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子供に真剣に向かい合う~今野敏さんの「任侠学園」を読んで~

滋賀県高島市の住職・行政書士・FPの吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬・終活
のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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今野敏さんの「任侠学園」という作品を読みました。

この小説は、「任侠シリーズ」というシリーズの第2弾にあたります。
義理人情で生きる昔気質のヤクザが、様々な経営不振に陥った企業や団体の再建に協力するというストーリーが展開されます。

「任侠学園」では、ヤクザの「阿岐本組」が、経営難の高校の運営を引き受けることになります。
そこで、組長の阿岐本雄蔵と代貸の日村誠司、そして個性的な子分たちが、無気力で無関心な高校生や事なかれ主義の教師たちとぶつかりながら、高校の再生に奮闘する姿が描かれています。

ヤクザと学園という一見相反する二つの世界を組み合わせた斬新な設定と、ユーモアが満載の展開です。
一方で、ヤクザの人間性や義理と人情の精神が、高校生や教師たちにも影響を与えていく様子に、、ちょっぴり感動も入っています。

作品に登場する高校生は最初は無気力な姿で登場します。
しかし、ヤクザから言葉遣いを直され、花壇の草むしりをし、自分が割ったガラスを片付けさせられ、スプレーの落書きを消していく中で素直な姿を現してきます。
作品のヤクザは高校生の様子を見ながら、これまで大人から悪いことを悪いと言われてこなかったから、こんなことをするのではないか、と気づきます。
また、高校生たちは作業を終えるごとにヤクザからぶっきらぼうに感謝の言葉をかけられることに「初めてだ」と喜びます。
生徒が連れ去られ監禁されているところに乗り込む場面や、ヤクザ同士の一触即発の場面もありますが、そこに居合わせた高校生たちは「ヤクザは真剣に自分たちに向かい合ってくれた」と信頼を寄せるようになります。

作品中でヤクザは目新しいことは何もしません。
「割れ窓理論」の言葉も出て来ますが、環境を整えて、ヤクザなりに状況を整理していっただけですが、登場人物が語るように常に体を張っています。
ただし、高校生が心の底から嫌がるようなことはしません。
掃除をさせようとして「塾がある」と言われると、塾の時間までに終えるように調整します。

作中の学校の先生も無気力な姿で登場しますが、ヤクザの姿を見て考えを改めていきます。
特に連れ去られた高校生を助けに行ったことで、心の底からの信用を勝ち得ます。
そうした生徒に向き合う姿に先生の態度も変わりますし、「昔の気持ちを取り戻した」という声が出て来ます。

新聞である校長先生が「自分の教育は間違っていたのではないか」とシンポジウムで語られる話が出ています。

荒れた学校を直すために小説同様、環境を整えようとします。
「わがままを言うな」「先生の言うことを聞け」という言葉に象徴されていますが、ルールで縛り、ルールで矯正していました。
校長となり初任地の学校に戻ってきたときに生徒に任せ、生徒の自主性を育もうという方針を打ち出されます。
しかし、教員の反応は鈍く、保護者など周囲からは学校があれるのではないか、と心配されます。
明確な成果というのはなかなk出ていないのかもしれませんが、生徒がちゅうちょせず人前で発言できるようになった、と記事にはあります。

生徒を信頼し、生徒を一人の人間として向き合っていく。
言葉にするとよくある内容ですが、義理人情が描かれるような世界観の方がそうしたことが行われていて、経済観のもとでは半人前かそれ以下にしか見ていないのかもな、と感じました。

「任侠学園」を読んで、あなたもヤクザに教育されてみませんか?

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