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一流の営業マンの前に、一流の経理マンを雇うべき、という話。

Amazonレビューでこんな一文がありました。

(経理とは)経費精算の細かいミスを指摘してくる、ちょっと嫌みな部署・・・。経営幹部でもない末端のサラリーマンが経理に抱く印象は、こんなところではないか。

ドキ! ごめんなさい!

私も長いこと、似たような印象を持っていました。自分は数字に弱いのを棚に上げて。

2019年の人気ドラマ「これは経費で落ちません!」の制作で取材協力もされた町田孝治さんの『会社のお金を増やす 攻める経理』を読むと、経理とは、ただ過去の数字を追っかけて資料をつくっているだけではないことがよくわかります。

社長は、一流の営業マンより、一流の経理マンを雇うべき、とも。御社の経理は経営陣の懐刀になっていますか?

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数字を味方につける重要性

「利益は上がるのにお金が貯まらない」
「売り上げが伸びているのに資金繰りが厳しい」
「給料は上げているのに、なぜか社員が辞めていく」
「創業時の夢に近づいているのかどうかわからない」
「業務を効率化したいが、システムを入れても逆に効率が悪くなっている」
「新規事業に打って出ても大丈夫かわからずに、いつも手遅れになる」

社長は日々、様々な経営上の悩みを抱えています。けれども、ただ漠然と思い悩んでいても、思考がぐるぐる回るだけでいつまで経っても解決に結びつきません。
頭の中で漠然としている悩みから課題を見つけ出し、その対策を考え、行動し、解決していくには、どうしたらいいのでしょうか。
そんなとき、「武器」になるのが数字です。
そして、数字が解決してくれるのは、悩みだけではありません。

「従業員が幸せに満ちて働く会社にしたい」
「年商100億円企業になりたい」
「自分たちの商品やサービスで社会を良くしたい」
「世界の幸せに貢献したい」

社長の心の中には、悩みだけではなく夢もあります。
夢を実現するために、カリスマ経営者である必要はありません。
数字を味方につけ、使いこなすことができれば、誰でも、どんな大きな夢でも現実にできるのです。

経理は会社の「守り」と「攻め」の要

会社の中で「数字のプロ」といえば、経理です。
そして、社長が数字を自由自在に使えるようになるためには、経理というナビゲーターが絶対に必要です。
数字のプロとして会社にとって必要な数字を出し、現在地点を示すとともに、数字によって目的地への道を描き出す。
これは、経理にしかできない仕事です。
本書では、そうした経理の役割に着目し、「攻める経理」と名付けました。
「攻める経理」と言われて、「え!? 経理の役割は守ることじゃないの?」と思うかもしれません。「経理の仕事は決算の数字を作ることでしょ」と決めてかかっているのだとしたら、それは半分正しくて、半分間違っています。
経理は単に決算書を作るだけでなく、「数字のプロ」として、数字からわかる情報を抽出しメッセージとしてわかりやすく伝え、活用することで、会社全体を変えていくことができる立場にいます。
その立場を活かさないのは、非常にもったいないことです。
一般的に、「攻める」とは、未来を切り開き、新たなイノベーションを起こし、サービスを生み出すこと。部署で言うと企画・営業でしょうか。
また、「守る」とは、過去にフォーカスして数値を集計し、資金繰りを守り、不要な支出を抑えること。金庫番的な総務・経理がイメージされます。
けれども、経理ができるのは「守り」だけではありません。経理こそ「攻める」ことに目覚めるべきなのです。
たしかに、一般的な経理の仕事は「守り」をイメージさせます。

過去の数字に間違いがないか。
資金繰りが滞りなく進められるか。
そして、無駄なコストを防ぐ金庫番というイメージはまさに「守り」の要です。

どれも、経理の仕事には重要なことばかりです。これらのことから「攻める」を連想するのは難しいでしょう。
経理担当者だけでなく経営者側も「経理は守りの部署」と頭から決めてかかっていることが多いのではないかと思います。

