孤島の窓辺から #016「本質を知る人」
時代の変化とともに
自分の在り方を問われる時があります。
例えば自分の業界の周辺でも、
そうしたリアルな数々の変化を
目にしてきました。
アップル社によるマキントッシュが登場し
DTP(デスクトップパブリッシング)が普及した時、
多くの製版や写植の印刷職人さんが
働く場所を失いました。
また、エンジニアの現場では、
昨年まで普通に使いこなしていたプログラミング言語や
アプリケーションが時代の流れによって変わっていくことも。
その都度、別の表現手段を考えなければいけませんでした。
厳しいけれど、
これも現実なのか。
そんな状況に苦しむ仲間の姿を何度もみてきました。
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不思議なことに、
そんな時代の激しい変化の中でも、
いとも簡単に転身をとげて自分のやるべきことに
向き合ってきた人もいたんですね。
例えば、
僕にはカメラマンの友人が多くいますが、
「カメラという道具」にこだわり過ぎた人は、
時代の変化に怯え、翻弄されていました。
彼らは、カメラという物体からフィルムがなくなり、
ミラーがなくなるという「考えられない出来事」に動揺し、
その出来事を信じようとしませんでした。
その一方で、カメラマンという仕事の本質を
「時代を切り取る」ことだと考えていた人もいた。
彼らにとって、
カメラとはあくまでも道具の一つでした。
時代が変化するのであれば、
使う道具も変わって当然なのだと理解していたんですね。
彼らは、今でも時代の変化に関係なく、
そのフィルムカメラ時代に培ってきた「目と考え方」をいかしています。
今ではスマホを使いこなし、
インスタグラムなどで「新しい視点」で時代を切り取り
世界に発信し続けています。
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最近になって思うことは、
「本質を自覚している人」は
どんな状況でもブレないんだなということ。
そういう人たちは、
見た目の現象やモノに惑わされずに、
目に見えない根本のところで、
物事に向き合っているのだと思うんです。
だからこそ、
使う道具が変わっても混乱はしないし、
そんな状況にも怯えない。
道具や手段をも超えた、
「根本のところ」で自分は何を考えているのか。
そのことが、
とても大切なような気がするんですね。
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エジプトで染色業を生業にしている
83歳の職人さんの話を目にしました。
ご高齢になっても目を輝かせながら
未来を楽観視して日々やるべきことに取り組んでいる。
生き残りの厳しい染色業界でなぜこの人は
そうあり続けているのだろうと考えていたんです。
おそらく、その人も同じように、
染色業というものに囚われることなく、
「色そのもの」の可能性を信じているからではないか。
そんなことを感じたんですね。
日常から色が失われていく時代。
全てがモノクロームになっていきそうな時だからこそ、
鮮やかな色彩を作り続けられるのではないかと。
最後までお読みいただきありがとうございます。毎日時間を積み重ねながら、この場所から多くの人の毎日に影響を与えるものを発信できたらと。みなさんの良き日々を願って。