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伝え方と感じ方のすれ違い。叱られたと思いがちな娘にどう声を掛けたらいいのだろう。

#20230629-151

2023年6月29日(木)
 「ノコさん、いわない
 私は首を小さく横に振り、低めの声できっぱり短くいった。
 ノコ(娘小4)が私の顔を見上げ、ぎゅっと口をつぐんだ。
 朝。
 登校班の集合場所でのこと。ママさんたちが3人、子どもを送りに出ていた。班の全員がそろうのを待つあいだ、同級生にくっついてはしゃいでいたノコがふと口を滑らせた。他班の家庭のことで、たいしたことではないが、その場でいうことではなかった。

 私の言葉にノコが私を睨む。
 ママさんたちはすぐに察し、「そうね」「お家の事情があるからね」と言葉を濁した。耳ざとく聞きつけた子が「なんで?」「ズルくない?」というかとヒヤリとしたが、そこまで興味を引くものではなかったようだ。
 そのまま話は流れ、班の面々がそろったところで学校へ向かって出発した。
 「行ってらっしゃい」
 ノコは振り返らなかった。

 学校に行く前にノコが口にしたことをいった私も悪かった。
 大人からしたらそう大事おおごとなことではなかったし、下手に口止めをするとノコには余計いいたくなるところがあるため、特にいわなかった。まさかあの場でノコがいうとは思わなかった。
 厳しい声でいったのは、やさしくいうと、ノコに通じず「なんで? どうしていっちゃダメなの?」としつこくいいかねないからだった。
 私としては怒ったのではなく、短い一言でノコが察して口を閉じてくれれば、という願いだった。

 帰宅したノコに、朝のことを伝えた。
 「すぐいうのをやめてくれて助かったよ。あそこでいうお話じゃなかったからね」
 私としては、あの瞬間、大人たちのあいだに走った場の空気を読んで口をつぐんだノコを褒めたつもりだったが、ノコはギロリと私を睨んだ。
 「なんでキツくいったわけ? あれで嫌な気持ちになって、学校に着くまでずーっと心が真っ黒になった」
 日頃からノコは「キツくいわれるのは嫌」「強く注意されると最悪な気分になる」といっている。それは私からだけでなく、むーくん(夫)でも先生でもお友だちでも誰がいってもだ。
 ノコがそういっているので私は気を付けているつもりだが、今朝の場合、通じない可能性が高かった。手短に伝えるためにも必要だったと思う。やさしい口調ではなかったが、声は小さく怒鳴りつけたわけではない。
 ノコが私をねめつける。

 「ママ、謝ってよ。私を嫌な気持ちにしたんだから、謝って!」

 悪いことをしたら、常々素直に謝ろうと思っている。
 だけど、ノコにそういわれて、私はすぐ謝ることができなかった。
 どうして「ごめんね」がいえない?
 ノコを嫌な気持ちにさせたのは悪かったと思う。特に口止めをしていなかったし、ノコにはまだいっていいことか、いわないほうがいいことかの判断が難しい。
 私はあの場でノコを叱ったわけでも注意したわけでもなく、それ以上いうべきことではないことを「察して」ほしかった。私の気持ちが「通じて」ほしかった。だから、口をつぐんだノコを帰宅後に褒めた。
 ――ママの気持ちをわかってくれて、嬉しかったよ!

 私は結局ノコに謝れなかった。
 キツい口調や強く注意されることを嫌うノコにそう受け取られることをしたのは悪かったと思う。
 ただノコに強く「謝って!」と責めるようにいわれ、納得がいかなかった。ノコ自身が日頃から周りの人を荒い口調で注意するのに、自分はされたくないという。ノコ自身は自覚しておらず、「私はしていない」というが、十分ノコのものいいはキツい。

 伝え方、感じ方のすれ違いか。

 ママは「それ以上いわないで」とお願いするつもりでいったのだけど、ノコさんは強く注意されたように感じたんだね。
 そう感じさせたことはごめんね。
 でも、ママは注意したのではなく、「ノコさん、わかって! もういわないで!」ってママの気持ちが通じてほしかったんだ。

 こういうべきだったか。
 ノコは自分に対して強くいわれたことを忘れない。
 数日後にまたいってくるように思う。そのとき、私が忘れずにそう伝えられればいいのだが…
 毎日がバタバタで。
 私のほうが覚えていられないんだよなぁ。

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