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【フリーズラボ】 農業と急速冷凍機のおいしく合理的な関係とは? - ファーム小川代表・小川幸夫さんがフリーズラボを体験

みなさんこんにちは、フリーズラボ(freeze-LaBo)です。

フリーズラボは、千葉県・柏の葉キャンパスにある、急速冷凍技術を用いた食と生活のイノベーションを起こす実験室です。noteでは、日々研究室で起きているイノベーションのタネ、またこの活動で拡がるコミュニティの話題から、「ミライの食」について、考えていきましょう。

フリーズラボには、飲食関係を中心とした様々な方が訪れ、急速冷凍の技術を体験し、また新しい食の可能性の実験を行っています。

そんなラボへのお客さまをnoteでもご紹介します。今回のお客さまは、柏市で独自の農業を展開しているファーム小川の代表、小川幸夫さんです。小川さんは、ご自身の畑から、朝とれた季節ものの夏野菜を持参し、急速冷凍機の可能性を実験しました。

YouTubeチャンネルでは、小川さんのインタビューとラボ体験風景をレポートしています。こちらもあわせてご覧下さい。

ファーム小川独自の農業とは

小川幸夫さんは、1.5ha、学校の校庭より少し大きいほどの農地で都市型農業を営んでいます。しかしそこで育てられている植物の数は日本一多く、500〜1000種類にも及ぶと言います。

「食べられる植物は、植える」

そんな方針で、日本での栽培が珍しい野菜も育てており、地元の飲食店でも、本場の食材が利用できるとして信頼も厚いのです。

小川さんの農業に対する考え方とは、どんなものなのでしょうか。

「27歳で農業を始めました。きっかけは、もともと実家が農家だったこともありますが、当時、減反政策や食料輸入など、農業を取り巻く問題に対して、とてももどかしい気持ちがいっぱいありました。

実家は慣行農業で、季節ごとに一つの作物を大量に作る方法でした。しかし、大量生産をしても、それがすべて売れる時代ではなくなってきてしまいました。

自分がやりたい農業がどこにあるのか?

多様な、色々なものを作る農業に変わっていくことで、「ムリのない農業」ができるのではないか? と取り組んできました」

こうして、1000種類にまで及ぶ植物を育てる、ファーム小川のスタイルが出来上がっていきました。

例えば、カルドンゴッホと言われるイタリアの郷土野菜は、地元・柏のイタリア料理店から買いたいと言われるようになりました。しかし日本での栽培方法も確立されておらず、値段も決められません。

それでも、世界の食べられる植物の多様性が、ファーム小川で成立しており、食の探求の場所になっているのです。

急速冷凍機を体験!

小川さんは、自分の畑から、トウモロコシ、トマト、ブルーベリー、オカヒジキ、オクラといった旬の野菜や果物を、フリーズラボに持ってきました。
これらを、-35℃で15分、急速冷凍して、どうなるかを検証する実験を行いました。

実験前に、小川さんは、野菜や果物の冷凍について、こんなイメージを持っていました。

「冷凍というと、カチンコチン。食感はただ硬いだけで、解けるとぐちゃぐちゃになると思っていました」

これは、家庭にもある冷凍庫で凍らせた場合(緩慢冷凍)とほとんど同じイメージと言えます。ゆっくり凍ると、水分が膨張して細胞壁を破壊し、果物や野菜の実の部分がそのまま氷と化します。

そのため、触感はかみ切れないほど堅く(氷なので)、また溶けると原形や食感を損ねてしまいます。

しかし、急速冷凍機で凍らせるとどうでしょう?

先ほどの緩慢冷凍で起きていた、細胞壁の破壊が起きる前に水分が凍結するため、ナイフが通る、かみ切れる凍結した野菜や果物が出来上がるのです。
ブルーベリーやトマトはそのままかんでも歯が果肉に通り、口の中にひんやりとした冷感、そして溶け出して口に拡がる甘い香りと味は、なんとも新しい感覚。そしてなにより、おいしいのです。

トマトをかじった小川さんの顔も夏の太陽のような満点の笑顔になり、こうつぶやきました。

「もしかしたら、1年中、おいしく食べられるのかな?と可能性を感じました。

今は1年中、トマトやキュウリが手に入りますが、冬場は暖房をかけてハウスで育てています。燃料費のコストはかさみますし、必ずしもおいしくない。

だったら、夏、自然の太陽で育てて安く大量にとれた野菜を、急速冷凍機で冷凍保存しておけば、冬でもおいしいトマトやキュウリが食べられるようになるかもしれません。

さらに、凍らせてみたいのは、千葉県特産の落花生。茹で落花生用のおおまさりという品種。そして枝豆。食感が大切な野菜たちを試してみたいです」

農業を救う可能性を感じた

小川さんは、もともと近代日本の農業に対して問題意識を持ち、独自の無理なく持続する農業のスタイルを確立しました。

しかし急速冷凍機の可能性は、日本の農業をより無理なく持続させることにもなると指摘します。

「一生懸命作った野菜たちの販売が難しい時代です。うちも含めて、畑でものすごい量の野菜を捨てている農家が多いのです。

急速冷凍機を農家が、あるいは飲食店を含めた食品加工業界の人たちが、おいしい時期に大量にとれた野菜を、そのときの味のまま凍らせて保存できれば、農家も助かるのではないか、と思います」

農家を含む飲食業界・食品加工業界全体で取り組むことで、よりおいしい野菜を無駄なく楽しむ事ができる環境が作れるのではないか?と、小川さんは急速冷凍機が農業を救うことになると考え、普及を願っていました。

最後に、直近で起きた農業にまつわる事件についても触れました。

「少し前に、埼玉と千葉で雹の被害がありました。雹が降ると、野菜も果物も全滅。傷ついていたんでしまうからです。

しかし、その瞬間、食べられるものを急速冷凍で保存できれば、助かった人もいただろうな、と思いました」

急速冷凍機の普及は、農業の持続性や安心/安全、そして何より、野菜や果物のおいしさを届けるインフラになるかもしれません。そんな可能性を、小川さんは見出しているのです。


freeze-LaBoでは、飲食店や飲食チェーンの経営者の方々、不動産や投資家の方々にラボに来て頂き、様々な実験にご参加頂きたいと考えております。ウェブサイトで詳しくご案内しています。
https://freeze-labo.com/


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