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なぜ、経営者は従業員に「出社」を求めるのか?(後編)

フォレスト出版編集部の寺崎です。

前回、なぜ、経営者は従業員に「出社」を求めるのか?というテーマで記事を投稿しました。今日はその続きです。

リアル出社派のリーダー、経営者にとっては耳の痛い話となっているかもしれませんが・・・中尾隆一郎さんの最新刊『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』からひもといていきます。


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多様性を認めないのは強者だけ
――従業員を混乱させる「ダブルシグナル」の存在

 ここまで、多様性が高い方がイノベーションは起きやすく、企業の業績としても結果が出ているということを確認しました(note編集注:このことについては改めて別の記事でご紹介します)。ところが、日本では多様性ではなく、同一性を求める傾向が強いように感じます。
 例えば、働く場所についてもそうです。新型コロナウイスが5類になることが決まると、従業員に出社を求める企業がとたんに増えました。

なぜ、経営者は従業員に「出社」を求めるのか?

 なぜ、日本企業の経営者はリモートワークではなく、出社を求めるのでしょうか?
 それは、まず、日本企業の社風は「出社してこそ仕事である」という文化が根強く、また、社員間のコミュニケーションを重視する傾向があるからです。
 このため、オフィスでの業務やコミュニケーションが、リモートワークよりも効率的であるとの(根拠なき)信念が根強く、それに基づいた経営判断が行われているからです。
 さらに、出社を決める経営者や幹部は、会社の近くに住んでいる可能性が高いというのもあります。彼らは、通勤にそんなに時間や負担がかからないのです。つまり、出社を決める立場の人たちは「通勤」に関しての「強者」なのです。
 しかし、通勤を求められる大半の従業員は、少しでも広い住宅を得るために郊外に住んでいるケースが多いでしょう。つまり「通勤」における「弱者」なのです。
 しかし、この「通勤弱者」である多くの従業員は、ここ数年のリモートワークを通じて「通勤」がないことのメリットを知ってしまいました。
 例えば、通勤がないことで1日平均1時間半(東京都の通勤の中位数約45分の2倍・日本全国の中位数は約30分)浮くことを知ってしまいました。従業員にとっては、このメリットを失ってまで、出社によって得られるメリットは多くないのです。
 このことに経営者は気づいていません。
 これについては、心理学者アーノルド・ミンデルの『紛争の心理学』にある「ダブルシグナル」と「ランク」という考え方にその答えがあるように思います。

経営者が発する「ダブルシグナル」に従業員はストレスを感じる

 ダブルシグナルとは、相手に対して与える言葉と実際の行動が一致していない状況が生じた際に、相手が混乱し不安やストレスを感じる現象を指します。
 例えば、上司が「私はあなたのことを信頼している」と口で言っているのに、実際には「細かな作業指示やチェックをしている」場合などがあります。このような場合、上司の言葉と行動が一致していないために、部下は上司の信頼を疑ったり、ストレスを感じることがあります。
 ダブルシグナルは、相手に不信感や不安を与え、コミュニケーションの円滑さを阻害する可能性があるため、関係性の悪化や紛争(もめ事)の原因となることがあります。そのため、相手に正直な気持ちを伝え、言葉と行動が一致したコミュニケーションを行うことが重要です。
 この理論を日本企業のリモートワークに関連して考えると、経営者が相手の状況、例えば子育てや介護、あるいは遠隔地に住んでいることなどから「リモートワークの制度」は作るものの、実際は、その制度は利用しづらく、結局「休みにするか、出社するしかない」という矛盾があることが挙げられます。
 そもそも、このダブルシグナルには、相手に対して、「(ランクが高い)私の言っていることが正しいので、(ランクが低い)あなたは、私の言うことを聞きなさい」というニュアンスが含まれているのです。
「ごちゃごちゃ言わずに、言うことを聞け!」という感じですね。
 従業員は、自分のことなのに、自分で決められないわけです。
 当然、不満を持ってしまいます。
 もちろん、リモートワークにもさまざまな課題があります。
 例えば、社員同士のコミュニケーション不足や、作業の進捗管理が難しい点などが挙げられます。しかし、これらは、まだまだリモートワークを始めたばかりだから起きていることであり、適切なITツールや業務プロセスの見直しを行えば、解決できるはずです。
 もちろん、リモートワークで、一定の成果を出すためには、社員に高い自律性や責任感が求められます。そのため、社員の採用や教育・研修などにも十分な時間やリソースを割く必要があるのは言うまでもありません。
 感染症、パンデミックはまた必ずやってきます。
 今こそ、リモートワークの方法を進化させておく必要があるのではないでしょうか。

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ダブルシグナルを発している会社、多そうですね。

あなたの会社はいかがでしょうか?

この記事を読んで「まさに、それ」と思った人も多いのではないかと推察します。本書『現場が動くマネジメント』をぜひお手に取って眺めていただければと思います。

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