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【フォレスト出版チャンネル#234】出版の裏側/編プロ|「ディアゴスティーニ」分冊百科シリーズの制作秘話

このnoteは2021年10月6日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

代表作「ディアゴスティーニ」分冊百科シリーズの制作現場

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティの渡部洋平です。本日も昨日に引き続いて、編集プロダクションの株式会社ファミリーマガジン・代表取締役社長の久野隆さんにゲストとしてお越しいただきました。久野さん、今日もよろしくお願いいたします。

 

久野:よろしくお願いします。

渡部:森上さんもどうぞよろしくお願いいたします。

森上:よろしくお願いします。

渡部:昨日はファミリーマガジンさんのことや編集プロダクション代表として久野さんがどのようにここまで会社を経営されてきたか、みたいなところをお話していただきました。まだお聞きになっていない方は、昨日の放送もぜひチェックしてみてください。
今日は久野さんが代表を務めていらっしゃいます、ファミリーマガジンさんが手がけられてきた代表作のご紹介、実際にどんなお仕事をされているかっていうところですね。それに加えて、今後の出版業界の可能性についてなどなど、いろいろとお聞きしていきたいと思います。それでは、ここからは森上さんにパスをしたいと思います。森上さん、よろしくお願いします。

森上:はい。よろしくお願いします。じゃあ、早速なんですけど、ファミリーマガジンさんの代表作品っていくつもあるんですけど、絶対外せないのはディアゴスティーニさんの分冊百科シリーズですよね?

久野:そうですね。もう創業当初からずっとやっていたというのもありますし、私が最初にその仕事をしたのは、今からちょうど20年ぐらい前でそこから続いていて、ファミリーマガジンになってからもかなりいろんなシリーズを出させていただいていますので、そこはちょっと特徴がある会社だと思います。

森上:ディアゴスティーニさんのシリーズは、何テーマぐらいやられたんですか?

久野:ファミリーマガジンに入ってからは、7年しかまだ経過してないんで、トータルで言うと、7つ、8つぐらいですね。全国版になったものは。

森上:なるほど。

久野:要するに、あとで話すかもしれないのですが、ディアゴスティーニの雑誌は、少なくとも2年続くかたちで……。

森上:2年ですか!? かなり長丁場な……。

久野:そうですね。最近だと長いものだと、5年とかあるんですよ。

森上:えーーーっ!

久野:だから、7年間で言うと、シリーズはそこまではやっぱり……、一桁ぐらいになるんですよね。

森上:ほうほう。例えば最近だとどんな作品が?

久野:最新の最新ですと、「アメリカンカー コレクション」で、これが(2021年)8月31日に全国創刊されました。創刊号は「フォード マスタング シェルビー GT500」です。このVoicyの放送日はいつですかね? まだテレビCMをやっているんじゃないですかね?

森上:アメリカンカー、つまりアメ車ですね? アメ車のコレクション?

久野:そうです。ちょっと、大きいタイプのミニカーがついてきて、あとはマガジンがついてくる感じで、アメリカの車好きの人には結構いい感じの内容で、ツイッターとかで評判高いんですよ。

森上:そうでしょうね。これはまず原稿を書いたりするのもお仕事ですし、この提供写真を集めてくるのもお仕事になってくるわけですね?

久野:そうですね。こういったものはいろんな手法があるんですけれども、原稿、写真等とページづくりですね。

森上:例えば、ページのレイアウトや構成とかも、編集上で考えられている感じなんですか?

久野:分冊百科、パートワークっていう言葉をさっきから連発しているんですけど、いわゆる百科事典を分冊、分けたものが分冊百科と言われるものなんですね。なので、特徴的なのは、基本レイアウトが毎回変わらないんですよ。

森上:あーなるほど。

久野:100号なり、80号なりそろったときに、レイアウト的に同じようなページが並ぶと。なので、ここら辺のデザインレイアウトは、一番最初に型を決めてしまって、それが毎号続いて、あとは文字とか写真が同じところに入る、というようなタイプの本になっていますね。

森上:なるほどねー。

久野:それが基本的な分冊百科のスタイルになります。

森上:ディアゴスティーニさんは全国版になりますと、だいたいCMを打ちますもんね?

久野:そうですね。最近では、テレビだけじゃなくて、ウェブのほうだけで流すものとか結構増えてきているんですけれども、いろんなやり方をやってらっしゃいますね。最近だと「スタートレック」なんかは、ウェブCMオンリーでやっているものだったりしますね。

森上:スタートレック! ウェブCM見たかも!

久野:今、やってます?

