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本には人を救う力がある デート・ア・ライブ感想

あけましておめでとうございます。
今年もぼちぼち本の記録を増やしていきたいと思います。

新年一発目にはどんな記事がいいだろうかと思いましたが、
原点に立ち返って、本という、人生を変える魔法についてお話したいです。

といっても、
「本は素晴らしい」とか「本は心の薬だ」とか、
そういった薄っぺらい言葉は使いたくありません。

だから極めて個人的な、n=1の
私にかけられた、そして一生とけることのない魔法について語ります。


私がライトノベルを好きになったキッカケ、
そして本当の意味で本を好きになったキッカケ・・・

それは、『デート・ア・ライブ』という作品でした。


おっと、
ライトノベルだと嫌煙しないでくださいね
もちろん、私はラノベやこの作品を布教したいわけではないんです

わたしががどのように本によって救われたのか、それを知ってもらいたいのです。(そしてそれが誰かの読書のキッカケになってくれれば最高ですが)


当時のわたしはとても精神的にまいっていました(まだいろんな意味で、子供だったんです)。

私は太平洋側の東北に住んでいて、東日本大震災を経験しました。
街が壊れていくような恐怖、もしかしたら自分が死んでいたかもしれなかったような神様のきまぐれ。

もちろん、住む土地の変更が迫られました。
それと重ねて私は人間不信も発症していて、友人も家族も信頼できませんでした。


そうして心を守るために自分なりに考えた結果、

誰にも期待してはいけない
何かに希望をもってはいけない
ただ植物のように何も考えるな


そんな人間になりました。


フロイトはすべての人が死の欲望を備えていて、誰もが無機物のような状態になりたがっていると言います。その通りでした。


人を信頼するな、絆を持つな。それはお前を裏切ることになる。
何かに期待するな。期待したぶんだけ、傷つくのはお前だ。



そうして心を閉ざしていたときです。

ある知り合いが、『デート・ア・ライブ』を読めと強く勧めてきたのです。

読んでやる義理もない程度の関係のくせに、
とてもしつこいし現物を持ってこられたから、読むことにしたのです。

これが人生の岐路だったのだなあ、と今では思います。


『デート・ア・ライブ』は高校生の士道が、無意識に災害を起こしてしまう能力をもった女性を助けていく物語です。
彼は特別な能力によって、その災害を無力化させることができます。

彼女たちに悪気はありません。それなのに災害を起こしてしまうせいで、世界から忌み、嫌われ、常に命を狙われています。


わたしは、彼女と同じでした。
もちろん、外部の状況は異なるでしょう。

だけど同じなのです。
自分以外のみんなが敵で、自分だけしか信じれなくて。
そうして、誰も信じず、何にも希望をもたなくなって、


心を静かに殺します。


安部公房の『赤い繭』の主人公がそうであったように……

彼女らの心の壁を壊すのが主人公でした。

彼は災害を止めるのでなく、実は彼女たちの心を救っていたのですね。

不信と絶望と怒りと悲しみの果てで、彼だけが手を伸ばしてくれる。

そんな主人公の泥臭いけどカッコいい姿に、彼女らは救われていく。


そしてわたしの心も救ってくれました。


本を超えて、次元を超えて、私のもとに。


希望をもってしまったのでしょう、当時のわたしも。

希望を棄てた振りをして、誰も信じない振りをして……。


ほんとうは誰かと語り合ったり、
ほんとうは、私に希望をもたせてほしかった。


主人公の姿を見て、もう一度誰かを信じてみようと思えました。

周囲の人間を嫌いになりたくて世界を憎しむために見ないふりをしていた、キレイな部分や優しい部分。
それから目をそらさないように、と思えたのです。
(それを見ることで、また苦しむことになるとしても)


彼のような人が、この世界にもいるかもしれないと思えたことが、
私の希望になりました。



同時に、彼の生き方を真似てみたくなりました。

士道は彼女たちを救うために、実はバックアップしてくれる機関が存在していました。
機関は独自のAIを用いて、主人公の行動の選択肢を提示します。それに従うことがある種、正しい。


それなのに、

本当に大事なとき、主人公はその選択肢に頼りません。

彼は自らの信じる方向に進みます。


選択肢に従っていれば責任を丸投げできるはずなのに……
選択肢に従っていれば安全圏にいられるのに……


自分の意思で選択肢に頼らずに未来を変えていく強さ。

絶望の淵に手を伸ばすだけではなく、自分の身も賭けてしまう蛮勇。

でもその主人公の行動だからこそ、彼女たちは救われました。


翻って、当時のわたしはどうでしょう。
きっと、選択肢があれば無批判に従っているような人間です。

予想できる出来事の、予想できる結末の中で
生きていく人間になりさがっていました。


「いい子」としてつねに与えられた選択肢のなかで生きてきました。

けどそれは単なる臆病だったんですね。

選択肢に頼ることで、責任から逃げてました。
選択肢に頼ることで、過度な期待や信頼をもたないようにしてきました。


主人公は違いました。
能力があるから主人公なのではありませんでした。
自分の行動の、危険も失敗も引き受ける強さが彼を彼たらしめていました。


彼の姿に発破をかけらた気分でした。

ただ絶望して悲劇のヒロインぶるのはもう、やめよう。

たとえ自分に何も能力がなくて、ただ救われることを期待してしまう
弱さが染み付いていたとしても

ただ待つだけじゃない。
少しくらいは世界の優しさに手を伸ばすくらいの勇気は持とう、と。


思えば『デート・ア・ライブ』のヒロインたちもそうでした。

士道がどれだけ救いの手を伸ばしたとしても、
その手をとる勇気がなければ決して変わることはできませんでした


彼女たちが、
彼女たちの行動で、
今の自分を変えようと、救いの手を取ろうと、
その勇気が、何より必要だったのです。


これが私の人生を変えた小説との出会いの一幕です。


すぐに行動を変えることはできませんでした。

けれどこのときから、心の持ちようは変わりました。

つねに明るくいよう。

人と関わるのは怖いけど、それでも関係を紡いでいこう。


行動に表れない、地面の下で種が発芽するようなささいな変化です。

けど、その時から、自分なりに世界を楽しむ方法を見つけられるようになりました。


そういえば、今一つ夢が叶ったのも、このおかげかもしれません。


行動が変わるに至ったのは、その後ラブライブ!というアニメからの影響です。
けれどもラブライブで行動が変われたのも、『デート・ア・ライブ』を機に心持ちだけは明るくなれていたからです。



気になった方は読んでみてください。

安部公房「赤い繭」は『壁』に所収です。



新年から地震でつらく苦しい思いをした方も多いと思います。
そんな時は、本を手に取ってください。
心の支えになってくれるかもしれません。

3.11の経験者より









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