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「罪悪感」という状態異常を手放す

風邪を引けばウィルスとの戦いにエネルギーを使う。
怪我をすれば傷の修復にエネルギーを使う。

だからその分いつもより多くの栄養が必要だし、睡眠が必要だし、休養が必要になる。

ゲームだったら「毒」「右手負傷」にそれぞれ効くアイテムがあって、それを使えば一瞬で回復できる。

しかし現実においては、残念ながら、回復には相応の時間がかかる

ついでにいえば、現実世界にステータス画面はない。体力の減少や体内の異常、そして精神の異常にはなかなか気づけないことも多い。

たとえば、「罪悪感」という状態異常がある。これは精神にスリップダメージをもたらす。罪悪感を抱えていると、じわじわとメンタルが削られていく。

あなたは「罪悪感」を、回復すべき状態異常だと気づいていただろうか?


「予定どおりにいかない」という罪悪感

「予定を立てる」というスキルを我々はいつしか習得した。

予定どおりにコトが進めば気持ちがいい。
時間を大切に使おうというモチベも生まれる。

だから「予定を立てる」ことは行動力を高めてくれるバフ系スキルだと、一般的には考えられている。

しかし、ひとたび何かトラブルが起きたり、割り込みタスクが入ったりしてコトが予定通り進まなくなると、

「自分はどうしてこう、時間の使い方が下手なんだろうな……。」
「自分は仕事が遅い……。コミュ力がない……。要領がよくない……。」

などと自分に対して精神攻撃がはじまる。一種の錯乱状態である。

「予定を立てる」は、うまく使わないとむしろダメージを受ける危険なスキルなのだ。


予定は仮説だ。とても もろくて、かよわい仮説だ。

あなたの時間の使い方が悪かったのではない。
あなたに急な仕事を割り振ってくる上司が悪人なのではない。

予定の立て方を、ちょっと間違えただけだ。

間違った予定を立てたあなたに「罪」はない。
予定外の仕事を割り振る上司にも「罪」はない。

ただ、淡々と予定の方を修正していけばいいだけだ。

予定の修正を繰り返すことで、「予定を立てる」スキルのレベルが上がっていく。

予定通りにいかない自分を責めても、予定外の仕事を振ってくる上司を責めても、あなたの精神がダメージを受けるだけでスキルポイントは得られない。

罪だと思うとダメージになる。間違いだと思えば経験値になる。

罪人はいない。ただ「間違い」があっただけなのだ。


「時間を無駄にした」という罪悪感

寝すぎた。ゲームをしすぎた。スマホさわりすぎた。
仕事からの脱線。なかなか取りかかれないダラダラした時間。

こういうのを自分の意思力の問題として処理してないだろうか。それは明らかな間違いだ。幻覚をみている。

これも罪悪感。精神にスリップダメージをもたらす状態異常である。


夏休みの計画を立てた(立てさせられた)ことがあるだろうか。

その計画通りに夏休みを過ごせたことがあるだろうか。自分は12年間、一度たりとてそんな夏はなかった。

理由はカンタンで、「夏休みの計画」の中にいる私は、サボらない完璧な人間で、それは想像上の、実在しない、伝説上の生き物だからだ。

我々はサボる。今日もサボったなら明日も絶対にサボるのである。

そのことには なんら問題はない。

問題なのは、サボるとわかっているのに それを予定に組み込まないことだ。

普段あれだけエビデンスを大事にするくせに、統計的には必ず発生する「サボり」を、今日こそは大丈夫だと無視する。

そして「またやってしまった……」と落胆し、罪悪感で精神ダメージを受けるのだ。

毎日。


我々は頭がおかしいのだろうか。

我々は頭がおかしいのである。


これまで何度も繰り返してきた失敗を、今日も当然犯すであろう失敗を、今日に限ってはそれは起こらないだろうと考える。ヤバいクスリをキメているとしか思えない。


つい寝すぎる。つい動画をみてしまう。ついダラダラしてしまう。

このとき我々は、回復しているのであり、準備しているのである。


感情や思考に負荷がかかるタスクは、脳やメンタルを疲労させる。筋トレと同じだ。すこし違うのは、実際に手を動かさなくても「やろうとするだけで」精神は疲労する、ということだが。

