見出し画像

【フォレスト出版チャンネル#143】出版の裏側|「企画」とはなにか(前編)

このnoteは2021年6月2日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

そもそも「企画」ってなんだ?


今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。今回は「企画力」をテーマにお話をしていきたいと思います。そこで二人の編集者およびしました。フォレスト出版編集長の森上さんと、副編集長の寺崎さんです。よろしくお願いします。

森上・寺崎:よろしくお願いします。

今井:早速なんですけれども、企画力があるとか、センスがいいとかいう話があったりするんですけれども、そもそも企画っていうのはどんな感じのことなんですかね?

寺崎:そうですよね。我々も「企画、企画」って言って、「企画する」とか、「企画書を書く」とか「あれはいい企画だ」とか普通に使う言葉なんですけど、そもそも企画ってなんだろうなって思ったのが、この間「取り壊される建物のガラスに子供達で絵を描こう」っていうイベントのチラシがあったんですよ。

今井:面白そうなイベントですね。

寺崎:面白そうでしょ。だから、娘に「こういう企画があるから参加してみようよ」って言ったの。そしたら、娘は6歳なんですけど「パパ、企画って何?」って言ったから、俺はその時咄嗟に「面白いことを考えることだよ」と答えたんですよ。

今井:端的で分かりやすいですね。

寺崎:でも、もう少し正確に考えてみたら、僕なりの定義は「誰かの役に立つアイデアを実現すること」じゃないかなと思ってます。

今井:誰かの役に立つアイデアを実現すること。

寺崎:どうですか、森上さん。

森上:そうですね。我々が扱っているモノに関しては買ってもらった人に何かしらのメリットがないといけないので、読者の方が自分に足らないモノ、そういった観点で欲しいと思えるモノが企画になっている、パッケージになっているというのが考え方としてはあるかもしれないですよね。

「企画力」がある人とない人の差

寺崎:よく「企画力がある」とか、「あいつは企画力がない」とかって使うんだけど、そもそも企画力ってなんでしょうかっていうことですよね。

森上:そうだよね。企画が立てれる人と立てれない人ってやっぱりいるんですよね。

今井:そこでも結構差が出てくるんですか?

森上:出てきますね。同じ編集者でもやっぱりいるもんね。

寺崎:そう。やっぱり編集者でも企画がどんどん出る時とスランプみたいな時もあったりするし。

今井:波があったりするんですね。

森上:でも企画が出ない人に絶対的に足りないモノが一つだけあるなと思っているのが、インプット量が足りない。

今井:インプット量!?

森上:と思いますね。インプットするモノの絶対量が足らないのはあるとは思うんですよね。その中に興味があるモノとかって色々と出てくるんだろうなと思うけども、そもそもインプットする絶対量が足りなければ、それはもう元々ないのと一緒で、勝手に舞い降りてくるような天才的な人は違うんだろうけど、基本何かに触れてないと、インプットしていないと、多分出てくることはないと思うんですよ。人とかでもいいし、情報でもいいし、何でもいいんですけど、何かそこに触れると言うか、インプットする機会を自分から生み出さない限り、それって出てこないんだろうなって思いますよね。

今井:逆に言うと、企画力は鍛えることができるものですかね?

寺崎:鍛えられますね。

企画力に必要なもの① 好奇心

寺崎:今回は6つのステップで「企画力とは何か」ということを、お話していこうかなと思っているんですけど、その一番最初の欠かせない要素が「好奇心」だと思うんですよ。

今井:好奇心。

寺崎:それも幅広い好奇心。

今井:幅広い好奇心!

寺崎:自分の好きなことだけ、例えば車が好きだから車のことだけ知っているんじゃなくて、色んな事に対する好奇心が必要だから、ここは育てられないかもしれないと僕は思っちゃうな。

今井:一種の才能みたいな感じですかね。

森上:そうなんだよね。やっぱり触れる。よく言うじゃないですか、アンテナを立てろって。そのアンテナが1つしか立ってなかったらやっぱり限界くるよね。

今井:5Gくらいアンテナ立ってないとみたいな感じですか(笑)?

