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【フォレスト出版チャンネル#215】注目デザイナーが語る「書籍デザイン」という仕事

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティの渡部洋平です。今日はフォレスト出版の編集部の石黒さんとともにお届けしていきたいと思います。石黒さん、今日はよろしくお願いします。

石黒:はい。よろしくお願いします。

渡部:今日はゲストに来ていただいているんですけれども、石黒さんが普段とてもお世話になっていらっしゃる方ということなので、石黒さんから是非紹介してもらいたいと思います。

石黒:はい。デザイナーの山之口正和さんです。私がここ最近、ヘビロテで、装丁を依頼しまくっているデザイナーさんで、山之口さんにつくっていただいた本で、ベストセラーになっている本も何冊かあって、例えば今売れてる『塾へ行かなくても成績が超アップ!自宅学習の強化書』とか、あとに『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』とか、そういったベストセラーになっているものをつくっていただいたので、非常に感謝しております。で、渡部さん、フォレスト出版チャンネルにデザイナーさんが出るのは初めてですか?

渡部:初めてだと思います。僕も今、聞いていて、「そうだ!」と思ったんですけど、初めてだと思います。

石黒:なので、今日、そして2回目もですね。デザイン業界とか、具体的なお仕事についてお話を伺えればと思います。山之口さん、よろしくお願いします。

山之口:よろしくお願いいたします。

デザインは「置き方」=レイアウト

渡部:はい。それでは、山之口さん、まずは簡単で大丈夫ですので、自己紹介をお願いいたします。

山之口:はい。OKIKATAというデザイン事務所をやっております。山之口と申します。普段は、ビジネス書や実用書の書籍をデザインしています。今日はよろしくお願いいたします。

渡部:よろしくお願いいたします。

石黒:私は山之口さんと何回もお仕事させてもらっているんですけど、知らないことはたくさんあるので、今日はちょっとそういったことをお聞きしたいなと。あとは書籍デザイン業界、装丁業界って言うのか、よくわからないですけど、そこらへんについてもちょっとお話しを伺えればなと思っております。ちなみにですね、先ほどOKIKATAという事務所をやっていると。こちらは屋号って言うことですか?

山之口:そうですね。はい。

石黒:このOKIKATAっていうのは何か意味があるんですか?

山之口:そうですね。OKIKATAっていうのは、元々レイアウトとか、文字の置き方であったり、写真の置き方っていう部分の、レイアウトに関しての置き方っていう部分もあるんですけれども、それ以前に視点の置き方と言うか。

石黒:なるほど。

山之口:デザインする前に必要なそういった部分も考えながら、デザインしていこうという。まあ、自分の中で意識を持とうという感じでOKIKATAっていう・・・。ネーミングも結構好きだったので、OKIKATAという名前にしました。

石黒:なるほど。デザインと言えば、やっぱりレイアウト、置き方。何をどこに置くかっていうのはやっぱり重要だというのは僕もわかったんですけど、視点の置き方っていう意味も入っていたというのは分からなかったです。

山之口:そうですね。はい。

不動産のデザイン事務所、広告デザインを経て装丁の世界へ

石黒:で、そもそも的な質問になっちゃうんですけど、なぜ山之口さんはデザイナーを目指そうと思われたんですか?

山之口:そうですね。すごく強い気持ちでなろうっていう感じではなかったんですけど、僕の場合は。元々美術系の大学とかの出身でもなかったんですね。一般の大学だったのですが、就職する時に、「スーツを着た職業は嫌だ」みたいな。そこからスタートで、ものづくりと言うか、ものをつくるのは元々好きだったかなという、ふんわりとした感じだったんですけども、そこからデザイナーを目指そうかなという軽い気持ちだったような気がします。

石黒:えっ!っと言うことは、つまりデザインの専門学校も行ってなければ、大学でもデザインを専門的に学んだわけでもなく、就職活動の時に「スーツ着たくないな。だったらデザイナーになろう!」っていう、端折って言えば、そういう感じなんですか?

山之口:そうですね。僕は学生時代、就職活動をしなかったんですよね(笑)。で、何をしたいのかあんまり自分でもわからなくて、とりあえず何か職に就かないと、というところで、そういう道に行けたらいいなという軽い気持ちで始めたのが、デザイナーだったと言うか。

石黒:もちろん大学時代とかに、趣味でも何でもデザイン的なこととかってやっていたんですか?サークルとか。

山之口:特にはやってなくて、当時Macを購入して、よくあるCDジャケットとかできたらいいなぐらいの軽いノリで、ソフトを購入してつくっていて、その後に初心者でもOKみたいなところの不動産のデザイン事務所、不動産関係のグラフィックをやっているデザイン事務所に、コピー取りとか、初心者的な扱いで、入れたみたいな。そういう感じで、デザインを覚えたのは本当に仕事みたいな感じです。

石黒:そうなんですね。私が山之口さんに初めてお会いしたのは、同じグラフィックデザイナー、装丁家としてご活躍されているtobufuneの小口翔平さんの事務所だったと思うんですけど、そこに入られたのは、その不動産系のデザイン事務所の次に入られたんですか?

