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幸福日和 #094「二つの道」

僕の半生を振り返ってみると、
この人生という大きな道を歩みながらも、
そこにはいつも「二つの脇道」がありました。

それは、
山へ向かう道と、海へと向かう道。 

生まれ故郷でも、この孤島生活の中でも、
いつも、この二つの道があった。
僕はその二つの道に支えられてきた気がするんです。

一つは、山への道。
それは、どこまでも深い山々と自分を繋いで延びてゆく道。
光を照り返す新緑に囲まれながら、空気の澄んだその山道を歩いていると、
柔らかな木漏れ日、心地よい鳥のさえずりが
いつもやさしく僕を迎えてくれました。
自分自身と深く向き合いたい時、
心の内側と向き合いたい時、
僕はこの森への道をひた歩んでいました。

また、ある時は、
もう一つの、海への道へ。
波の音に誘われるように、その潮風に導かれるように、
草原をこえ、木々をかき分けた先に、
遥かな水平線が穏やかに迎えてくれました。
自分の将来を思い描きたい時、新しい世界に繋がりたい時、
自分の心を外側に解放したい時には、
僕はいつも、この海へと繋がる道を歩んでいました。

内側に向き合うための山への道、
外へと解放していくための海への道。

この二つの道に僕は支えられてきたように思います。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

不思議なことに、
人生は一本道に例えられます。

でも本当は、
その道は決して一本ではない。

ある時には北へ外れ、
ある時には南へ寄り道する。

そんな自分のための脇道があってもいいと思うんです。

一本道にだけに縛られて窮屈になるよりは、
そんな脇道とともに歩みたい。

そんなことを考えながら、
浜辺でさざ波を眺めていると、
山の方からは、木々のざわめきが優しくとどき、
小鳥のさえずりが響いてきます。

明日は、反対側の道へ歩んでゆこう。
そう思いながら、穏やかな気持ちになるんです。


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