森上:そうそうそう (笑)。やっぱり色々なことに興味をもつと言うか、物でも事でも人でも好奇心を持つということだよね。それがないと結構きついよね。

寺崎:あと、これは書籍の企画の場合のみかもしれないんですけど、何か新しいことを知る快感。知識欲って言うのがあるか、ないか。そういう知識欲があると色々なモノに「何!それ!」とか「それ面白いね」とかなるじゃないですか。そこが一番重要なんじゃないかな。

森上:そうですよね。やっぱりベストセラーを出していたりとか、業界のトップレベルの人たちに共通するのって、自分より年齢が若い人に対しても積極的に耳を傾ける。

寺崎:教えてくださいっていう。

森上:姿勢。

寺崎:「それ、面白いですね。もうちょっと教えてください。」みたいな。

今井:へぇー!

森上:そう。そういうことが言える人が多いですよね。だから、その人たちってすごいインプット量があるんだと思うんですけど。それこそ先ほど寺崎さんがおっしゃった知識欲とかにも繋がると思うんですけども。何か自分の知らないこと、自分の世代が知らないことを若い人たちは知っているっていう可能性が。

今井:ありますもんね。

森上:そう。だから、変なプライドはない。教えてもらうことは自分にとってプラスだと捉えている。

今井:しかもそれがその方の喜びにもなっているっていうことですよね。

森上:そうです、そうです。だから、その姿勢が企画者においては絶対必要なマインドと言うか。そんな感じだよね。

寺崎:つい年長者になると偉そうに上からいっちゃうんですよね。それだとやっぱり知識が得られないらしいですよ。

今井:貪欲に若い人たちの中にも入っていく心意気みたいなところですかね。

森上:そうですね。

今井:ここまで企画力に必要なのは、まず好奇心というお話だったんですけれども、他にはどんなものがありますか?

企画力に必要なもの② 自分なりの基準

寺崎:最近、意外と重要かもしれないと思っているのが、自分なりの基準とか0ポイントとか。単純に好き嫌いもそうだけど、もしかしたら政治的なスタンスかもしれないし、あるいは絶対に許せないモノがあったりとか、要するに自分というものがしっかりないと、その対象となる著者なりテーマなりと発火しないんじゃないかなと思って。

今井:なるほど。摩擦が起こらないですよね。軸がないと。

寺崎:そうなんです。俺はこういう基準でこう思っていると。私はこういう基準でこう思っているっていうのをぶつけていくような仕事なんで、そういうものが何にもない状態だとなかなか企画って生まれにくいなって思うんだけど、どうですかね?

森上:ありますよね。すごく実務的な話をすると、自分で立てるんじゃなくて、人から言われたものをそのままやるとか。それが自分から取りに行くことに繋がってくると思うんですけど、自分軸があるからこそ、それに対してが「だから面白いんだ」という判断がつくと思うんですけど、それがないと何か、著者から降りてくる、会社から降りてくるといった時に、その判断ができないと思うんですよね。だからそういうかたちで進めちゃっている編集者って、編集者に限らないけど、いるよね。やっぱりコンテンツを企画するっていうことにおいては、それだと結構きついよね。

寺崎:よく先輩編集者に教わるのが例えば、ある著者さんと初アポイントである打ち合わせがありますと、その時に丸腰で行くなと。

今井:丸腰。

寺崎:うん。何も考えなしで行っちゃだめだよって言われるんですよ。つまり、「自分としてはこういう方向のモノを考えています。先生どうですか?」と。そこからようやく企画の卵みたいなモノが生まれると。

今井:なるほど、なるほど。「いいですね!いいですね!何でもやります!」っていうスタンスよりも、「私はこう思いますけど、あなたはどう思いますか?」っていうここが必要なんですね。

