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楽譜を旅して

学生時代、マンドリンクラブに入っていました。入部の動機はちょっと不純で、さんざん受験勉強をした後だったので、楽しい部に入りたかった、もっと言えば、遊びたかったのです。もちろん音楽は好きで、中学時代は合唱部、高校時代も音楽を選択していた、という背景はあったのですが。

入部するとまず希望パートを決め、それぞれの楽器を注文しました。私は、ギターを希望、かっこいいからです。ギターが届いた日、教室に行くとみんなの注文したギターが机の上に一つずつ置かれていて
「好きなの、えらんでいいよ~」
と、上級生(3年生)の声。
その上級生に選んでもらっている1年生もいたので、さっそく私もお願いしました。
ひょい、とギターを抱えて、ポロロン、と弾き、一言。
「これがいいんじゃない?」
うわぁ!ステキ!すっかりその上級生Nさんのファンになりました。
女子大だから、もちろん女性、ちょっと宝塚の男役に憧れる気分です。

それから3年生による個人レッスン、秋の演奏会にむけてのパート別レッスン(パーレスと呼んでいました)夏の合宿(菅平高原でした)と続き、私はめきめきと上達していきました。(多少フィクションあり)

ここでマンドリンクラブの楽器紹介です。マンドラはマンドリンの大きいもの、マンドセロは、背中側がぺたんこでマンドリンのように丸くふくらんではいません。大きいから弾きやすいように、なんでしょうね。


マンドリンの種類

このほかにベース(普通のコントラバス)や曲によってはパーカッションや
フルートが加わることもあります。

2年生になったとき、心配ごとが持ち上がりました。新しい指揮者を選ぶことになったのです。なにか役を決めるとなると、押しつけられる、というトラウマを抱えていた私は、ギターパートにいたら、指揮者にさせられたらたいへんだ!となんの根拠もないのに日夜悩みました。そして1学年2名しかいない、マンドセロ(セロ)に代わることを決めたのです。マイナーパートなので、セロ弾きから指揮者は絶対ありえなかったので。それでまた、一から
トレモロを習い始めることになったのです。指揮者はギターパートから
Tさんが選ばれ、ストイックさに皆が恐れるコンダクターになりました。

セロは弦楽オーケストラで言えば、ベースに近い存在で、ボン!ボン!と低音を出すことが多く、トレモロで弾く個所は裏メロが少し程度。トレモロの
華麗さよりむしろ、迫力が求められました。

3年生になったら、なんとかセロもマスターでき、この年の演奏会は私達3年生が中心の、記念すべきものとなりました。大会場を借り、ゲストにソプラノ歌手を招き、司会は我が部三美人の筆頭、Yさんでした。後日談ですが、Yさんへは沢山のファンレターが来たそうです。

セロ仲間のMさんはずっと親友で、今もマンドセロを弾いています。
私はとっくに諦め、しばらくギターは習っていたのですが、その後エレクトーンにはまり、と、どれもいい加減で終わりました。

左手指先にできていたコチコチのタコも今は昔・・・
でも、演奏会で100人の心が一つになったと感じたあの瞬間、音の世界のまんなかに、つい、とはまったように感じた瞬間は、一生忘れないでしょう。

        おわり


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