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エッセイ

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エレベーター・やさしい人(中島みゆきの歌によせて)・分身の術など あれこれ
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2022年12月の記事一覧

分身の術

分身の術

 カウンセラーになりたくて、講座をうけたことがある。そのときの参考文献がアメリカの心理学者、カールロジャースの『パーソナリティと行動についての一理論』という本だった。

 彼は「人は実際にあるものではなく、自分が知覚したものに反応し、その知覚するということが、その人にとって実在ということだ」と述べている。つまり、気づくということが、その人にとってものがある、ということだと。分かりやすく言えば、石に

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わたしの手

わたしの手

「手がきれいだね」と言われた。初めてのことだ。
私の手の平は薄く、指はギスギスごつごつしていて、およそ女らしくない。
手の甲には、血管がチグリス・ユーフラテス川のように複雑に分岐して這っている。人差し指の付け根に小さな黒いほくろがあるが、これは小学生の時、鉛筆の先でつついてできたもの。その後何度かナイフで取ろうと
試みたが、さすがにこわくてやめた。その小学生のころ
「チズちゃんの手は、ETみたい」

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救急搬送拒否

救急搬送拒否

固いタイトルになりましたが、実は父がこの常習犯なのです。
今まで7回救急車を呼んだことがあるのですが、4回は拒否しました。
拒否する(救急車が来ても、病院には行きません!と断る)と、どうなるか。
救急隊員は、帰ってしまいます。家族である私は、本人拒否のため搬送中止の承諾書に署名を求められます。周りがどんなに病院に行った方がいい、と判断しても、本人が拒否すれば、搬送できないのです。

拒否したうち3

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楽譜を旅して

楽譜を旅して

学生時代、マンドリンクラブに入っていました。入部の動機はちょっと不純で、さんざん受験勉強をした後だったので、楽しい部に入りたかった、もっと言えば、遊びたかったのです。もちろん音楽は好きで、中学時代は合唱部、高校時代も音楽を選択していた、という背景はあったのですが。

入部するとまず希望パートを決め、それぞれの楽器を注文しました。私は、ギターを希望、かっこいいからです。ギターが届いた日、教室に行くと

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