森上:今ではないですけど、やってました。

久野:昔は結構出ていたんです。テレビだけじゃなくて、ウェブのみのCMとか、結構バリエーションが満載になっていますね。

森上:そうですか。あと、昨日の放送でちらっとおっしゃっていた「テスト版」っていうのは?

久野:これは皆さん、たぶんツイッターとかでバズっているからわかるかもしれないんですけど、ディアゴスティーニの本って「休刊になるからいやだ」とか、「6号で終わるじゃん」とか言う人が世の中にいるのを見たことがありますよね?

森上:あります、あります。

久野:ありますよね。あれはその通りなんですけど、実は本当じゃないんです。つまり、ディアゴスティーニさんの本って、地方でまずテスト販売というのを行なって、そこで売れ行きがいい場合に全国版に昇格するんですね。で、テスト版というのはだいたい1号から6号とか、そのぐらいですよね。そこで売れ行きが悪いまま続けていくと、出版社の方は赤字になってしまいますから。

森上:確かに。

久野:なので、ちゃんと売れるかたちをつくっている。テストで合格になったものが全国版になるっていうので、テレビでCMとかをやって創刊する。なので、全国版になったものは途中では終わっていないんですね。

森上:そういうことですね。

久野:勘違いをされている方が多いんですけど、今まで1回もそれはないです。「タモリ倶楽部」(2023年3月末で終了した人気テレビ番組)とかで、6号で終わったものシリーズとかをディアゴスティーニさんがやったりしているんで、ああいう印象が強いんですよね。時計の針だけとかね。おもしろいネタとしてはいいんですけど、全国版は終わりませんので、ご安心ください。

「売ってないものがここで買える」という希少性

 森上:なるほど。最新はアメ車ということなんですけど、それ以外に何かおもしろいものはありますか?

久野:7月に創刊された「仮面ライダーのDVDコレクション」の平成版ですね。これは実は昭和版がまだ続いているんですよ。

森上:なるほどー。これはDVDが付くんですか?

久野:そうです。昭和版のほうは「仮面ライダー~BLACK RX」っていういわゆる昭和ライダーで、平成に関してはクウガですね。10作品。テレビ版完全収録っていうことで。

森上:なるほど。濃い層がいそう。濃いファンが。

久野:やっぱり好きな方はいらっしゃるのでね(笑)。で、これ、シールブックがついてくるんですね。昔、やられた方はいらっしゃると思うんですけど、シールを買って貼り付ける作業とかあるんですよ。シートに貼りつけていって、完成すると名鑑になるという。

森上:なるほど。

久野:あと、これが5月に出たんですけど、「Gメン'75」、懐かしいですよね。

森上:あ! ドラマの?

久野:はい。実は「Gメン'75」ってDVDに完全収録されていないんですよね。要するに、ピックアップはあったんですけれども、今まで完全収録されたものがない作品だったので、東映ドラマがお好きな方が衝撃を受けたという始まりがありまして、なんとこれ私が手がけたものではなかったんですけど、分冊百科のスタートで重版がかかるという。

森上:えー!

久野:売り切れが発生したという。

森上:そうなんですね!

久野:なので、もしかしたら手に入らなかった方もいらっしゃると思うんですけど、そういう方は定期購読なりなんなりで、版元に直接お電話をかけていただければと思います。最近ではヒットした作品ですね。

森上:最近では、映像系のサブスクでいえば、ネットフリックス含めていろいろとありますが、そこにも載ってないものがここで買えると、手に入ると。

久野:そうです。

森上:そこが一番の売りなんですね。

久野:まさにその通りで、これがなかなか出なかった理由っていうのも、ここでは話せないことも結構あるんですけれども、せっかくのチャンスということで、かなりインパクトもある内容で、完全収録なので、これはファンならずともぜひ観ていただきたいなと思います。

森上:なるほどー。この辺の解説については、いわゆる出版の編集の力量が、御社のスキルが盛り込まれているわけですね?

久野:この「Gメン'75」に関しては、日本では唯一と言うか、この人しかいないっていうライターさんに書くのをちょっと頼んでいますので。

森上:なるほどー。やっぱりそうですよね

久野:その当時の話ができる人がなかなかいらっしゃらないんですよ、やっぱり。

森上:そっかそっか。その専門ライターさんを探してくるのが大変ですね。仮面ライダーは仮面ライダーのライターさんだろうし。

久野:そうですね。先ほどちょっと言った特撮と関係しているんですけど、うちは円谷さんのウルトラマンとかのシリーズや、東映さんのライダーのシリーズとかをやらせていただいていたので、やっぱりその2つのみならず、ドラマの版権に詳しいライターさんともお仕事させていただいているというのもあって完成した内容なので、完成度が高いんじゃないかと。

森上:なるほど。いや、すばらしいですね。渡部さん、ディアゴスティーニさんで何か買ったことはありますか?

