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ノコの「デート」

2023年3月17日(金)
 本日、週明けにあるピアノの発表会前、最後のレッスン日。
 ノコ(娘小3)が小学校に行っている間に、インターネットショップで購入した品々が届いた。
 ノースリーブの光沢のあるドレス。
 アレンジ用のレースのショール。
 大きなリボンのバレッタ。
 特記欄に急ぎの発送をお願いしたが、今週中にすべて手元に届き、胸をなでおろす。
 実物を見るまで材質やサイズが不安だったが、大丈夫そうだ。
 あとはフォーマルシューズとタイツかソックスを買えばいい。憧れのヒール靴をノコは履きたがるだろうか。「コンコンの靴」とノコは呼び、発表会はもちろん、街なかで自分より幼い子が履いていると羨望のまなざしでじっと見つめる。今回の曲はペダルを使わないので履いても大丈夫そうだ。

 レッスンがはじまると、ノコは袖をまくり、先生に包帯を巻いた腕を披露する。
 痛いこと、ブランコでぶつけられたことを「ひどいんだよ」と報告する。先生が大きな怪我なのか、と困惑した表情で私を見る。私は小さく首を振って、「大丈夫です」と合図する。小さい子も教えている先生はすぐに察し、「痛そうねぇ」とノコにいう。
 もう本番直近なので、先生はとにかく間違えても止まらず、気にせず、最後まで弾くことと繰り返す。
 止まらず。気にせず。最後まで。

 レッスンを終えて、外に出ると、ノコがいう。
 「もう全然腕痛くない」
 「じゃあ、今夜から湿布と包帯はいらない?」
 「いらなぁーーい!」
 先生に怪我を告げ、心配してもらったので満足したようだ。

 むーくん(夫)と合流し、外で夕飯を食べる。
 なんと今夜はノコとむーくんはデートだ。むーくんの趣味にノコが巻き込まれたともいえるが、本日で定期運行を終了し、引退するJR東日本の特急車両651系を二人で乗りに行くのだ。21時上野駅発と遅いため、私は渋ったがむーくんがノコを誘った。切符は2枚しかない。
 まぁ、二人がよいのならいい。明日は土曜日、学校もない。
 むーくんに食後のデザートをねだるノコに私はいった。
 「パパとデートなんてよいねぇ」
 ノコが目を輝かせて叫ぶ。
 「デート!!!! ええええ、何買ってもらおうかな!
 むーくんと私は目を合わせてしまう。何をいってるんだ?
 「ノコさん、デートって何か買ってもらえることじゃあないよ?」
 「えええ、そうなの? じゃあ、デートって何するの?
 「好きな人同士が二人で一緒に過ごすことだよ。過ごすなかに、お食事やショッピングが入る場合もあるけど、大事なのは”好きな人と一緒にいる”こと。何か買ってもらえるなんて思ったら、相手の人がビックリしちゃうよ」
 いったいどこで「デート=買ってもらえる」と覚えたんだろう。
 ノコがいっきにつまらなそうな顔になる。
 確かにノコが愛読する少女漫画にカッコいい男子からプレゼントを贈られる場面はありそうだけど… そんな価値観、さっさと捨てたほうがよい。

 駅でむーくんとノコと別れ、私は一路家へ帰る。
 夕方から雨予報だったが、まだ降らない。ここのところ、あたたかな日が続いていたからか、今夜はやけに寒く感じる。
 さぁさ、しばし「わたし時間」
 二人が帰るまで大きく伸びして、ぬっくい部屋を堪能しようっと。


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