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「ここには自由がない!」と娘が叫ぶ。

#20230804-188

2023年8月4日(金)
 「自由がないッ!
 ノコ(娘小4)が叫んだ。
 「ぜーんぶ、全部、パパとママが決めてさ。私には自由がないッ!

 習い事の夏合宿から帰った翌日。
 ノコが爆発した。
 夏休み初日に立てた学校の宿題計画は、すでにずれまくっている。ノコの最大スキル「後まわし」が発動したためだ。1日に済ます宿題量は無理せず少なめだったのが、どんどこ、どんどこ雪だるまのようにふくらみ、今や巨大な玉になっている。
 そのたまった宿題に取り組んだものの、やりたくない気持ちが前面に出ているので拒みが強い。
 付き添っているむーくん(夫)の顔もだんだん険しくなってくる。

 わかる・・・・・・うん、わかるよ。

 ノコに癇癪かんしゃくをぶつけられたくない私は、むーくんが相手をしてくれることをいいことに、家事にいそしんでいる。
 3泊4日の合宿後の洗濯物量はなかなかだ。「後片付けまでが合宿です」といいたいところだが、今回は体調不良にならなかったのでお迎え要請がなく、大人時間を満喫できた。後片付けはやってあげよう、いや単に私がやった方が早い。一見やさしそうで、ノコにとってはよいことではないと思いつつも、疲れているのは確かだしなぁと思ってしまう。
 ぐらぐらだ、筋が通っていない。

 「ヤダ! やんない! やーりーまーせーん!
 ノコが紙をクシャクシャに丸め、投げた。
 テーブルに突っ伏し、そっぽを向いて耳をふさぎ、「わかんない」とさじを投げた計算問題についてのむーくんの説明を聞く気ゼロ。
 見れば、3桁割る4桁の筆算だ。
 割る数、割られる数をだいたいの数にして、商の見当をつけていくのだが、1回で商が立たないのがノコとしては「面倒くさい」ようだ。まず式にある数を「だいたいの数」にして考えることが嫌だという。
 むーくんの苛立ちが増しているのがわかる。
 荒々しく息を吐けば、ノコはそれが気に入らない。むーくんとしては怒鳴りたくなる気持ちを抑えるための吐息なのだが、ノコには嫌味に感じるようだ。

 どちらも頑張るなぁ。

 そばにいるだけで、胃がキュウと縮む。

 どうしたらいいんだろうなぁ。

 夜になって、ノコが「自由がない」と叫びだした。
 日中のちっとも進まない宿題ーー19時時点、本日やる量も終わっていないーーに対する鬱憤うっぷんが爆発したようだ。
 19時入浴というルールに「お風呂くらい好きな時間に入らせてよ!」と怒鳴る。
 「でもね、次の人が待っているの」
 「じゃあ、先入ればいいじゃん」
 「ママはまだお夕飯の後片付けば終わってないし、パパだってまだ入れない」
 「ここには私の自由がない!
 ノコが憎々しげに私を睨む。
 「それなら、何時に入りたいの?」
 「7時45分」
 「7時45分に裸でお風呂場にいるんだったら、それでもいいよ。7時45分になってからお風呂の用意をするのはやめてね」
 ノコの風呂支度はなにかと時間がかかる。新しいパジャマと下着を用意して、トイレを済ませればいいだけなのだが、パジャマを出すのも上下1枚ずつだったりーーまとめて畳んであるのに!ーー踊りはじめてしまったり。
 「・・・・・・わかった」
 そういって、「宿題のやり方を忘れたし」と自主学習の手順本をソファーで読み出す。
 そして、約束の時間になると私のエプロンの裾をためらいがちに引っ張る。
 「ママ、気持ち悪い」
 「あら、大変。それなら歯を磨いて寝たほうがいいね。念のため熱はかってね」
 「ママ、メロンソーダ飲みたい」
 ノコとむーくんはかき氷用のシロップを炭酸水で割って飲むのにはまっている。
 「気持ち悪いのに、メロンソーダはもっと気持ち悪くならない?」
 「気持ち悪いっていうかぁ・・・・・・頭、痛い?」
 熱はなし。

 お風呂に入りたくないだけなのだろうか。
 どこまで自分の「自由」が叶うのか試しているのだろうか。

 明日はノコが楽しみにしているイベントがある。
 「明日のお出掛け、無理かもねぇ…… お断りの連絡しようか?」
 「行ける。明日には治る」
 「いや、気持ち悪くて頭痛いなら、明日は熱出ちゃうかもよ」
 「明日には治るってば!
 ドンと足を踏み鳴らし、ノコはメロンソーダを一気に飲み干すと、グラスを乱暴にテーブルに置いた。

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