寺崎:と、思うんですよね。

森上:そうですね。だから今の話に通じるんですけど、自分でまとめたものって言うか、一つ仮で、結果的にそれが全部ひっくり返っちゃってもいいんですけど、何かしら「こうしたい、ああしたい」、「あなたにこういうものを書いてほしい」という。例えば著者を口説く時にそれがないと摩擦が起きないということだよね。

寺崎:そうですね。

森上:その摩擦があったことを発火という言い方をしてるんだと思うんだけど、その発火があって始めて企画って色々とブラッシュアップされていく。それがないと「何かないですか?」って聞かれても・・・っていう。

今井:たしかにそれだと何も生まれなさそうですね。

森上:そうなんですよ。結構あるんじゃないかな、その現場、現場で。インフルエンサーって言うか、フォロワーがいっぱいいる著者さんとか、著者候補の方とかいらっしゃる場合は、その人に何を書いて欲しいかとか、こういったことを書いてもらったら絶対売れると思うとか、自分の考え方をまずぶつける。そのボールを投げないで、キャッチャーの様に「何か書けるものないですか?」みたいな感じで構えていると、全然変わってくると思うんですよね。企画を立てる、立てないというのはそこが岐路になるような気がしますよね。

今井:自分なりの基準とか、自分なりの「こうしたい」という強い想いが大事という感じですかね。

寺崎:そうですね。自分なりのメッセージがあってそれを代弁してくれる著者、それが合致すると担当者としてもすごく面白い仕事になりますよね。

今井:確かに。しかも、面白いモノが出来上がりそうですよね。その方が著者から色々なモノが引き出せたりして。

森上:そうなんですよね。売れるフォーマットみたいな、そういうところに落とし込もうとしちゃうケースって自分たちでもある話だと思うんだけど、それとは違う軸をちゃんと持っておかないと、その企画っていうのは結構しょぼくなっちゃう可能性っていうのはありますよね。

今井:ちなみに、お二人の自分軸と言うか、自分なりの基準って何かあったりしますか?

寺崎:最近、「これかも!」って言うのが見えてきたんですよ。

今井:なんですか!?

寺崎:不公平が嫌!

今井:フェアじゃないみたいな。

寺崎:そう!フェアじゃないことがすごく不安なんです。自分が不安だから、そういう不条理なことを正すとか、あるいは一握りの人が得る情報を皆さんにも。

今井:「どうぞー!」みたいな(笑)。

寺崎:そうそうそう。そういう仕事が好きなんだなって最近わかってきたんですよ。

今井:お!最近ですか(笑)!

森上:僕も近いと思うんですけど、ジャーナリズムってAとBがあった時に、Aが一つの大きなマスの意見だとして、Bというのがあったとした時に、そのBに対してどれだけ光を当てるか。光が当たったことによって、またAも色々と考える。BはBで考える。その光を当てる役割っていうのは少なからず出版の世界だとあって、特に書籍ってマスメディアと違って広告もないし、縛りがないので、しがらみと言うかね。それは書籍の役割としては絶対あるとは思うんだよね。

寺崎:ありますね。やっぱり日の当たらないところに日を当てるって言うか、そういう性格はあるような気がします。

今井:確かに以前Voicyでも紹介した「HSS型HSP」っていうのも、隠れてない繊細さんがいるんだみたいなことで、スポットライトを当てて、「すごく救われた」とメッセージがきたという話を編集者の方から聞いて、「すごいなー」って思っていたところでした。

森上:それも一つの考え方ですよね。

今井:ということで、その1は「企画のために必要な要素」、その2は「自分軸、自分なりの基準があること」でした。ここまで、「好奇心」「自分なりの基準」ときましたが、3つ目はどんなモノがありますか?

企画力に必要なもの③ 感動する心

寺崎:3つ目はですね「感動する心」

今井:感動する心?

寺崎:感動って言うとあれなんですけど、要するに人間って感動する動物じゃないですか。犬とか猫とかって感動しないと思うんですよ。

森上:いわゆる、感情があるか、ないか。

寺崎:うん。感じる心が感動を生み出すので、感動するっていうのはやっぱり企画のすごく重要なファクターだなと思うんですけど、森上さんどう思いますか(笑)?

