マガジンのカバー画像

斯くもすばらしき入院生活

8
習作。
運営しているクリエイター

記事一覧

斯くもすばらしき入院生活(おしまい)

 その頼りなげな灯を尊重し、蛍光灯はつけないままで会は進行していく。孫はテーブルにケーキ…

斯くもすばらしき入院生活⑦

束の間沈黙が私たちを取り巻いたが、不思議なことにそれほど気詰まりではない。なにか穏やかな…

斯くもすばらしき入院生活①

「そんなことしてると、いつか首痛めるわよ」  注意をしても孫はしばらく懸垂を続け、私に彼…

斯くもすばらしき入院生活②

 孫が部屋から出ていってしまうと、私は肘で身体を起こしさっそく窓の外へと視線を向かわせる…

斯くもすばらしき入院生活③

 心待ちにしていた食事も終えてしまい(今日の献立だけは特別に、栄養学的な見地のみ念頭に入…

斯くもすばらしき入院生活④

「あなたこそ体調は大丈夫なのかい?」彼がベッド横に着き次第、今度は私から問いかける。「分…

斯くもすばらしき入院生活⑤

 彼が自分から抜け出ている間に、じっくり見させてもらった彼の頬に広がるシミは、時の速さを私に思い知らせるが、彼の息子がこの部屋でその若さをふんだんにまき散らしたあととあっては、それぐらいがちょうどよいものに感じられる。私だけがひたとゴールに目を向けて走っているのではないと、安心させてくれる。  彼は皆平等に分け与えられている一日はそれほど長くはないということ、それに私の腕の弾力のなさといったものを時計の針や感触でもって直に確認すると、どちらに対しても不満足げな視線を向け、私

斯くもすばらしき入院生活⑥

 そうこうして景色をただぼんやりと目に取り込んでいるうちに、どこまでも続いていた橙色の瞼…