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本日の本請け(2023.3月)

お茶請けならぬ、「本請け」を用意して読書しています。

『優等生は探偵に向かない』ホーリー・ジャクソン(創元推理文庫)

『自由研究には向かない殺人』の続編。
ここまで「続き」だとは思っていませんでした。ミステリってシリーズものでも独立して読めるようになっていることが多いから珍しい。
逆に言うとここまでしっかりその後を描くこともないので、面白かったです。

読書のときにはコーヒーを飲みがちだし、主人公・ピップもコーヒーばかり飲んでいるので、敢えてジャスミンティーにしてみた

前作の原題は『グッドガールの殺人ガイド』。
主人公・ピップはドラッグや羽目を外し過ぎることに興味のない、倫理観がしっかりした「グッドガール」。邦題のまさに「優等生」。
けれど、爽やかさの目だった前作に比べ今作は自分の中の善悪、正義の基準に苦しみます。

終盤にかけてのぐいぐい読める感じは前作に引き続き。展開が少し重いけれど、自分はピップが「グッドガール」なんてクソ喰らえ、とばかりに暴れるのを痛快に見てしまいました。自分はやらないだろうけど。
好感の持てる語り部だと読むのを躊躇わなくてよくて助かる。

メッセージのやり取りや、証拠の写真や、ポッドキャストの音声の図が、物語をより身近なものに感じさせてくれます。

このシリーズは三作目があるようで、翻訳されるのが楽しみです。

『水上バス浅草行き』岡本真帆(ナナロク社)

短歌ブーム中で、いろいろ見ているときに「チェンソーマン」の短歌、というのを見つけました。

それが岡本真帆さんの作品でした。このサイトでは、いろいろなエンタメのコンテンツで歌を詠んでいるよう。
この本が一作目の短歌集だそうです。

本を手に取ったときに、表紙にも印刷された歌がよくて買いました。
本当、短歌の本って装丁が工夫されているのが多くて楽しい!

表紙に合わせてピンクのアイスがいいな〜!と思って選びました

犬の歌が多くてかわいい。
奥付の再版の回数見て驚きました。歌集では異例のことみたい。
表紙の帯の「ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし」がいい。あらかじめ天気予報を見てカバンに折りたたみを入れておく、という準備ができない、後先考えず出先でビニール傘を購入してどんどん増やしちゃう、これ以上の「ずぼら」を表す例示はないよね。

ここから試し読みができます。

『名探偵のままでいて』小西マサテル(宝島社)

レビー小体型認知症を患う老人、主人公の祖父が安楽椅子探偵をつとめるミステリー。短編連作のかたちになっています。
作者はラジオ番組の構成作家さん。オールナイトニッポンを聴いているときに話が出てきて興味を持ちました。
でも決め手は表紙とタイトルでした。どちらもすごくいい!

コーヒーはレビー小対型認知症に良い、という記述がありました

ちょっと男だから、女だからと推理を進めているところがあって気になりはしたんですが、これは「推理」というより「物語」だから、と明示されているので納得できたかも。

キャラクターたちも愛嬌があり、何より名探偵の祖父がとても愛おしい。

 紡げば、すべてが物語。
 世の中で起こるすべての出来事は、物語。
 "作りごと"だから美しい。
第5章 まぼろしの女

ここを読んだときなんだかうるうるしちゃいました。
終盤に認知症の名探偵ゆえのことも起きるのでドキドキハラハラ。ちょっと現実離れした部分もあるけれど、最後まで面白かったです。

読み終わった後に読んだインタビューも面白かった!

