊する可能性について教えてください。また、新耐震ならば『安全』と言ってよいのでしょうか。

A 旧耐震基準の建物だからといって、必ず倒壊するとは限りません。
また、新耐震基準とは、大地震に対して「倒壊・崩壊」しない基準であり、「損壊・損傷」しない基準ではないので注意しましょう。

顧客への説明には
注意が必要

1981年6月以降に建築確認がなされた建物は新耐震設計基準に基づいて設計した「新耐震物件」として、重要事項説明書の耐震診断記録の有無の記載は不要とされています。一方で、それより前の物件はいわゆる「旧耐震物件」と呼ばれ、耐震診断記録の有無の記載が必須となります。賃借人や購入希望者が物件を借りたり買ったりする場合にネックになり得ることから、
建物の価値判断に影響を与えます。

新耐震設計基準は、建築基準法の目的である「国民の生命を保護する最低基準」として数値が決められています。ここで注意しておきたいのは、この基準は震度6強~7の大規模な地震に対して、「建物が倒壊・崩壊しない」基準であるということ。つまり、最低限生命を守るという基準であり、「建物が損壊・損傷しない」という基準ではありません。大地震でなく中規模な地震(震度5程度)では、ほとんど損壊・損傷しない、とされています。

顧客への説明の際には、その点をしっかり説明することで、後のトラブル回避につながります。

旧耐震基準だから
危険とは限らない

しかし、旧耐震基準の建物が、地震の際に必ず倒壊・崩壊してしまうわけ
ではありません。実際に、1995年に起きた阪神・淡路大震災では、旧耐震基準の建物でも3割超が軽微な損傷または無被害でした。一方、新耐震基準の建物でも1割程度が「大破」となりました。

同震災では、新耐震の鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションにおいて、ピロティ部分(2階の重みを柱だけで支えた空間のこと。マンションでは主に駐車場や敷地内通路として利用される)の崩壊が見られ、柱の脆弱さが浮き彫りになりました。そのため、1995年12月には「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行され、ピロティ構造の柱の強度の補強が必要とされました。

また、木造住宅でも新耐震基準の策定以降に耐震基準が大きく変わっています。

新耐震基準では筋交い等の耐力壁の基準量が大幅に増加しましたが、阪神・淡路大地震の被害を踏まえ、2000年に建築基準法が改正。耐力壁の量だけでなく、建物の片方に偏ることく「バランスよく配置する」、という基準が定められたほか、建築前の地盤調査などが必須条件となりました。

このように、建物の耐震設計の基準は大地震が起きる度に、その被害状況からの教訓を得て改正されています。図表に、その歴史と主な改正内容を記載しましたので参考にしてください。

◇  ◇  ◇

現在、南海トラフ地震などの大規模な地震の発生が予想されています。地震保険は、火災保険に付帯する形で加入できますが、住宅性能評価制度における耐震性能(1~3等級)に応じて、10~30%の割引が受けられます。旧耐震基準の建物については、顧客へ耐震改修を提案するのもよいでしょう。

※PDFファイルをダウンロードしていただくと実際の誌面がご覧いただけます
※(株)不動産流通研究所の著作物です。二次利用、無断転載はご遠慮ください

地場で活躍する不動産会社から大手企業まで取材し、不動産業界の最新のトレンドを紹介する業界誌『月刊不動産流通

★★ 購読お申込み・試し読みはこちらから ↓ ★★

☆☆ noteでも最新号の試し読みができます!↓ ☆☆


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?