見出し画像

孤島の窓辺から #014「憧れのままに」

僕は田舎で育った経験があるからか
森や山に対する特別な思いが昔からあります。

故郷の家には裏山があって、
生活の中には常に様々な木々や花々
それを包み込む深い森がありました。

身近にある場所にも関わらず、
どこか遠い憧れの場所のような、
同時に人間ごときが容易に立ち入ってはいけない
独特の雰囲気を感じたものです。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

ドイツに滞在していた時のこと。

彼らの森に対する思いにも
同じようなものを感じました。

例えば、ドイツのグリム童話には、
「白雪姫」や「ヘンゼルとグレーテル」のように
「森の中を舞台」にした物語が多いですよね。

ドイツの森林は日本のそれとはどこか違い、
深く鬱蒼として、一度入ったら
二度と戻ってこれないような世界観。
そこには妖精たちが潜んでいて、
どこかに魔女が住んでいそうな、
童話の世界が現実にありえるのではないか、
そんな気配すらありました。

そんなドイツの友人と
深い森の中をハイキングしながら、
そんなドイツ人の森との(適度な距離感を持った)
関わり方を感じたものです。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

森林は様々な生き物たちの
複雑な繋がりによって成り立っています。
そこには人間の想像も及ばない
生態系が溢れ広がっている。

人間の想像をも超える「何か」がそこにはあると
探求したのは、あの博物学者・南方熊楠さんでしたが、
いつの時代も、そのように、
人は森林や山を信仰の対象にもしてました。

日本では、
最近ではそんな憧れの山を丸ごと買い取って、
そこでセルフキャンプをしたり、
仕事の拠点にしようと考えてる人が多いと聞きます。

僕は田舎生まれで、
山に対する思い入れは深く、
その中で人間が生きていくことの厳しさを
身を以て感じてもいます。

昔は、祈りやお参りをした後に
その山に入っていくことだってありましたからね。

きちんと考えた上でならばいいけれど、
なぜ、人々が古来からその場所を敬ってきたのかを
きちんと理解することも必要なのかとも。

一時の娯楽と、現代の価値観だけで、
大切なものを侵してしまわないように。

知らなければよかった、
こんなはずではなかった。

軽い憧れだけで、
一時代の価値観だけで、
心の逃げ場所だった憧れの場所を
自らの手で潰してしまわないように。




この記事が参加している募集

#習慣にしていること

130,707件

最後までお読みいただきありがとうございます。毎日時間を積み重ねながら、この場所から多くの人の毎日に影響を与えるものを発信できたらと。みなさんの良き日々を願って。