渡部:ないですけど、もうテレビCMで有名で、会社名は耳に残っていますね。

森上:残りますよね。で、創刊号はめちゃくちゃ安い。

渡部:そうそう(笑)。

久野:でも、その後はね、頑張って買ってくださいっていう感じで(笑)。

渡部:これ、今となっては、すごくおもしろいビジネスモデルなんだなって思いましたけど、ほんとに僕が子供の頃からある気がするんですけど、謎な感じで、「なんなんだろう、ディアゴスティーニ」みたいなね(笑)。

久野:御社の太田社長が「これ、グライダー方式って昔は言っていたんだよ」って教えてもらいました。

渡部:そうなんですか。

久野:僕も初めてお会いしたときに聞いて、「そういう言い方をするんだ!」と思って、先にいっぱい積み上げて滑空して、だんだん下がっていくんです。

森上:発行部数がね。

久野:そうです。発行部数もそうなんですけれども、最終ラインまで読めるんですよね、「だいたいの方はこれぐらい買っていただける」と。そうすると、最後までランニングできる。だから、クラウドファンディングと逆ですよね。先に集めるんじゃなくて、最後まで読み切って、そこで完成する

森上:なるほどね。でも、ディアゴスティーニさんを20年前からずっとやられているっていうのは、それだけファミリーマガジンさんの、久野さんの信頼度が高いということですよね。

久野:そう思っていただいているんでしたら、すごくありがたいなと思います。

ゲーム関連本から見える、紙の本の未来とニーズ

森上:すばらしいお仕事をされていますね。いわゆる単行本とかビジネス書とか、そういったものはどんなものをつくられているんですか?

久野:ちょっと前に流行ったのは、モンストですね。今は下火になってきちゃったんですけど。

森上:(ゲームの)モンスターストライクの攻略本?

久野:これはもう宝島社さんがずっと出しているんですけど、パート15まで出て、シリーズ全体の総部数で400万部とか。

森上:すげー!

久野:だから、これは宝島さんと、mixiさんと一緒に、もう2年ぐらいかな、お仕事させていただいて、非常にいい思い出になっているシリーズですね。

森上:そうですか。いわゆるゲームの攻略本とかっていうのもやられるわけですね。

久野:そうですね。ソシャゲーと言われるソーシャルゲームのジャンルのもので、2014年くらいのときにパッと勃興した時代があったんで、そのときは結構いっぱい出しました。

森上:なるほどね。でも、やっぱりゲーム関係の攻略本って、本で読みたいっていう需要があるんですね。

久野:当初はあったんですよ。当初は絵がキレイとかね。そういうのでビジュアルで見たいっていうのがあったんですけど、ただ2021年になって、5~6年経って、攻略自体はやっぱりスマホのほうで見るっていう層が増えましたね。

森上:スマホのゲームで、攻略もスマホでね。なるほどね。

久野:その代わり、アートブックっていうのをつくったんですけど、こういう資料集みたいなものは、ある程度今でも需要があると。

森上:なるほど! ゲームの中で出てくるキャラクターの図鑑ですね?

久野:そうです、そうです。こういう絵資料みたいなものは、いつでも需要があるんですけど、攻略法自体はやっぱりみんなスマホの中で完結しているかなと思ったり……。

森上:なるほど。やっぱり図鑑版みたいなものって、所有欲と言うか、豪勢なつくりになっていますもんね。

久野:そうですね。やっぱり取っておけるもの、保存性のあるものっていうことになると。

森上:インテリアと言うかね。

久野:そうですね。

森上:インテリアとしてもいけそうですもんね。

久野:書き下ろしのものを使っていたり。

森上:あー! すごい、すごい! それは売れるわ。これは、欲しがりますよね。今、この話を伺っていて、出版業界の未来とか可能性とか、その辺りについて今日はいろいろとお話を伺いたいなと思って、今ちょうどいいネタだなと思ったんですけど、今の攻略本っていうのも一時期流行ったけど、スマホの中で処理されるようになった。で、本の価値っていうのが、そういった図解版と言うか、しっかりしたキレイなイラストをアートにしたもの、それに対する所有欲を満たすという意味では、まだニーズがある。究極的なところだと、昔からよく言われていますけど、芸術・アート系の本というのがずっと残っていきそうな感じがしますよね、紙の本では。

久野:そうですね。一つひとつのイラストだったり、写真とか、キレイな印刷、保存しておきたくなるとか、そういうものは外しちゃいけないなと思うのと、所有したいもので考えると、ディアゴスティーニさんは、本当のマテリアルとかも入っているので、まだ皆さんにニーズがあるのかなと思ったりしますね。

