フォレスト出版編集部の寺崎です。
今日は土曜日の記事の続きです。
土曜日の記事はこちら↓
いま、なぜこうした先輩編集者の著書を読み返しているかというと、すでに在籍している編集職を志望する学生インターンを皮切りに、今月から未経験者採用での新人が入社するという事態となり、書籍編集者という仕事を俯瞰して眺め、後輩に伝えるべきポイントを整理しているところだったからです。
そこで私が選んだ教科書が、駆け出しの当時に影響を受けた本である『編集とはどのような仕事なのか』(鷲尾賢也・著)でした。
ところで、もしかしたらもっとも影響を受けたのが、じつは安原顕さん(通称ヤスケン・自称スーパーエディター)だったかもしれないのですが、実際に読んだ本が手元に残っていませんでした(図書館で借りて読んだのか?)。
ヤスケンの教えでいまでも覚えているのは「編集者は淫するものがなければならない。その淫するものに月給のすべてを注げ」でした。「淫するもの」という表現に当時20代だった自分はプルっと震えたのと同時に、ホントにヤスケンの教え通り、1円も貯金せずに当時淫していたものに給料を全額注ぎ込んだものですが、いま思えばそれがよかったのかどうか。おそらく仕事する上での血肉になっているので、その教えは間違っていなかったと思います。
いや、なにがなんでもそう思いたいです。笑
脱線しました。『編集者とはどのような仕事なのか』です。
前回の続きをみてみましょう。
無から有を生み出す仕事
評論家・社会学者である加藤秀俊氏が『整理学』を出版したのが1963年。これを継承した形で『「超」整理術』が約30年後にミリオンセラーとなります。
こうした事例は枚挙に暇がなく、昨年、ビジネス書としては快挙であるミリオンセラーとなった永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)ですが、これにも元ネタがあります。
2006年に大ベストセラーとなった福田健『人は「話し方」で9割変わる』(商業界)という新書です。
『人は話し方が9割』
『人は「話し方」で9割変わる』
「タイトルほとんど同じじゃん!」と思うかもしれませんが、そこはそれぞれがオリジネーター。『編集とはどのような仕事なのか』の引用箇所に「テーマが同じでも執筆者が異なれば、まったく別な企画になる」とあるべく、タイトルが似通っていても、そこはパクりではなく、過去の作品へのリスペクトとみるべきです。新書と単行本という決定的なパッケージの違いも明確です。
しかも、『人は「話し方」で9割変わる』を当時売りまくった営業マンが『人は話し方が9割』の企画段階からキーマンとして関わっていたというのは、ビジネス書業界では周知の事実だったりします。
編集者に求められる「人たらし」の要素
「私たちの仕事の源は人間なのである。それ以外に資源も素材も、なにもない。つまり優れた人間を見つけるか、育てるかしか方法はないのである」
この2行もめちゃくちゃ優れたパンチラインですね。
「編集者は人たらしたるべし」という点も非常によくわかります。私自身も日々精進です。駆け出しの当時は知識やスキルを磨くことばかり専念していたのですが、編プロ時代に付き合いのあった某文芸版元出身のうんと年上の先輩編集者を眺めていたときに思ったことがありました。
「(編集者としてうまくいくには)人に信頼される人間性を磨いたほうが、遠回りのように見えて、かえって近道では」と。
これは編集者に限った話じゃないのかもしれません。
ただ、人間性というのはなかなか言語化できない。
「【出版の舞台裏】編集者に向いてる人、向いてない人」というお題の結論としては、いわくいいがたいものになってしまいましたが、深い考察はまた改めてということで。(続く)