義務教育に必要なのはプログラミングではない
誰も世界中の情報にアクセスが出来るようになった、現代の日本社会。一人一台、スマートフォンを持つのが当たり前になり、テレビや電子レンジや冷蔵庫などの家電のみならず、様々なモノがインターネットに繋がる世の中になりました。
そして、こうした技術を支えるプログラマーなどのIT人材不足が目立つようになってきました。
そこで、文部科学省は未来のIT人材を教育すべく、2020年度から小学校においてプログラミング教育を必須とする方針を打ち出しました。
参考)文部科学省 「教育の情報化の推進」http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm
私は10年余り、システムエンジニアとして働いておりますが、未来のプログラマーを早い段階から教育出来ることはとても素晴らしいと思う反面、その前にやることがあるのでは? とも考えています。
その1 パソコンを使えない人が多い
私は、以前勤めていた企業にて、3年弱若手社員向けの教育担当を務めていました。そして、高等学校の情報の教員免許を持っていることもあり、教育という分野に力を注いできました。
IT業界は専門職の中では、特別な資格が要らないこともあり、とても参入障壁が低い(むしろ無いに等しい)業界であり、かつての後輩も元パチンコ店員、コンビニ店長、事務、大学中退、ガソリンスタンド店員など様々な経歴を持つ未経験中途社員が数多くいました。
そして、驚くことに、こういった人材の中には全くパソコンを使えない人もいました。
私は情報系の大学出身のため、パソコンの基本操作は使えて当たり前レベルなのですが、今となっては、パソコンの基本スキルはIT人材に限らず、全ての社会人にとって必須知識となりつつあります。
何故なら、パソコン等の情報機器を全く使わない仕事の方が少ないからです。
事務、経理、営業は仕事柄、パソコンに向かっていることの方が多いでしょう。
一見、パソコンを使わなそうな職種な看護師、保育士、接客業なども勤務表や申請書などがWordやExcelの場合が多く、全くパソコンと無縁というケースの方が少ないと言えるのではないでしょうか。
私がかつて教育した社員の中にもパソコンが家に無く、義務教育でも殆ど使っていない人がいたため、基本的な操作から教育することはとても困難でした。(むしろ、職選びを間違っているとも言えますが…)
最早、パソコンは専門職が使う道具ではありません。
義務教育を終えた時点で、基本的なパソコンの使い方は知っていて当然レベルでなければならない時代になっているのです。
その2 必要な情報を検索出来ない
世の中の情報の殆どはインターネットを使えば調べられると言っても過言ではありません。
特に、プログラマー等の専門職では、新しい技術が日進月歩生まれてくるため、書籍が流通してくるのを待っていては、遅すぎます。
また、分からないことは技術書を開かなくとも、インターネット上に存在していることが多いため、昔に比べると学習コストはとても低くなりました。
しかし、世の中には必要な情報を検索出来ない人が多く存在します。
情報を知っていると、知らないとでは、格差が生まれる社会になってきています。
例えば、最近見掛けるセブンイレブンのCMでは、女優で双子の姉妹の三倉 茉奈と佳奈がセブンイレブンアプリを使った・使っていないとでは、お得さが異なりますよということをアピールして、アプリを導入するとお得という情報を消費者に促しています。
誰もが一度は聞いたことがある、『ふるさと納税』という制度ですが、知っている人は利用すると、色々な返礼品を貰えて得する上に翌年度の税金を抑えられますが、知らない人は、『ふるさと納税』が何なのかすら調べることが出来ません。
また、携帯電話会社のDocomo、au、SoftBankといった三大キャリアの通信料は年々上昇しており、家計を圧迫する要因となっていますが、MVNO(仮想移動体通信事業者)、いわゆる格安SIMを利用すれば、電話代込でも、月々たったの2000円弱で済みます。
これらは、Googleで検索すれば欲しい情報はすぐに調べられるのですが、情報を検索するという行為を知らない人はこれらの情報に行き着くことが出来ず、知らず知らず損をしてしまうことになりかねません。
その3 適切な情報を発信出来ない
インターネットに詳しくなくとも、誰もがTwitter、Facebook、mixi、Instagram等のSNSを通して、手軽に情報を発信出来るようになりました。
そうした中、適切に情報を発信出来ない人達が一定数生まれてしまいました。
最近だと、セブンイレブンのアルバイト店員がおでん鍋から直に食べるという悪戯動画をSNS上にアップロードして、物議を醸しました。全国チェーンのレストラン等でも同様の行為がインターネット上に流れて、問題となるケースが相次ぎました。中にはこうした騒動のせいで閉店したお店も存在します。
これらの行為について、最近の若者は常識が無いなどと嘆く中年以降の方々もいるかと思いますが、こういったケースは今に始まったことではありません。
私がアルバイトをしていた10年以上前でも、同様の悪戯は多く存在しました。しかし、当時はスマートフォンというものは一般的には普及しておらず、オープンなSNSもそれ程普及しておらず、何よりインターネット環境が存在しない家庭が珍しくない世の中であったため、誰の耳にも目にも入らず、拡散されなかっただけのことです。
似たような話は凶悪犯罪についても言えます。近年、凶悪犯罪がとても増えているように感じる人が一定数いますが、それは誤りで、昭和から平成初期にかけてと現在とでは、他殺による凶悪犯罪の件数は下がりつつあります。
誰もが手軽に情報を発信出来る世の中になったからこそ、きちんと報道されるようになっただけであり、凶悪犯罪の数自体は増えていません。
そして、適切な情報の発信方法を知らない人達が嘘の情報や犯罪行為を手軽に発信出来るようになったとも言えます。
プログラミング教育より最優先すべきことは何か
私はプログラミング教育より、下記の学習を最優先すべきだと考えます。
1.パソコンの基本スキルを学習
2.正しい情報の検索方法を学習
3.正しい情報の発信方法を学習
あまりにも早いペースで技術が進歩してしまったゆえに、日本の教育は最早、時代遅れとなってきています。
義務教育を終える頃には、誰もがパソコンを使いこなし、適切な情報を取得・発信出来るようにすることが最優先事項なのではないでしょうか。
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