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幸福日和 #083「その視点の裏側に」

「どうしてそんなに
前向きでいられるんですか?」

時々そのように聞かれることがあります。

それはとんでもない誤解で、
過去の自分を思い返してみますと、
もともとはマイナス思考の人間だったんですね。
もう、それは過剰とも思えるくらいに、、、。

まず、何をやるにしても、
失敗することばかりを先に考えてしまうんです。
学校のテストでも、誰かに告白するという時でも、
とにかくダメだった時のことばかりを考えてしまう。

だから、昔は何も挑戦しようとはしない少年でした。

幼い頃から続いたことといえば、
祖父から誘われて続けた、茶道と書道くらいでしょうか。
(不思議なことに、これだけは子供のことから
呼吸をすることのように今日まで続いています。)

また、困ったことには幼い頃の僕は、
周囲に対してものすごく神経質だったんですね。
たとえば、人の視線の些細な変化だけで、
相手が自分に何か隠し事をしているのではないかと、
疑ってしまうこともありました。

空がどんよりと曇り、雨が降りそうな時には、
なにかとんでもない不幸が
自分に襲いかかってくるのではないかと考えてしまったり、
歩行者信号で何度も赤信号で止まるようなことがあると、
なぜだか、その日は不安になって家に引き返すなんてことも。

今となっては、そうした一つ一つが、
とんでもない笑い話なのですが、
当時の僕にとっては、とても笑っていられる状況ではなく、
常に日常のあらゆことに神経を尖らせながら
毎日を送っていたんです。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

そんな中で、
幼き僕を救ったのは、
祖父の一言でした。

「嫌なことばかり続く日は、視点を裏返してみてごらん」
「良いことだけしか見えなくなるから」

「灰色の日常は、
オセロのように裏返していけばいいんだよ」

「雨が降ったら、落ち込んだらダメだよ、
雨だからできることを考えてみてごらん」

「学校で嫌なことを言われたのなら、
世の中には自分とは違う考えもあるのだと受け止めてごらん」

そうして、
落ち込んで悩み、ふさぎ込んでしまいそうな時があれば
その視点をくるりと裏返してしまえばいい。

それが祖父の教えでした。

「オセロ」というのも、
一つを裏返していくと、不思議なことに周囲の視点も
広がるように裏返って景色がまるで変わってゆくのだと。

祖父からは書道を教わりましたが、
お稽古の時にはよく、
自分の書いた文字を裏返して眺めていた祖父の姿が印象的でした。

裏返すと、文字の骨格や隠れた佇まいが立ち上がり、
自分というものがよく見えるのだと。

おそらく祖父は、
そうした視点で日常も眺めていたのかもしれません。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

僕たちは皆、
同じ世界を生きているはずなのに、
同じものも見ては違うことを感じ、
その積み重ねが、その人の人生になっています。

大切なことは、
自分がどのような環境に居るのかという以上に、
その環境を「どのように眺めていくか」が
大切なことなのだと最近は感じています。

悪いことがあれば、
くるりと視点を裏返してみる。

状況がよくない時ほど、
悪ければ悪い時ほど、
その視点を裏返した向こう側には
素敵な景色が広がっているかもしれません。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

もちろん、無理に明るい方に
考えなくてもいい。

だって、
前向きでいることが
苦しい時だってありますからね。

そんな時は、
しばらく光を見るのはやめて、
闇の中で静かに時を過ごすことも大切。

そうして、
時が来ればゆっくりと視点を
明るい方へと裏返してゆけばいいんです。

夜の闇の中でさえ、
月のやさしい光に照らされている世界に
僕たちは生きているわけですから。

完全な闇など、
この世界に存在しないと思うんです。


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