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『リトルキャプテン』 ⑤ 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜

 「あの男の人ね、多分誰かに騙されたか裏切られたかしたと思うの。人を憎んでる顔してた。おそらく強盗も突発的にやったんだと思う。今時顔丸出しで強盗する人いる?」ジョーイは無言で話を聞いていた。「あの指輪は主人の形見なの。主人は亡くなる前、私にこんなことを言ってきたのよ」『もし人生に絶望したやつが現れたらこの指輪を渡してやってくれ』「変な話でしょ?私もなぜ主人が死ぬ間際にそんなこと言うのか、全然意味が解らなかったわ。それで主人に理由を聞いてみたの。そしたらね、夢の中に神様が出てきて主人にそうするよう指示を出したらしいわ。あの指輪は主人の家系の何世代も前から引き継いでいる宝物だったのに。そして人生に絶望した人がいつ現れるわからないから、いつも身に付けておいてほしいと私に頼んだの。その後、主人は安らかに眠りながら息を引き取った。主人は万人に優しい人だったわ」

 ジョーイはメアリーの不思議な話に釘付けになっていた。好奇心という感情が他人より欠落しているのを自覚していた彼も、メアリーの話には強い興味と関心を示しドキドキしていた。それに被害者のメアリーが、わざわざ強盗犯の気持ちになって考えていることにも驚かされた。「死にかけた上に店の売上げを取られて、なんで相手のことなんか考えられるんだろう?人は歳をとるとみんなああなるのかな?」とジョーイは思った。それと同時に、冷静で優しさあふれるメアリーを「かっこいいな」とも感じていた。





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