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子どもの「しつけ」には3つのタイプがあるというお話

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先週発売を開始した『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』ですが、周囲ではなかなか評判がよく、私の実母が「孫との会話用」に購入したそうです(孫想いの購買行動ですね…)。

本書は、親が子どもについつい言いがちなNGフレーズ、それに対して適切な言い方を「がんばるかあさん(がんばるとうさん)」「一枚上手かあさん(一枚上手とうさん)」の対比で表現しています。

イラストレーション:後藤グミ

こんな感じです。

今日は「第1章 つい「怒りたくなった」ときの言い方」から、いくつか「一枚上手」な言い方をご紹介します。

「ダメ」と言われることを何度もくり返す子に

 子どもを育てていくには、しつけが必要です。
 では、しつけとは、どんなことをいうのでしょうか。
 少しだけ難しい言葉で言えば、「生活動作や礼儀作法、規律、規範などを教える」ことがしつけです。
 平たく言えば、子どもが社会で生きていくうえで「自分で判断して、行動する力」を身につけさせることが、しつけです。

「やってはいけないことを叱る」「できないことを叱る」のは、しつけではありません。

「〇〇したらダメ」ではなく、「○○しようね」と教えていくのが、しつけです。ところが親は、「ダメ」という言葉で子どもの言動を抑え込もうとしがちです。

|親が思う以上に
|「言葉のダメージ」は致命傷になる

この叱り方には大きな弊害があります。
「あなたは、ダメね」「ほとほと手に負えないわ」というメッセージを、パワー全開で子どもに与えてしまうのです。
 そうして子どもの心に図らずも傷をつけます。
 とくに小学生のころまでは、「ダメ」とか「バカ」とか「嫌い」などのネガティブワードが頻繁にくり返されると、言葉そのもののダメージを強く受けてしまいます。
「お母さんは、あなたのことがかわいいから、わかってほしくて言ったのよ」と、あとからいくら弁解したところで、「ダメな自分」というネガティブワードを子どもの胸に深く突き刺してしまうと、取り戻すのは大変です。

|やってはいけない
|「力によるしつけ」

 発達心理学では、しつけには3 つのタイプがあるとしています。
 1 つは、「力によるしつけ」です。
「ダメって言っているのが、わからないの?」と強く怒ったり、頭を叩いたりなど、力によって子どもの行動を制する方法です。罰に対する恐れの感情を利用したしつけです。
 このしつけ方を用いると、子どもは「怖いから」という理由で、行動を改めるようになります。
 では、怖い人がいなかったり、怖い言葉を言われなかったりする環境では、どうでしょう。恐れを感じなければ、やってもいいという態度になります。

|やってはいけない
|「愛情の出し入れによるしつけ」

 2 つめは、「愛情の出し入れによるしつけ」です。
 よいときには「大好き♪」、してはいけないことをした
ときには「嫌い!」といって、愛情の出し入れをすること
によるしつけ方です。この弊害については、次項でお話し
します。

|いちばん理想的な
|「説明的・誘導的なしつけ」

 3 つめは、「説明的・誘導的なしつけ」です。
「なぜいけないのか」「どうして危険なのか」を説明し、理由を教えるしつけです。「どうしてダメなのか」という理由を親が説明することで子どもに学ばせていきます。
 たとえば、幼児はおもちゃの取りあいなどで友達を叩いてしまうことがよくあります。そのときには、単に「叩いちゃダメ!」ではなく、「叩かれたら痛いよね。叩くのではなくて、『貸して』とお願いしてみようか」と、正しい方法に誘導していくことです。

 このしつけ方に、即効性はありません。
 だから何度も繰り返して伝えていく必要があります。

 時間はかかりますが、親の言葉は、子どもの心に少しずつ刻み込まれていきます。優しさや思いやり、よいことと悪いことの判断力を育んでいくことができます。このしつけ方が子どもの成長にもっとも効果的であることは、これまでの心理学の研究でも実証されています。
 一方、1 つめと2 つめのしつけ方には即効性があります。
 しかし、大きな弊害もあります。何がダメなのか具体的に教えられていないので、善悪の判断力も思いやりの心も育たず、社会性が身につかないばかりか、「ダメな自分」という劣等感を植えつけてしまいます。
「ダメ」という言葉を使ってはいけない、と言っているのではありません。大切なのは、「なぜ、○○がいけないのか」「何が大事なことか」という理由を具体的に説明することです。

***

子どもって、ホントに何度同じことを注意しても、注意したそばから、また同じ過ちを繰り返しがちです。

それもあって、ついつい「ダメ!」と言ってしまいがちですが、「ダメ!」はダメなんですね。

とにかく繰り返し、何度も伝える。
これしか対応策はないようです。

では逆に、「子どもはほめて育てる」という言い方をする育児指南書もあります。ならば、とにかくほめていればいいのか、というと、事はそう単純ではないようです。

お手伝いをがんばってくれたわが子に

「ほめて育てる」という考え方があります。ただし、「子どもの心の成長に必ずしも好ましいばかりとはいえないほめ方」もあります。その一つが、子どもが何かを上手にできたときにこのようにほめることです。

×「よい子の〇〇ちゃんが、お母さんは大好きよ」
 
 よいことをしたときに「あなたが大好き」とほめるしつけ自体は、よいかもしれませんが、こういうことをよく言うお母さんは、おそらく悪いことをしたときに「そんな子、嫌い」と叱ることが多いのではないでしょうか。
 よいときには「大好き」とほめ、悪いときには「嫌いよ」「そんな子、ウチの子ではありません」と叱ったり、口を利かないで軽く無視したりする。こうして子どもが正しい行動をとるように誘導していく方法を「愛情の出し入れによるしつけ」といいます。
 子どもは、いつも心の中で「親に愛してほしい」と思っています。親がどんな人物であろうと「親に愛してほしい」という願いに、変わりはありません。
 愛情の出し入れをするしつけは、「親に愛してほしい」という子どもの願いを利用する方法です。

 お母さんに好かれたいからがんばる。
 お母さんに嫌われたくないからやらない。

 
 そうして、行動の理由を親の愛情に置くようになると、親に好かれようとその場では親の言うことを聞くようになります。そのうち、親の顔色を見て動くようになります。

|愛情の出し入れで
|育てられるとどうなるか?

 では、親に愛してもらうことを原動力にして成長すると、どのような人間に育つと思いますか? 社会に出たら、上司に気に入られようと顔色を見ながら動くようになります。
 恋人ができたら、恋人に嫌われないように気を遣いながら交際するようになるでしょう。このように、自分が大切と思う人の顔色を見ながら動くようになってしまうのです。
 反面、その物事が正しいか間違っているかという自分の考えを基準にできなくなります。「はじめに」でお伝えした自分のコンパスで自分の進む道を決めていけず、人の顔色をコンパスにするような、人に振り回される人生になってしまいます。
 では、お手伝いを親に言われずにやってくれたときや、何かを上手にできたとき、どのようにほめるとよいでしょうか。

「お手伝いを自分からやってくれて、お母さんはうれしいな。
 ありがとう!」

 
 このようにお母さんが何にうれしいと思っているのかを具体的に伝えること。そのうえで、「ありがとう」と感謝の気持ちを表すと、子どもは「もっとがんばろう」と感じられるのです。

***

いかがでしょうか。

この本では、(担当者が言うのもアレですが)ホントに子育てに参考になる知恵がふんだんに詰まっています。

また、ちょいちょいご紹介しますね。

ちなみに「はじめに」はこちらで全文読めますので、ご覧ください。


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