「理科離れ」が叫ばれるなかで、立ち向かう科学戦士
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
子どもたちの「理科離れ」が叫ばれて久しい昨今。文系人間である私が言うのはたいへんおこがましい限りですが、教育現場ではその流れはとどまることを知らないようです。私が学生時代(90年代)の頃から言われていたことですから、もう20年以上は経ちます。
そんな子どもたちの「理科離れ」を少しでも食い止めよう、少しでも科学に興味を持ってもらおうと、人生をかけて取り組んでいる1人の“リケジョ”がいます。
「科学のお姉さん」として、自身が科学に興味を持つきっかけとなった科学実験教室やサイエンスショーを全国各地の子どもたちに向けて開催、科学館や小学校だけでなく、商業施設や地域のお祭り、お寺など幅広い場所でサイエンスショーを開催し科学の一端に子どもたちが触れるきっかけを創り続けている、サイエンスエンターテイナー・五十嵐美樹(いがらし・みき)さんです。
その精力的な活動ぶりは、サイエンスショーにとどまらず、テレビやネットでも注目を浴び、卑近な出来事では、今年4月からはNHK高校講座「化学基礎」レギュラー出演もスタートしました。
そんな科学関連教育界のジャンヌ・ダルクともいえる五十嵐さんの初の著書『科学戦士「ミギネジ」の悪キャラの倒し方』が、5月12日(Amazonでは5月10日)に発売となります。
このnoteでも連載をしてきた有料記事も含めた完全版として書籍化です。
本書では、著者がこれまで発信してきた科学工作の手順や実験手順に加えて、「科学のお姉さん」として自身が日々考えていることやその生活状況を主人公の科学戦士「ミギネジ」というキャラクターに乗せて綴っています。
主人公のミギネジは、昼はエンジニアとして働いていますが、夜は科学戦士に変身。次々と襲い来る悪キャラたちに科学を活かした必殺技で立ち向かって倒していきます。そんなおもしろストーリーを全23話収録しています。
今回は、本書発売に先立ち、本書の「はじめに」(まえがき)と「目次」を全文公開します。
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はじめに
五十嵐美樹って誰?――自己紹介
はじめまして。
「科学のお姉さん」こと五十嵐美樹(Twitter: @ igamiki0319)と申します。
私は理工学部卒業後、大企業のエンジニア職を経験。その後、東京大学大学院で科学コミュニケーションを専攻、同修士課程の修了を経て、現在、全国各地で子どもたちに向けた科学実験教室やサイエンスショーを開催しています。理工学部在学時やエンジニア職の際に日本における理系分野での女性の少なさを体感したことがきっかけで、日々自分自身が興味を持った科学のおもしろさについて表現していきたいと考えるようになり、活動を行なってきました。
このたび、カジュアルに楽しんでいただけるストーリーの中で科学を表現していく企画のお話をいただき、今回の企画が生まれました。これまで発信してきた科学工作の手順や実験手順に加えて、「科学のお姉さん」として、私自身が日々考えていることやその生活状況を主人公の科学戦士「ミギネジ」というキャラクターに乗せて発信していきます。戦いのシーン以外の小話は、ほとんどが実話です。
ここでは、「まえがき」として、本書でまとめたストーリーの概要や本書が生まれるまでの背景などをお伝えしたいと思います。
女性エンジニアの裏の顔
「科学戦士・ミギネジ」の悪キャラとの戦い――ストーリーの概要
主人公のミギネジは、昼はエンジニアとして働いていますが、夜は科学戦士に変身し科学の原理を使って悪キャラを撃退していきます。名前は「右ねじの法則」と私の本名が「ミキ」であることから来ており、頭のネジの飾りがトレードマークです。
ミギネジは何の疑問も持たずに大学受験を経て理工学部に入学し、その後エンジニアとして就職するという道を歩みます。しかし、週末に科学実験を実施するうちに“最強の科学戦士になる”という子どもの頃の夢を思い出し、誰に言われるでもなく科学戦士を始めます。
科学戦士を目指すために、日々仕事帰りに、東急ハンズや100 円ショップ、秋葉原の秋月電子通商に通って材料調達をして、予備実験をして過ごしています。
“ 科学戦士として活躍する日は来るのだろうか……”
そう思いながら日々を過ごしていると、突然悪キャラが襲ってきて人々を恐怖に陥れようとします。この世にはびこる解決すべき課題を悪キャラに見立てて、どんどん人々に襲いかかってくるのです。
現代においては多様な戦い方がもちろんありますが、ミギネジは日々の予備実験の成果を活かし、ここぞとばかりに科学を活かした必殺技で立ち向かいます。果たして、ミギネジは己の必殺技で悪キャラを撃退できるのでしょうか……?