山之口:これはですね。元々広告のデザインの方が長くてですね。大阪出身なんですけど、大阪で5つくらいデザイン事務所に入って、東京で1社。その後ですね。結構長く広告業界にいた後に急に書籍をやりたいなという。

石黒:なるほど。

山之口:という想いで、業界をちょっと変えたという感じの流れですね。

石黒:広告とか、同じグラフィックデザインでも色んな分野あると思うんですけど、その中でも書籍を選んだのは何かしら期待するものがあったんですか?

山之口:そうですね。特にビジネス書自体を普段、結構読んでいて。

石黒:あ、そうなんですね。

山之口:そうなんですよ。で、書籍をデザインするなら、普段読んでいる書籍の方がリアリティがあるし、デザインが想像つきやすそうだなという感じもあり、興味もあったので、それでビジネス書のデザイン業界に入ってみたいなという感じ入った感じです。

石黒:結果的に書籍のデザイナーになってよかったですか?

山之口:そうですね。広告とはまた別の難しさと言うか、そういう部分もあるんですけれども、自分には合っているなという感じはありますね。

少人数で完結できる装丁の世界

石黒:なるほど。ちなみに、山之口さんが全然専門学校に行ったわけでも、大学で学んだわけでもなく、デザイン業界に飛び込んでいったっていうのはすごくびっくりしたんですけど。

山之口:はい(笑)。

石黒:デザイン業界っていうのは、僕はあんまり知ってるようで知らなくて。しかも、書籍デザイン業界みたいなみたいなものって、どういう感じなんですか?ちょっと抽象的な質問なんですけど。

山之口:そうですね。僕も書籍の業界は長くはないので、詳しい業界ではないんですけども、広告から書籍に入って、すごくシステム自体が違うと言うか。少人数で完結できる仕事なので、割とそういった密な感じというか。広告は割と大人数でやるので、なかなかそういった経験がなかったので、その部分はちょっと特殊な業界だなという感じがしましたね。

石黒:書籍のデザイナーって、いわゆる装丁家と言われている人って何人くらいいるんですか?

山之口:何人ぐらいいるんですかね?僕はちょっと、その辺が・・・(笑)。

石黒:(笑)。

山之口:詳しくなくて。でも、印象的になんですけども、広告のデザイナーさんより明らかに人数が少ないような感じがしますね。

石黒:そうですか。

山之口:はい。あと、職人的なデザイナーの方が多くて、結構書店に行った時に自分がへこむ時ありますね。

石黒:へこむっていうのは、どういうことですか?

山之口:デザインがうますぎて。

石黒:あ、そうですか。私も本屋に行って、すごい本があるとへこみますよ。自分が情けなくて。その気持ちはすごくわかります。

書籍の「すごいカバーデザイン」とは?

渡部:ちなみに本に詳しいお二人に聞いてもいいですか?書籍のカバーデザインのすごさってどこなんですか?どういうところに「これはすごい!」っていうのを感じるんですか?

山之口:そうですね。限られた枠の中に色んなものを詰め込んでいるので、やっぱり細かいところに、すごくこだわりがあるような感じがして、そういった人が多いので、そういうのを見ると、自分ももっと頑張らないとっていうのはありますね(笑)。文字の扱いであったりとか。

石黒:そうですね。書体1つ、明朝かゴシックにするかだけでも、手に取ってもらえるか、もらえないかっていうのは完全に決まっちゃう、非常に微妙な部分だと思うんですよ。昔、僕は、「この文字がゴシックで」とか、「明朝でお願いします」とかって指示していたこともあるんですけど、結局やっぱり「なんで?」っていう理由を問われると、なかなか回答できなかったりするので、やっぱりそこら辺のセンスと言うか、経験値っていうのが、書籍のデザイナーさんにはすごく重要なんだろうなと。私もちょっとしたデザインだったらやったりもするんですけど、やっぱり装丁となると、カバーデザインとなると、自分には絶対無理だなと。もう一段二段、レベルを上げないとっていうのはすごく感じますね。

渡部:奥深い世界なんですね。まさにOKIKATAっていうお名前でしたけど、フォントとか文字とかの置き方とか視点の置き方とかにすごくセンスを問われているんだなって、今お話を聞いて思いました。

書籍のデザイナーにはどうすればなれるか?

石黒:そんな今回の放送を、もしかしたら将来デザイナーになりたいという人もお聞きになっているかもしれないですけど、装丁家になりたいっていう、もし大学卒業したばっかりとか、専門学校卒業したばっかりみたいな人がいたら、どうやればなれるんですか?いわゆる名乗ればもうデザイナーとは言えるかもしれないんですけど、一般的にはどういうステップを踏んで、書籍のデザイナーになる人が多いんですか?

