私の手柄は夫です。
#20240229-368
2024年2月29日(木)
「子育てって、どこか母親がやって当たり前の風潮があるせいか、父親がちょっとやっただけで周りから褒められたりして、パパばかりとモヤモヤすることありませんか」
児童相談所での面談の場でケースワーカーがそういった。
私は意味がわからず、小首を傾げてしまう。
「子どもの悪いところは母親の躾がなっていない、といわれるけれど、いいところは父親のおかげね、といわれるとか。手柄を取られちゃうといいますか」
はて。
私の首がさらに深く傾いた。
幸いなことなのか、ただ私の耳に入っていないだけなのか、ノコ(娘小4)がしでかしたことを私のせいだと責められた記憶はない。
ノコはどちらかといえば怒りっぽく、品性高潔からはほど遠い。周りにご迷惑をかけることも多いと思う。私の知らないところで、「ノコちゃんはねぇ」と眉をひそめられている可能性はゼロではない。
里子のノコは、幼稚園年長児で私たち夫婦に委託された。近くの幼稚園に通いはじめたのは夏休み前。そんな時期に入園した親子は新参者で、すでにある母親同士の輪に入りにくかったが、こちらも慣れない子育てに必死で気にしていられなかった。
小学校入学は、新型コロナウイルスの流行と重なり6月に延期。入学後も学校行事の中止や縮小が続き、保護者の知り合いはたいして増えないまま現在に至っている。
ノコはいろいろやらかしていると思うものの、学校からの報告はあっても噂が私の耳に届くことはない。
学年が上がるにつれて働きに出る母親も増え、今や大半が共働き家庭だ。
正直、ママ友ランチをしている時間はないのかもしれない。
むーくん(夫)は子育てに協力的だ。
いや、協力という言葉は適切ではないか。
子育てに関しては、私がメインで、むーくんがサポートという関係ではなく、共にノコに向き合う同士という感覚だ。もちろんむーくんは職業を持ち、外で働いているため、時間的制限はある。
勤務日は暦通りではなく、勤務時間も日によって異なる。早朝出勤の日は、その分早く帰宅する。冬ならばまだ夜といっていいくらい暗い時刻に起きて働いているのだから、たとえ日のあるうちに帰宅できるとはいえ、疲れも出て眠いと思う。それでもノコの習い事の送迎をする。宿題を見る。洗髪後の髪をドライヤーで乾かす。
習い事先や学校行事に顔を出す機会も多い。
平日休みもあるので、学校行事と重なれば、留守番せずに私と一緒に参加する。
「うちのパパは全然送り迎えをしようとしないわよ」
「今日は仕事がないのに、授業参観はイヤだって。家にいるわ」
そういわれることは、確かに多い。
私は内心「そうなのよ!」と胸を張りたくなるが、そこは控えめな笑みを返す。
「勤務形態が特殊だからかな。平日がお休みのときもあるし、夕方に帰ってくることもあるし」
事実ではある。
事実ではあるが、本音をいえば「そうなの! いっぱい手伝ってくれるの!」と声を張り上げて自慢したい。
でも、同時に「手伝う」に違和感を抱く。
お互い時間的に、体力的にできることをしているだけだ。
「だけ」だけど、私が主力で子育てをしているわけではないのだけど、「~してくれる」という言葉が口から出てしまう。そこににじむのはおそらく感謝なのだろう。
私が主力ではないけれど、今日のこの役目を担ってくれてありがとう。
私が主力ではないけれど、一緒にノコと向き合ってくれてありがとう。
私が親として他者から非難された覚えがないからかもしれないが、むーくんが褒められると私もくすぐったいほど嬉しい。
「たとえば、パパに手柄を取られちゃって、私だって頑張っているのに、と思いませんか」
ケースワーカーが繰り返す台詞に我に返る。今は面談中だった。
ふふふ、取られちゃうなんて、おかしなことをいう。
夫の手柄は私の手柄。
だって、そんな夫を持てたのは私の手柄だもの!
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