『イコ トラベリング 1948〜』角野栄子(角川書店)

『魔女の宅急便』の作者の、自伝的小説。
終戦後まもない東京。中学二年生のイコは英語の「現在進行形」に夢中になる。今心ときめくものに次々と目移りしながら、自分がやりたいことを追い求めていく物語。

小樽に旅行に行った際に、テイクアウトしたコーヒーと共に

読み終わってみるとまだまだ続きがありそうな。「1948〜」と銘打たれているし……。

いいことがあると悪いことがあると思ってしまう、イコの心情に戦後の傷を見た気がしました。戦勝国に対するみんなのちぐはぐな対応も矛盾も戸惑いも、軽やかに描かれながらもたまにはっとさせられます。

『数学の女王』伏尾美紀(講談社)

架空の新札幌にできたばかりの大学院で起きた爆弾事件を、主人公の女性刑事が追う。
本屋さんで札幌が舞台!という宣伝が打たれていて気になって購入した本。
新札幌を中心に、札幌に住む人間なら「ああ〜あそこね!」と思う場所があちこち出てきます。本屋さんにはマップが飾ってあったなー。

札幌が舞台なので札幌農学校クッキー

冒頭の文章で、クリックの音を一行かけて「カチッ。」と書いているのとか、あんまり好みではなくて……ずっとその印象が拭えませんでした。
この作品の前に一冊あるのか、登場人物とか関係性とか肩書きとか最初情報が多くて分かる頃には終わってしまいました。そのせいか、あまり嫌だと思う登場人物もいなくてストレスはなかった割に、あまり思い入れを入れられるキャラもおらず。
ジェンダーバイアスが描かれているけれど、犯行動機も含めてなんだか古いような。
面白くなかったわけではないのだけど、自分にとっては札幌が出てくること以外にはあまり魅力を感じられず。一冊目から読んだらよかったのかな?

『愛蔵版〈古典部〉シリーズI 氷菓・愚者のエンドロール』米澤穂信(KADOKAWA)

未収録短編が収録だそうで、買うしかないじゃん……と購入した愛蔵版。
チャットや手紙が読みやすくなっていました。

ろまん亭のクマのチョコ。えるがチョコに酔っちゃう場面を思い出しながら

「愚者のエンドロール」のある一文が、とても効果的な配置になっていて調整したのかなあ、とか考えました。

「プールにて」はアニメの原案となった話ですが、アニメの方を見ていて「そうはならんやろ」と思っていたので納得しました。
「クリスマスは箱の中」は正しく古典部の日常といった感じ。

お値段の割に外箱と「あなたの青春と謎がここにある」というキャッチコピーと、それが印刷された紙がどれもちょっとチープ過ぎるなあ……と一瞬購入したことを後悔しちゃいました。さよなら妖精の愛蔵版は好きだったんですが。物価高かな……残念。

『君のクイズ』小川哲(朝日新聞出版)

ラジオを聞いているときにCMがかかっていたのでふうん、と思い購入。
謳い文句にも書かれているように、読み始めたら一気読みでした。

クイズには糖分が必要!と思ったけどこの日はコーヒーだけにしておきました

主人公はクイズのテレビ番組で優勝を逃します。なぜ対戦相手が問題が読まれないうちにボタンを押し、正解できたのかを調べていくうちに、クイズとは何なのか?について考えていく。

現実の推理と、主人公の思い出が交互に出てきます。当日の様子を思い出していくうちに、だんだんと真実へ迫っていく様子が見事。読み終わるのまで1時間半しかかからず、本当に一気読みできました。

主人公が出す、クイズとは何なのか、の答えもいい。面白かった!

『緑の祠』五島諭(書肆侃侃房)

装丁惚れしちゃって買った一冊。

あったかくなったのでアイスコーヒーと桜のクッキー

以前に同名の本を出していたのかな?
それ以後の作品を増やして、全短歌作品を集めた一冊のよう。
言葉の繰り返しが面白かった!

高校の先生のようで、成績をつけ終わった後の長歌と反歌が面白かった。

下の俳句、少し考えてふふっとなっちゃった。

春の「は」は俳句の「は」だと言うけれど楽しいの「た」は何の「た」ですか
「オレンジの歌」117ページ

リンク先から作品が読めます。

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