山之口:そうですね。僕は逆にイレギュラーな感じで業界に入ったタイプなんですけど、割と装丁家の人はやっぱり本の事務所にしっかり入って経験を積んで、それで独立していっている人が割と多いイメージがありますね、色んな人を見ていて。でも、今の時代だとどうなっていくのか、ちょっとよくわからないんですけども、1からやっていく人も将来出てくるんじゃないかなという感じがしますけれども。

石黒:僕はあんまり自分がその仕事をやろうと思わなかったので、あれなんですけど、デザイン事務所の求人ってあんまりないような印象なんですけど、どこに出ているんですか?

山之口:そうですね。デザイナーの求人サイトもありますし、デザイン雑誌とかの後ろに載っていたりとかするので、そのあたりから募集をかけている人が多いですね。最近はSNSとかで発信しているのをチェックして応募している人もいるみたいな感じですね。

石黒:やっぱり狭き門なんですか?

山之口:そうですね。きっと狭いんじゃないですかね。なかなか書籍の場合は多く人数は取らないと思うので、大人数でやる作業っていうのでもないと思うので、なかなか枠が空くのが結構難しいのではないかなとは思いますね。

石黒:そうですよね。デザイナーをやりたいみたいな子たちっていっぱいいると思うんですよ。でもやっぱり狭き門なんで、なかなか思うようにできないみたいな。

山之口:そうですね。

石黒:また、変な質問なんですけど、デザイン事務所に入社する時って作品とか持って行って、アピールするんですか?やっぱりセンスとか見られるんですか?

山之口:そうですね。やっぱり面接する時はポートフォリオとか持って行きますけど、広告業界の時はやっぱりメインで見られるというか、作品にもう全部反映されているので。

石黒:見る人が見れば「ちゃんとわかっているな」とか。

山之口:そうですね。

石黒:「まだまだな」ってわかるわけですね。

山之口:そうですね。そういうことがわかるので、ポートフォリオが中心で見られることが多いですね。

石黒:なるほど。例えば面接官が、そのポートフォリオを見て、「なんでここを明朝にしたの?」とか、そういった質問とかしてくるんですか?「なんでここを黄色にしたんだ?」とか。

山之口:そうですね。細かい質問と言うよりかは、深く突っ込んで、そのデザインの考え方を聞く時とかもあると思うんですけども、だいたいデザインを見たらなんとなく考えてやっているなとか、そういったことは割りと出るので。

石黒:出るんですね。

山之口:なので、やっぱり経験を積んでいる人はその辺のデザインで全部わかるんじゃないかなっていう気がします。

デザインのセンスはどのようにして磨くか?

石黒:奥深い世界なんですね。デザインをわかっている人だけの理論と言うか、そういったものがやっぱりあるわけですね。ちなみにデザインってセンスが必要だと思うんですよ。まあ、センスとはなんぞやっていう話にはなるんですけど。そのセンスを磨くにはどうすればいいんですか?やっぱりセンスを磨くっていうよりも、理論とかを自分で勉強したり、経験したり、経験することでセンスが勝手に磨かれていくっていう感じなんですかね?

山之口:そうですね。割とどの業界も同じだと思うんですけども、いいものを見てっていうのは共通していますよね。

石黒:いいものを見て。なるほど。

山之口:割と僕の場合だと、色々見て、それで終わるんではなくて、言語化してみるとか、なぜいいのかみたいな。

石黒:なるほど、なるほど。

山之口:言語化して、ストックしておくとか、そういうのはやっていましたね。

石黒:なるほど。ただかっこいいとかきれいとかじゃなくて、何でかっこいいのかっていうのを自分の言葉にして蓄積していくわけですね。

山之口:そうですね。

石黒:なるほど。そういうふうにセンスを磨くんですね。

山之口:そうですね。自分はそういうふうにして、ストックを増やしていったっていう感覚が大きいですね。

石黒:なるほど。今日は山之口さんの意外な一面を、意外な経歴をお聞きして、そしてデザイナーには何が必要か、どうすればデザイナーになれるのかっていうところをお聞きして、非常に勉強になりました。どうもありがとうございます。

山之口:ありがとうございます。

渡部:ありがとうございます。今日はこれで石黒さんの聞きたいことは聞ききれたでしょうか?

石黒:いや、まだです。

渡部:では、それは明日に。

石黒:ということでお願いします。

渡部:はい。ありがとうございました。それでは、フォレスト出版チャンネル、初のデザイナーの方に来ていただきましたが、今日は山之口さん、色々とお話しいただきまして、ありがとうございます。そして明日もまた、よろしくお願いします。

山之口:お願いします。

石黒:お願いします。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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