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短編集「けものみち」

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「焼肉定食と緑のたぬき」を始めとした1話完結の物語をまとめました。
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#エッセイ

土と人にまみれた泥臭い一夜の話

土と人にまみれた泥臭い一夜の話

今回の話は、僕が20歳の駆け出しの電気工事士の頃の話である。

一人前の職人になれていない僕は毎日怒られてばかり、その日も昼間の仕事では散々だったが、めずらしく夕方5時前に仕事がおわるようだ。
僕は弾む気持ちを抑えながら、冷静を装って仕事用のバンの運転席に乗り、助手席には親方が乗った。


僕が勤務していた会社では社長のことを「親方(おやかた)」と呼んでいた。
ちなみに、親方は僕のことを名前では

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出会いの本棚

出会いの本棚

今日は2022年12月31日。
ブロガーとしての今年をひと言でいえば、出会いに恵まれた年だった。

人との出会いは刺激的だと思う。
200人、300人のブロガー仲間に会ってきたけど、どの出会いも大切な一冊の本のようだ。

一冊の本が10万文字だとしたら、一回の出会いで何万文字話をしているだろう……

もちろん、人数や時間によっても違う。
一回の出会いという本を毎回振り返り、あとになってタイトルをつ

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最高の余韻を忘れない方法

最高の余韻を忘れない方法

良いことがあり、悪いことがある。

この話は、ただの女々しい男の、ただの独り言。

僕は目の前のスーパードライの泡をみつめ、ジョッキを通して思い浮かべる。

ちょっとした、、、
通過地点のお祝いのビール。

その日、僕は大切な思い出をつくり、それを両手でそっと胸に整列させた。
別に誰かに話したいわけではなく、しいていえば一緒に過ごした大切な人と共有したい。

そんな気持ちわかる?

でもいつか忘れ

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檻の中のライオン

檻の中のライオン

4月はなにかと始まりの季節。

ふと思う。なんで自分が今の仕事についてるのかな?と。

選択の理由僕は電気工事士の仕事をしている。

生活に困った時に電気のありがたみを実感して、
「インフラは大切」って歯をギシギシいわせながら噛み締めたことが「電気の仕事」を選んだ理由なのは間違いない。

でもちょっとまてよ。

本当に自分で選んだ選択なのか?

電気工事の仕事を選んだ19歳の自分の中に、例えば「レ

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僕と15歳と幸せのパンケーキ

僕と15歳と幸せのパンケーキ

僕は42歳。
とあることがキッカケで15歳のブロガーとパンケーキを食べる機会があった。

彼、そう彼のことを「A君」としよう。
A君とは同じブログサロンに入っているが、実際会うのはその日がはじめて。

生意気なやつ
A君は中学生。
彼の辿ってきた数ヶ月のブロガーとしての変化をきいて、「事業として取り組んでいるんだな」というのが、ヒシヒシと伝わってくる。
親と子供ほどの年齢差があるA君の話に耳を傾け

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