そんな科学を活用したヒーローストーリーと並行して、この本では、一人の人間としての生き方にもクローズアップしていきます。
誰に言われるわけでもなく始めた科学戦士を続ける中で、次第にミギネジは今後のキャリアについて悩むようになります。
先が読みにくく選択肢も多様なこの世の中で、ミギネジ自身はどう自分の心と向き合っていくのでしょうか……。
そんな一人の人間としてのキャリアプランとしてもお楽しみいただけるストーリーを展開していきます。
ミギネジの必殺技(科学実験)はすべて
実際に手に入るもので試せる
ミギネジが繰り出す科学の力を使った必殺技は、お家にあるものやネットなどで手に入るものを使った科学実験を応用したもので、実際に試すことができるものとなっています。ストーリーの終わりには、実験手順や材料等を記載しますので、ご興味ある方はぜひ試してみてください。この本では、実験結果がすぐに出てきますが、お子さんと実験される際は、ぜひ仮説を立ててから実際に実験をし、失敗も含めて楽しみながら、振り返りをして応用をしていくようなプロセスを踏んでいただければと思います。
私自身もミギネジも、一人の人間として生きていますが、その中で日々使っている身近な道具なども技として登場しますので、科学の身近さに触れる1つの機会として楽しんでいただけるとうれしいです。
科学を使った技で悪キャラを倒していくミギネジの自由な姿、身近なもので実践できる科学実験を通して、ふっと力を抜いて楽しんでいただけるような内容になったと自負しております。本書が、科学のおもしろさ、科学の興味を持つきっかけとなれば、著者としてこれほどうれしいことはありません。
【目次】
はじめに
本書に登場する人たち
#1 「白いヌリカベ」と「アセトン」
#2 「びよーん星人」と「リモネン」
#3 怪物「ダイラタンシー」と「新聞紙」
#4 「ゆる悪キャラ」3体の正体と助手誕生!?
#5 「ポンポン星人」と「酸素」
#6 「ぶつぶつ星人」と「光波ナミ」
#7 「もくもく星人」と「光合成三種の神器」
#8 「ガラスの靴」と「サラダ油」
#9 「ふんわり星人」と「真空」
#10 「吸水鬼」と「塩」
#11 「黒っぽい雨」と「乾電池」
#12 「敵対者」との和解
#13 微弱な「電流」と社員の絆
#14 ミギネジの法則
#15 ミギネジの独立と紅白〇合戦
#16 「生乳軍」とダンシングバターシェイク
#17 カラフルな波と光波ナミ
#18 「ピカピカ星人」と絶縁体
#19 「伝説の2」の目覚め
#20 テンションと凝固点の降下
#21 不気味な光を全力無視
#22 「カシャーン星人」とマグデブルクの半球
#23 キングの復讐
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私が五十嵐さんと初めてお会いしたのは2018年。すでにサイエンスショーなどでご活躍されており、リケジョとしても注目を浴びていました。
子どもたちの理科離れが続くなか、なんとかして科学のおもしろさ、魅力を伝えたい――。
そんな熱い思いを抱いていた五十嵐さんは、全国各地に飛び回ってサイエンスショーをこなしながら、大学院で研究されていました。この熱意と行動力にはただただ感服するばかり。
お忙しい中でも、今回の書籍化を前提にしたネット媒体での連載原稿を書き進めてくださいました。約3年越しの作品です。
本書には実際に自宅で実験ができるように、お手軽な実験方法も載せています。夏休みの自由研究にもお役立ていただけます。ご自身で実験を繰り返しながらの原稿執筆。原稿を待っているだけの私には想像しえないご苦労があったとお察しします。
五十嵐さんは、本書の主人公と同じく、リアル「科学戦士」だと思います。
そんな五十嵐さんの新刊『科学戦士「ミギネジ」の悪キャラの倒し方』は、5月12日(Amazonでは5月10日)に発売です。興味のある方は、チェックしてみてください。
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