会社というものは「つぶれない」ことが大前提です。
そのために、守りをしっかり固めることはものすごく重要です。
けれども、「経理は守りだけやっていればいい」というのも違います。
そもそも、「守り」にしても経理だけでできるものではありません。営業だって、企画だって、どの部署にいても連携して「守り」に回る場面があるはずです。
同じように、「攻め」にしても当然経理だけでできることではありません。会社全体での「攻め」について、経理として積極果敢に力を発揮するというイメージが必要です。
そんな意味で経理が臨機応変に「守り」と「攻め」を選択し、状況に応じて「守り」を固め、あるいは積極果敢に「攻め」てこそ、会社は劇的に躍進することができるのです。
たとえば、高校野球の強いチームと弱いチームを見てみます。
弱いチームの場合、個人プレーのつながりで終わってしまいます。ピッチャーが投げて、三塁線に打球が飛び、サードが捕球して一塁に投げてアウトになる。こんな場面では、ピッチャーは投げに徹し、サードは守りに徹し、ファーストも役割を果たしています。
しかし、それだけでは強いチームには勝てません。
同じ場面で、強いチームはどうでしょうか? 
概して強いチームは、スタープレーヤー1人がワンマンで引っ張っていく姿に目を奪われがちですが、チーム全体で強いのが特徴です。
ピッチャーが投球フォームに入ると、内野手はどこに打たせようとしているのか予測し、守備位置を微妙に調整して待ち構えます。その動きを察知して外野手も連動します。三塁に打球が飛ぶとサードのバックにはバックアップにレフトが守備に回り、捕球して一塁に投げるとファーストの後ろにも当然バックアップでライトが入ります。
このように、同じ守る場面でも「こっちにボールが来てないから自分には関係ない」ということはなく、全員で意識を合わせて守っています。どのポジションにいても、「チーム」の勝利のために、お互いに協力して、臨機応変に動いているのです。
同様に、自分の守備範囲で数字を出すことだけが経理の仕事ではなく、全社に連動して時には守備範囲を超えた領域まで積極的に出ていくことが必要なのです。
その観点から、経理が貢献できるポテンシャルは非常に大きいといえます。
経理が「守り」の要であるのは、言うまでもありません。
では、経理はどう「攻め」の要になるのでしょうか。

数字の力を活かす経理とは

経営では、必要なときに必要な数字をそれぞれの部署や担当者にパスすることが大事です。もしそのパスが一瞬でも遅れたら、場合によっては会社にとっての命取りになりかねません。
会社の数字は日々刻々と変化します。
一度作った数字も、それがずっと同じということはありません。
そして、変化し続ける数字を、会社の状況を踏まえて正しく把握しているのは誰でしょうか。
経理をおいて、他にありません。
経理だけが「数字を経営に活かす」というオプションをもっている唯一無二の存在なのです。
そんな経理としての強みを活かし、経営に貢献していく。
それが経理の「攻め」です。
たとえば、営業から上がってきた数字を社長にパスし、なぜ売り上げが伸びているかの分析に活用する。
あるいは、毎月の数字から将来を予測し、借り入れを行うタイミングと金額を予測する。
新しいプロジェクトを始めるときには、予測のプロジェクト損益を試算し、会社の体力としていくらまでならこのプロジェクトで赤字を出せるかという「防御線」を見極める。これはネガティブな発想に見えますが、実は「ここまでなら攻められる」と力強く社長の背中を押すことになります。
こうした数字の裏付けがなければ、社長はどこかに不安を残したままということになります。
それでは、思い切った決断などできません。
社長と経理がタッグを組めれば、経理からパスされてきたこれらの数字を元に、それまで直感で判断していた社長も、単なる思いつきではない、会社にとって最善の経営判断ができるようになっていきます。
つまり、数字が社長の判断を支え、社長の行動を変えていくのです。
数字は社長の自信につながり、社長は数字という武器を手に入れることで、自由自在な経営ができるようになっていきます。
数字は噓をつきません。淡々と、客観的に事実を語ってくれます。
現在の会社の実態をあぶり出すと同時に、様々な経営判断の指標となってくれます。
そんな数字のメッセージを誰よりも早く、真っ先に受け取るのは経理です。その受け取ったメッセージを活かすも殺すも経理次第なのです。

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▼『会社のお金を増やす 攻める経理』のまえがき全文はこちら


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