森上:なるほどね。いわゆるモノとしての価値ですよね。

久野:そうです、そうです。だから、資料集なんかも取っておきたいものなんですよね。家に置いておきたいもの。

森上:やっぱり紙の本じゃなきゃいけないと言うかね。モノとしてね。

久野:マテリアルでなければいけない理由がそこにないと、情報はみんなスマホにいっちゃっているので、どうしても置いておきたいって感じてもらわないと、なかなか難しいかなって思いますよね。

森上:なるほど。前に久野さんとお酒を飲みながらお話ししたときにすごく記憶に残ってることが一つあって、やっぱりモノだから判型、いわゆる本としての大きさにすごくこだわるって言うか、読者が求めるようになってきたとおっしゃっていて、つまりスマホ画面だと、小さいその世界だけで終わっちゃうけども、それよりもっとリアルに大きく見たい。その発想ってやっぱり紙の本ですよね。

久野:そうですね。印刷物が印刷物として機能するには、ある程度の大きさがないと難しいところがあるんですよね。色合いとか、やっぱり難しいじゃないですか。

森上:確かに、確かに。

久野:そう考えると、やっぱり大判で、ある程度は発色、質感、全部含めて良いもの(が求められる)。あまり機能的ではないんですよ。どちらかと言えば、趣味的なものに近いんですけど、そういう愛着を持ってくれる方が今残っているユーザーなのかなと思うんですよね。

森上:なるほどねー。モノとして持っておきたい。そのためにできること。それが印刷の質だったりとか、モノとしての価値だったりとか、そういったところに特化していくと言うか、大きさも含めて、ということですね。

久野:なので、これ(手に持っているモンハンの資料集は)は非常にデカいです。

森上:確かにデカいですね。

久野:顔より大きいものを出すっていうのは、単純にすごいなと思うんですけど。なかなか迫力がありますよね。

森上:確かに。でかい! でかい!

久野:インパクトはあるのでね。ただ、書店員さんには本当に申し訳ありませんって感じだったんですけど。

森上:スペースを取っちゃうからね(笑)。

久野:スペースを取るのと、皆さん、「すごく重たい」って、おっしゃっているので。

森上:なるほどねー。うちとはジャンルは全然違うのでね、渡部さん、いろいろお聞きしていかがですか?

渡部:そうですね。ちょっと映像がないんで、なかなか伝わりづらいところがあって、もったいないと思ったんですけど、まさにその伝わらないところを伝えようとしている、今の話だと思うんですけど、なんでもデジタルではなくて、実際に手に取ってみるみたいなところまで考えてお仕事されているんだなって、聞いていて思いましたね。

森上:そうですよね。だから、モノとしての価値っていうはどこにあるのか、紙の本としての価値。そういった中に入っている、内容の情報以外の部分での付加価値と言うか、そこの存在価値っていうのを我々の世界じゃない、違うところの出版の世界で久野さんはいろいろと体感されているんだなって、改めて思いますね。

渡部:はい。ありがとうございました。僕たち、出版社にとってもファミリーマガジンさんをはじめとして、編集プロダクションさんの存在はすごく助かっているということで、大切なビジネスパートナーであることを、この2日間のお話を聞いて感じることができました。森上さんが本当に頼りにしているんだなとすごく感じながら聞いておりました。
もっといろいろなお話をお聞きしたいんですけども、お時間になってきてしまいましたので、最後に久野さんからリスナーの皆さんにメッセージをいただいて終わりにしようと思います。久野さん、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。

久野:はい。編集プロダクションはどうしても受注の仕事になりますので、下請けとか、仕事がキツイとかいろんなイメージがあると思うのですが、それも半分は間違ってはいないんですけれども、モノをつくるとか、仕事をするということに関しては、僕は仕事が非常にしやすい場所だと思っているんですね。
もし出版業界とかを目指されている方がいらっしゃって、出版社でなく、編集プロダクションを受ける方がいらっしゃったら、そういったイメージだけじゃなくて、そこでどういうことができるかっていうのをよくよく考えて、受けてくれればいいなと思っております。
うちの会社の社員は非常に職人気質の人が多くて、モノをつくるのが好きな人が集まっているという会社だから、いろいろな出版社さんにオファーをいただけるんじゃないかなと思っております。よろしくお願いします。

渡部:はい。それでは2日間にわたりまして、本当にご出演ありがとうございました。株式会社ファミリーマガジン・代表取締役社長の久野隆さんでした。久野さん、ありがとうございました。 

久野:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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