ダラダラしてしまうのは、疲労したメンタルを回復させるためであり、やりたくないことにとりかかるために、呼吸や心拍数を整えるためだ。

あなたがいくら「これは無駄な時間だから排除すべき」と考えたところで、「ダラダラした時間」はなくならない。睡眠と同じで、身体にとって絶対に必要な時間だからだ。

だからこの「ダラダラした時間」を、自分の意志力とか工夫でなんとかしようとするのは明らかな間違いだ。

Q.いやしかし、たとえばゲームをスマホから消すとかそういう工夫はできるはずだ。それがうまくいくこともある。

A.そういう "工夫" がうまくいくのは、たまたま調子がいい時期だからだ。

そもそもそういう "工夫” を思いつく時点で調子がいい。

本当に重い仕事やモヤモヤを抱えているときには、日本語が不自然なゲームをダウンロードして、延々とプレイしてしまうのである。


必要なのです。ダラダラした時間は必要なのです。

回復のために必要な時間を無駄だと錯覚し、自分を責め、自尊心を傷つけ、自信をなくし、不安に駆られ、自分は弱いと怯え、世界への恐怖を増大させ、ストレスを増大させ、身体全体を緊張させ、脳や内臓に負担をかけ炎症を引き起こすこと以上に無駄なことって、世の中にあるのだろうか。

休む自分を責めない。ダラダラする自分を責めない。罪悪感など一切抱かない。

悪びれず全力で休め。遊べ。サボるのだ。


サボることへの罪悪感を手放せば、サボっている(回復している)最中の「あーこんなことしてる場合じゃない」というスリップダメージをなくすことができる。つまり回復効率が上がる。

つまり回復速度が上がる。いつもより短いサボり時間で心身が満足する。


Q.いやいや、逆でしょう。罪悪感があるから少しのサボりで済むんでしょう。罪悪感をなくしたらそれこそ、歯止めがきかなくなるんじゃないんですか?

A.我々はこの洗脳から解放されなければならない。

罪悪感はあなたを助けてくれるブレーキなどではない。

ダラダラから抜け出せない極限の沼状態=依存

を引き起こす諸悪の根源だったのだ。


あなたにも経験がないだろうか。もうやめたいのにやめられないという苦しみの中、プレイし続けるゲーム。ガチャ。YouTube。

「こんなことやってる場合じゃない」という罪悪感を紛らわすために、もう1プレイだけ、もう1動画だけ。そうやって刺激を摂取し続ける。地獄のループにとらわれたあの苦しみの正体は、罪悪感である。

このループから抜け出すには、体力が尽きるか、金が尽きるか、誰かに怒られるか、不安と後悔が限界を突破するか。

このどれもがダメージが大きい。大きすぎる。


だから私は何度でも提案したいのだ。そもそもの諸悪の根源である、罪悪感を手放すというルートを。

何度でも提案したいのだ。


勇気をだして、ひたすら趣味に没頭しよう。

「こんなことをやってる場合じゃない」という声に対しては「わかってる。だから今全力で回復している。ここは私を信頼してくれ。今このクエストをクリアすることが、仕事のクオリティを上げるんだ間違いない」そう言い聞かせる。

やってみてもらえばすぐにわかってもらえると思う。あなたが思っている以上に早く、「ふぅ。そろそろやるかぁー」という瞬間は訪れる。

本気でやらないからいつまでも満足できず、いつまでもやってしまうような幻想にとらわれているのだ。

罪悪感で気を逸らすことなく十分に味わえば、人間の精神はけっこうすぐに満足する。

ながら食いせず、ゆっくりよく噛んでご飯を食べると食べすぎることがない。これも全く同じ原理だ。


罪悪感を手放す。
満足するまで本気で遊ぶ。

必要なのはたったこれだけのことだったのだ。


CM 12/11 池袋でイベントやります

12月11日 土曜日、池袋にて、エモーショナルワーカー(感情労働に従事する人)のための講座を開催します。


この講座に寄せる想いについてnoteを書きました。


読みたい本がたくさんあります。