森上:抽象度高くてあれなんですけど(笑)。感動って言うと全てがプラスに聞こえますが、マイナスのモノもあって悲しみとかそういったものも全部含めての感動だよね。

今井:心が大きく動くことみたいな。

森上:そうです、そうです。そこの部分があるか、ないかは結構大事かなと思っていて、例えばすごくわかりやすいところで言うと、「これどっかで読んだことある話だな」ってあんまり感動ないじゃないですか。

今井:そうですね。

森上:やっぱり感動の一つにあるのは新しい気づきと言うか。今まで本をいっぱい読んできたけども、「こんな考え方もあるんだ!」っていうように思える、その辺のモノをどれだけ入れ込めるかを一つのファクターとして企画をつくる上で考えていく。それは絶対大事だよね。

寺崎:僕もこの前通った企画で、アリシア・フォードさんっていうそんなに有名な方ではないんですけど、YouTubeで「日本語の魔法」っていう動画を配信していたんですよ。

今井:日本語の魔法?

寺崎:これ、電車の中でたまたますごい再生回数だったから見てみたんですよ。めっちゃ感動して、電車の中で泣いちゃったんですよ。

今井:え!電車の中で泣くレベル!?

寺崎:その感動を企画書にして、そのまんま感動を企画会議に出して、それで最後の経営会議も。

今井:通ったんですか?

寺崎:「じゃあ、もうそれ、やってみろ」みたいな。

今井:おーーー!!

森上:そりゃあ、売れるか、売れないかっていうのが一番最終的には大事なってくるんだけど、まあ感動って大事だよね、企画は。

寺崎:これは元ネタがあって、モーリー・ロバートソンさんっているじゃないですか、よくテレビに出ている。あの人が、昔J-WAVEで「Across The View」っていう番組をやっていて、めちゃくちゃ面白かったんですよ。超過激で。

今井:過激なんですね(笑)。

寺崎:過激だったんですよ、言うことが。で、当時90年代なんですけど、めちゃくちゃファンだったんで、96年にモーリさんの「空からモーリーが降ってくる」って言うアルバムが発売されたんですけど、これ確か3000枚も売れなかったらしいんですけど(笑)。銀座の山野楽器に買いに行って、そのアルバムの中に叫びみたいなのがあって、「あなたは何のために生きてますかー?感動するために生きているのです!」っていうフレーズがあって、これは未だにめちゃめちゃ刺さっているんですよ。「あ。感動するために生きているんだ」って。

今井:確かに感動がなかったら、あんまり生きてる感じがしないかもしれないです。

森上:だから、今回の企画力の話に紐づけると、感動と言う要素をどこに入れるか。企画の中のエッセンスとして、それは絶対外さないと言うか、何かしら盛り込まないといい企画にはならないですかね。

寺崎:感動ってもっと平たく言うと、他者への共感とか、そういうものかもしれないですよね。想像力とか。

森上:そうだね。想像力という言葉は一番合うかもしれないですよね。だから、自分よがりの感動ってあんまり意味がないと思うんですよね。一応、コンテンツとしてお金を出して買ってもらう必要があるから、それをどう共有して、届けるかっていうのがこっちの腕の見せどころ。だから、先ほど寺崎さんが言っていた「日本語の魔法」、あれも感動の涙を流した時のその感動をどう本というかたち、企画というかたちで届けるか。そこで、また泣いてもらえるか、それができるか、できないかっていうのは多分こっちの腕の見せどころになってくるのかなと思いますね。

今井:はい。ということで、ここまで「好奇心」「自分なりの基準」そして「感動する心」と紹介してきました。まだまだ他にも企画に必要な要素ってあるんですよね?

寺崎:そうなんです。全部で一応6つありまして。

今井:はい(笑)。ということで、続きは明日またお話いただけるということで。本日は、森上さん、寺崎さんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。

森上・寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


この記事が参加している募集

#編集の仕事

1,152件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?